見た目が macOS の Linux ディストリビューション pearOS をいじってみました。
結論
pearOS は、見た目を macOS にカスタマイズした KDEneon でした。
Linux はやっぱり、何処まで行っても Linux ではありますが、この pearOS は、 macOS を使ったことがある人でも「あっ、macOS っぽい」と思えるクオリティだと思います。
なにせ、「Apple 以外の PC で macOS のような体験を提供する」として開発されていますからね。
ロゴからして明らかに macOS を意識してます。
pearOS って?
先日リリースされた elementary OS 6 Beta に触発されて、macOS っぽい Linux についてイロイロ物色していました。
【人気 Linux 最新版】elementary OS 6 beta が登場したので、早速試してみました。
elementary OS はもちろんのこと、以前にブログや Youtube で紹介した Voyager を始め MacBuntu や Xfce デスクトップ、 MATE デスクトップのカスタマイズなど一通り見回したと思います。
その中で、ひときわ目を引いたのが今回紹介する pearOS です。
pearOS について調べてみると、2011年10月に Pear OS 2.5 をリリースしたのが、確認できる情報でいちばん古いものでした。
pearOS は David Tavares さんによってフランスで開発されていましたが、2013年11月に Pear Linux 8 (この頃は Pear Linux と呼んでいたようです) をリリースした後、2014年1月20日には Web サイトからダウンロードリンクが削除され、事実上開発終了となりました。
当時の Web サイトには、次のような意味深なメッセージが表示されていました。
Its future is now in hands of a company who wants to remain anonymous for the moment. The concept has pleased them it and now wants to continue and improve the system for their own products. I can not give a name but it is a very large company well known.
その将来性は、今のところ匿名を希望する企業の手に委ねられています。このコンセプトに満足した彼らは、自社製品のためにこのシステムを継続し、改良したいと考えている。名前は言えないが、有名な大企業である。
I want to thank all users, moderators and other developers who have made Pear OS it is today, that without this adventure would not have been possible. I’m going in another direction. Another big thank you to all and I hope to return to the scene of open source very quickly.
Cordially, David.
Pear OS “を今日のような状態にしてくれたすべてのユーザー、モデレーター、その他の開発者に感謝したい。この冒険がなければ、実現しなかっただろう。私は別の方向に進みます。もう一つの大きな感謝を込めて、すぐにオープンソースの現場に戻りたいと思います。
心から、David。
それまでのバージョンは SourceForge からも削除されましたが、Softpedia によってダウンロードできるよう維持されていました。
その後、再び Pear OS が世に現れたのは2年後の2016年3月。
Ubuntu 14.04.4 LTS をベースとした Pear OS 9.3 がリリースされました。
ですが、コレもわずか数週間で状況が変わります。
同年4月、Pear OS 9.3 のアップグレード版として GmacOS (もしくは Gmac Linux) 10 のベータ版がリリースされ、翌月には安定版として GmacOS 10.3 がリリースされました。
公開されたリリースでは David の名前はなく、開発の筆頭者はブラジルの Rodrigo Marques さんです。
ですが、コチラも3年後の2019年2月25日のアップデートを最後に、SorceForge で配布されていた iso イメージはすべて削除されています。
そしてその半年後の8月、インスタグラムで次のような投稿がありました。
“pearOS 9.3 Release by David Tavares. A new start, by Alexandru Balan. Stay tuned for pearOS 10.15 Catalina”
pearOS 9.3 リリース by David Tavares. 新たなスタート、Alexandru Balan (アレクサンドル・バラン) によるものです。pearOS 10.15 Catalina にご期待ください。
ということで、今度は Alexandru Balan さんによって開発が再開されたようです。
同時に Youtube チャンネルも公開され、場所はルーマニアになっています。
この動画の編集すする段階になって気がついたのですが、Web サイトでは見つけられなかったベースのディストリビューションについて確認することが出来ました。
ちなみに、開発者と同姓同名のユーチューバーが同じルーマニアにいましたが、同一人物なのかはわかりません。
ということで、前置きが長くなってしまいましたが、そんな紆余曲折のあった pearOS をインストールしてみましょう。
pearOS のダウンロード。
Web サイトにアクセスすると、トップにはインストール方法のボタンが表示されています。
テキストでの表示はなく Youtube の埋め込みだけです。
