皆さん Linux 使ってますか?
このチャンネルをご覧いただいている多くの方は、普段から Linux をお使いだと思いますが、普段はどんな Linux をメインで使っているでしょう?
Linux といえば、その軽快に動作する「軽量」というところが魅力の一つではないでしょうか?
ただ軽いだけの Linux では面白くありません。
紹介するのは「使える」超軽量 Linux です。
今回はその中から、antiX を紹介します。
使える「超」軽量 Linux
一言で超軽量 Linux といっても、世界中で開発されている Linux のことですから、その内容はピンキリです。
ただの超軽量 Linux という括りだと、Linux の利用経験のないユーザーだったり、まだ利用経験の浅いユーザーなどの、いわゆる Linux 初心者にはなかなかハードルが高いものが多いです。
そこで、そんな Linux 初心者でも使い始められる、比較的難易度が低いとされ、かつ「使える」 Linux を紹介します。
まず、繰り返し使えると言っていますが「使える OS」の定義をはっきりさせておきましょう。
使える OS の定義
- 有用性の高いアプリや環境がある。
- 不具合やバグが少なく、安定して動作する。
- 対応するデバイスが多い。
- サポートされている。
※セキュリティの脆弱性や不具合、バグに対する修正のプログラムが提供されている。
ココらへんを「使える OS」の定義とします。
次に「軽量 OS」の定義もはっきりさせておきましょう。
軽量 OS の定義
- 古いハードウェアでも動作する。
- OS のインターフェースがユーザーの邪魔をしない。
- GUI 環境のインターフェースがある。
早い話、低スペックマシンでも使いやすいインターフェースの OS というのが「軽量」の定義です。
メモリ使用量が少なく、プロセッサ速度の要件が低いディストリビューションのことです。
ただ「インターフェースがユーザーの邪魔をしない」という表現がちょっと曲者で、コマンド操作に精通しているユーザーであれば、あの真っ黒画面のインターフェースでも問題ないと思いますが、コダシマのように GUI 環境に依存しているユーザーや、Linux 経験のないユーザー、浅いユーザーなどの、いわゆる Linux 初心者にとっては、ハードルが高い環境です。
なので、ただ軽量なだけでなく、少なくともマウスで手軽に操作できる GUI 環境というのも加えて定義しておきたいと思います。
それでは、antiX を見ていきましょう。
antiX
antiX は Debian 安定版をベースとし、高速で軽量かつインストールが簡単な systemd フリーのライブ CD で利用できる Linux ディストリビューションです。
ちなみに、まだ 32-bit 版の開発も続いています。
システムを複雑化させるとして一部のユーザーから避けられている systemd フリーの Linux で、システムのシンプルさにもこだわった Linux です。
そして人気の MX Linux のベースシステムとしても知られています。
また、インストール前から、システム言語を変更することができ、日本語についてもほぼ完璧に翻訳されています。
しかし、日本語入力環境の設定を自力で行う必要があり、その点がちょっとめんどうですが、安定性がとても高く、パッケージの保管庫であるリポジトリも、アップストリームの Debian と高い互換性があるためしっかり使える Linux です。
また antiX の名前の由来は、フォーラムにあった古い書き込みから、X ウィンドウサーバー を使用しないというところから付けられた名前のようです。
X ウィンドウサーバーとは、GUI 環境を実現する X window system の一部なのですが、クライアント/サーバー方式で処理を分散する仕組みになっています。
X サーバーと X クライアントは、相互に通信を行いながら連携して動作し GUI 環境を実現します。
antiX は、その X ウィンドウサーバーとクライアントを使用しないという意味の名前ということです。
X ウィンドウサーバーを使用せず、かつ systemd に依存しないという理由から、antiX は動作がとても軽快で、古くなったハードウェアでの利用に適しています。
プロジェクトサイトでも「古いコンピュータをまだ捨てないでください!」と呼びかけています。
antiX offers users the “antiX Magic” in an environment suitable for old and new computers.
antiXは、新旧のコンピュータに適した環境で、ユーザーに「antiXマジック」を提供します。So don’t throw away that old computer yet!