イメージデータのダウンロードは「versions」からです。
最新版の ThiccSur を始め、インスタで告知のあった Catalina などが表示されています。
ですが、なぜか Catalina はダウンロードできません。
SnowMojave なるバージョンや、それ以前のバージョンもダウンロードできるっぽいですね。
ダウンロードページをクリックすると、ダウンロードボタンが真ん中に表示されています。
何やら矢印が表示されていたので気になってクリックしてみると、ファイルの名前やサイズ、MD5 のハッシュ値が表示されます。
ダウンロードした後のチェックに役立ててください。
んで、ダウンロードボタンをクリックすると、何やら20秒間待たされます。
移動した先のページでも待たされます。
イロイロ待たされますが、ダウンロードしてインストールメディアを作成しましょう。
※インストールメディアの作成は省略します。
ダウンロードボタンの下に薄っすら書いてあった「System requirments」をチェックしておきましょう。
ThiccSur
CPU: Intel i3 or equivalent
RAM: 4GB
Storage: 50GB
AMD CPU’s are not that stable with pareOS
Running on a VM will not show very good performance!「AMDのCPUはpareOSではそれほど安定していません。
VM上で動作させても、あまり良いパフォーマンスは得られません」
Linux としては高めのハードウェア性能が要求されますね。
というか AMD だと不安定なんですね。
仮想マシンだと、うん。
KDE デスクトップはディスプレイ解像度とか、未だにうまく動作してくれませんから、でしょうね。
コダシマ的に、 KDE デスクトップのディストリビューションは実機テスト一択は変わりません。
Older versions
サポート外としながらも、古い PearOS をダウンロードすることが出来ます。
リスト上にあるのは
- pearOS 4
- pearOS 5
- pearOS 6
- pearOS 8
- pearOS 9.3
です。
GmacOS は含まれないようですね。
pearOS 4, 5, 6 は SourceForge からダウンロードできますが
pearOS 8 は Softpedia へのリンクっぽいですが、事実上ダウンロードできません。
pearOS 9.3 は Google ドライブからのダウンロードです。
Alexandru Balan は、あの手この手で pearOS を完全復活させようとしている感じを受けます。
ちなみにそれぞれのバージョンは、その当時の macOS に 似せてカスタマイズさせています。
pearOS のライブ環境。
今回のマシンは、Toshiba Dynabook R632/H
- CPU: Intel Core i5-3437U
- RAM: DDR3-1600 4GB
- Storage: 128GB SSD
一応、システム要件をクリアしているマシンです。
電源を入れたら F2 キーで BIOS を立ち上げ、USB メモリから起動できるようにします。
ってか、なってました。
ということで起動させます。
まず KDE neon のロゴが表示されます。
ここらへんからすでに macOS っぽくカスタマイズされています。
てか、このチェックの嵐は、やっぱり Ubuntu ベースですね。
[ Ctrl ]+[ C ] でスキップできるようですが、あんまり期待しないほうがイイです。
てか、ちゃんとチェックしてもらったほうが、後々良いかもしれません。
思いの外、起動に時間がかかります。
デスクトップが表示されるまで、およそ5分程度かかります。
ひたすら辛抱しましょう。
インストール前に、ちょっと雰囲気を掴んでみようと思いましたが、ライブ環境はモッサリすぎるので、やっぱりちゃんとインストールしてからにしましょう。
でも、レイアウトやアイコンについては文句ないですね。
pearOS のインストール。
アイコンをダブルクリックしてインストーラーを起動させます。
インストーラーは「Caramales」ですね。
言語は日本語、タイムゾーンは東京、キーボードはデフォルト、今回も面倒がないようにクリーンインストールします。
ユーザー設定はお好みでどうぞ。
インストールはおよそ10分程度かかりました。
んで、再起動するわけなのですが
これもなかなか再起動しない。
ようやく画面が変わったのは、最初のクリックから1分近く経ってから。
とりあえず「Please remove the installation medium, then press ENTER;」が表示されたので一安心。
USB メモリを取り外して Enter を叩いたのですが…。
3分くらい待っても何も起きなかったので、強制終了して起動することにしました。
だって、3分もあればカップ麺が出来上がりますよ。
それでも、無事に起動しました。
かすかにスタートアップ音もしましたね。
忘れないように、先に Wi-Fi 接続しておきましょう。
KDE デスクトップだとウォレットの設定が必須ですね。
メニューを見てみると英語のままです。
ほかも、ほんの一部しか日本語化されていません。
フォルダの名前も英語のままですね。
でもインプットメソッドはしっかり入ってますね。
なんだか違和感。
アプリケーション。
Web ブラウザはカスタマイズされた「epiphany」ですね。
メッセージアプリは pMessage となっていますが、中身は「Empathy」。
メーラーは「KMail」です。
地図もオンラインなのでちゃんと表示されています。
このアイコンは写真のギャラリーとかですよね。
「Gwenview」というアプリです。
FaceTime のようなアイコンには「Cheese」が割り当てられています。
んー。
Facetime と Cheese を比べてしまうと、機能的にちょっと惜しい感じですね。
(モザイク処理レベルの汚部屋が写ってしまいました)
カレンダーのアプリは何だろ?
アドレスブックは「KAddressBook」です。
To Do もよく知らないアプリです。
メモ帳みたいなのは「KNotes」。
個人的にはメモ帳というよりは、付箋みたいな使い心地のアプリだと思います。
普通のテキストエディタ的なものをイメージすると、ちょっと違う感じだと思います。
「pear TV」は起動してくれませんでしたので次。
「pTunes」 とされているアプリは、やっぱり「Rhythmbox」です。
まぁ、Linux だと定番ですね。
ポッドキャスト用アプリの「gPodder」。
「PearStore」はソフトウェアセンターですね。
初回起動時はどうしてもリポジトリの更新とかで、なかなか表示されません。
ぶっちゃけ不安になりますね。
んで、最後は「System Settings」です。
コレも macOS っぽくはまとめられています。
開いたついでに、日本語環境を設定しましょう。
ここに日本語を追加します。
追加したらいちばん上に移動してきましょう。
ってか、英語消してもいいかな?
フォーマットも変更しておきましょう。
スペルチェックとかはスルーします。
インプットメソッドもすでに設定されてるし。
ってか、表示言語が英語のままなのにインプットメソッドは設定済みって…。
逆パターンは多いけど、コレはあんまり見たことがないなぁ。
とりあえず、再起動してしっかり設定を反映させましょう。
再起動後。
さて、チェックしてみましょう。
メニューはちゃんと日本語化されましたね。
フォルダは、英語のままのようです。
でも「ホーム」とか「デスクトップ」、「ゴミ箱」は日本語化されました。
ブラウザも、日本語表示されてますね。
ちょっと Youtube をチェックしてみましょう。
うん。
ロケーションもちゃんと日本になってますね。
あと気になった地図。
地図の表記は日本語化されるのかな?
っと思ったら、英語のまま。
これは仕方ないかな?
んー、でも地図の提供は MapBox みたいだし。
設定とかで変えられるのかな?
チョットわからん。
そういえば、まだ neofetch をチェックしていなかったので見てみましょう。
ほう。
アスキーアートまでこだわりの5色 Apple カラー。
あれ?
ベースのディストリビューションとかの表記がないなぁ。
screenfetch でも見てみましょう。
こっちだと OS は Neon 20.04 focal LTS になってる。
デスクトップ環境も KDE 5.79.0 / plasma 5.21.2 。
GTK テーマとアイコンが pearOS という構成になってます。
うん。
紛れもなくカスタム Neon ですね。
ってか、メモリ 1GB 越えてますね。
なるほどアイドル状態でコレなら 4GB 必要なわけですね。
Htop でシステムをモニタリングしてみますか。
Youtube の再生でもう少し RAM を使うかと思ったのですが、以外にもそこまでではありませんでした。
ブラウザがイイのかな?
補足。
日本語入力に触れていませんでしたが、インストール直後から特に設定しなくても日本語入力できます。
表示は日本語化されてないのに、入力は日本語OKとか不思議な気分です。
あと画面上部にあるメニューバーについても、反映されるのは一部アプリケーションにはなります。
ちなみに、ちゃんと反映されているアプリケーションについては概ね日本語化されていました。
まとめ。
ということで、今回は Apple 以外の PC で macOS のような体験を提供する pearOS を紹介しました。
コレまでの pearOS では Ubuntu をベースとし、カスタマイズされた GNOME デスクトップでリリースされてきましたが、最新版となる ThiccSur は Ubuntu と KDE Plasma 環境で構成された
KDE neon をベースに開発されています。
Linux 界隈では、 KDE デスクトップのカスタマイズ性の高さはよく知られています。
高い再現性は KDE デスクトップの力によるところが大きいかと思いますが、それにしても「よくぞここまで」という感じがします。
また Web サイトではさまざまな関連サービスが予定されているようです。
これらのサービスも Apple のそれと似ています。
どこまで実現するかわかりませんが気になりますね。
Windows と双璧をなす macOS なので、クローンと呼べるほど似ている見た目のディストリビューションが生まれても何ら不思議はありませんよね。
でもまぁ、個人的にはもう少し軽いスペックで動作する Xfce のカスタマイズでも充分です。
ですが、カスタマイズの手間をかけずに macOS っぽい環境を手に入れたい方には良いかもしれません。
ん?
でもアプリケーションは、ドックランチャーに表示されているアプリ程度しかインストールされていないので、ほかのソフトウェアはイチからインストールしなければ行けません。
結局、手間はかかるのか…。
まぁ、手間のかからない Linux はないということですかね。
pearOS についての情報はあまり多くありませんが、Instagram を始め Youtube や Twitter, Reddit などで
情報公開されています。
気になる方は、是非チェックしてみてください。
pearOS へのアクセス。
- pearOS: https://pearos.xyz/
- Instagram: https://www.instagram.com/pear_os/
- Youtube: https://www.youtube.com/c/PearOS/featured
- Twitter: https://twitter.com/PearLinu
- Reddit: https://www.reddit.com/r/pearos/