https://antixlinux.com/about/
だから、その古いコンピューターをまだ捨てないでください。
そんな antiX のハードウェア要件はコチラ。
antiX-base の最小スペック(カッコ内は antiX-full の推奨スペック)
- CPU: Pentium II (Pentium III 以上)
- RAM: 192 MB (256 MB 以上)
- DISK: 3 GB (5 GB 以上)
めちゃくちゃ低スペックで動作します。
そして GUI 環境を持たない antiX-core の場合にはさらにスペックが低く
antiX-Core の最小スペック
- CPU: Pentium II
- RAM: 128 MB + swap
- DISK: 1GB
http://download.tuxfamily.org/antix/docs-antiX-19/FAQ/index.html
という Windows XP の最低要件よりも低い環境で動作します。
ただし、一つ注意点があります。
特にインターネットで動画視聴や Google Docs などのサービスを利用する場合、これらの要件のハードウェアではちゃんと動作しません。
最近のインターネットのサービスは、ある一定以上の動作周波数をもつプロセッサと、最低 1GB 以上の RAM が実装されてる端末でないとまともに使えません。
Youtube で紹介した BunsenLabs の最小ハードウェア要件の欄で RAM 1GB としたところ、「超軽量ではない」というコメントを頂きました。
が、ちょっと反論させていただくと、実際に 1GB 以下の RAM で PC を常用するのは現実的ではない世の中になってきました。
スマホですら、4GB RAM や 8GB RAM というモデルも存在しています。
なので、RAM 1GB でも、十分に超軽量と呼んで良いと考えています。
少し話は反れましたが、今回の antiX は、ハードウェアでの動作よりも日本語入力環境の設定に重点をおいて紹介しますので、画面は仮想環境でのものとなります。
antiX 日本語入力環境の設定。
日本語入力環境の設定とか面倒ですが、少し前まではどの Linux でもやってたんですよね。
てか、こういった手間を踏むことで、システム内でどういった設定がされているかを知ることもできます。
学習の機会と心得ましょう。
今回は、入力メソッドに Fcitx と、変換エンジンに Mozc を使います。
ちなみに Mozc は、Google 日本語入力のオープンソース版です。
この組み合わせは、様々なキーボードレイアウトでの入力に柔軟に対応できるシステムなので、かの Windows ですら設定の面倒な US 配列キーボードでの日本語入力といったような、イレギュラーな組み合わせも難なくこなします。
ということで日本語入力環境の設定を行っていきましょう。
日本語入力設定の3ステップ
- fcitx-mozc のインストール
- fcitx-autostart の設定
- gtk/qt のインプットメソッドの設定
順を追って設定していきましょう。
1. fcitx-mozc のインストール
コマンドでの操作はコチラ。
$ sudo apt install --install-recommends fcitx fcitx-mozc
ツールバーにある「ソフトウェア・インストーラー」または、「メニュー」⇒「アプリケーション」⇒「システム」⇒「パッケージインストーラー」で起動する「パッケージインストーラー」で、その検索窓に「jap」と入力すると表示される一覧の中から、「Japanese_Input_fcitx」にチェックを入れ、「インストール」ボタンをクリックすると必要なパッケージがインストールされます。
MX パッケージインストーラーに似ているので、MX Linux と同様にパッケージのインストールと設定を同時にやってくれるかと思ったのですが、ダメでした。
やっぱり自力で fcitx の起動設定などが必要です。
ちなみに、書類の作成などを検討している方は「Japanese_Font」も一緒にインストールすると、複数のフォントが追加されるのでおすすめです。
2. fcitx-autostart の設定
「メニュー」⇒「コントロールセンタ」の左側に並んでいる一覧から「Session(セッション)」をクリック。
この一覧にある「ユーザーのデスクトップセッション(User Desktop-Session)」を開きます。
5つの項目がタブで表示されており、エディタが開いた直後は「startup」が選択されています。
「startup」の末尾へコチラの内容を追記することで 、Fcitx が自動的に起動するようになります。
# fcitx-autostart
fcitx-autostart &
3. gtk/qt のインプットメソッドの設定
「 ユーザーのデスクトップセッション(User Desktop-Session) 」のタブから「desktop-session-conf」を選択します。
この文末にコチラのスクリプトを追記します。
# set fcitx
export GTK_IM_MODULE=fcitx
export QT_IM_MODULE=fcitx
export XMODIFIERS=@im=fcitx
export DefaultIMModule=fcitx
いちばん最後の「export DefaultIMModule=fcitx」は、なくても起動することがほとんどですが、追記しておくと間違いないので追記しています。
これでログインし直すと、日本語入力ができるようになっています。
antiX 日本語入力環境の設定まとめ
今回は Debian ベースの使える超軽量 Linux ディストリビューションとして antiX の、特に日本語入力をするための設定について紹介しました。
antiX は、とても軽量な Linux なため、古いコンピュータでの利用はもちろん、高速起動するレスキュー CD としても使用できるのも特徴です。
システムの優秀さは MX Linux の人気が物語っていると思うので、ココでは割愛させていただきます。
そんな antiX の日本語入力設定3ステップをおさらいしてみましょう。
1. fcitx-mozc のインストール
$ sudo apt install --install-recommends fcitx fcitx-mozc
の実行。(予めリポジトリのアップデートをお忘れなく)
2. fcitx-autostart の設定(setup への追記)
# fcitx-autostart
fcitx-autostart &
の追記。
3. gtk/qt のインプットメソッドの設定(desktop-session-conf への追記)
# set fcitx
export GTK_IM_MODULE=fcitx
export QT_IM_MODULE=fcitx
export XMODIFIERS=@im=fcitx
export DefaultIMModule=fcitx
の追記。
これで再ログイン(または再起動)すれば antiX でも日本語入力できるようになります。
antiX は、32bit 版の開発が続けられている超軽量で多くのハードウェアで動作する Linux ディストリビューションなので、プロジェクトが訴える通り「古いコンピュータをまだ捨てないでください!」
この Linux ディストリビューションも、多少の知識が必要となりますが、根強いファンの多い、良い Linux ディストリビューションです。
今週末あたり、古いコンピュータにインストールしてみてはいかがでしょうか?