Android ベースじゃない、もちろん iOS でもない Linux ベースのモバイル OS である Ubuntu Touch の最新版がリリースされたとのことで、改めていじってみました。

結論:特に大きな変化はありません。

ベースの Ubuntu は 16.04 LTS のまま。

主にバグ対応が中心になっているリリースのようです。

目立つところでは、Android 9対応スマホでNFC機能をサポート、個別機種でのカメラ周りの不具合の改善などですが、基本的にはバグ対応が中心になっているようです。

はじめに。

2021年5月14日に、日経Linux / ラズパイマガジンの公式アカウントで Ubuntu Touch OTA-17 のリリースについてツイートがありました。

コダシマは5月6日にアップされた 9to5Linux の記事でチェックしてました。

が、実は今回、動画作るのはちょっと見送ろうかと思ってました。

理由は冒頭でもお話したとおり、

  • ベースがまだ Ubuntu 16.04 LTS 
  • NFC ハードウェアのサポート
  • 個別機種のカメラ類の不具合修正
  • バグ対応がメイン

ということで、コダシマの触手が動きませんでした。

例によってコダシマのテストマシンは Nexus 5 なのですが、対応デバイス一覧にある肝心の Nexus 5 には「プロブレム」の文字。

【Ubuntu Touch OTA-17】Android でも iOS でもない Linux ベースのモバイル OS の最新版をいじってみた。

開いてみると NFC はバツがついてる。

これだと「リリース番号が変わっただけの同じ内容の動画にしかならないだろうなぁ」と思ったので見送ろうかと思ってました。

が、日経Linux / ラズパイマガジンの公式アカウンのツイートの後 Ubuntu Touch を扱ったブログ記事(Youtube のテキスト版とも言う)のアクセスが、再び伸び始めたのを見るとついつい欲が出てきます。

ということで、できるだけ同じ内容にならないよう Ubuntu Touch 紹介していきます。

Ubuntu Touch って?

【Ubuntu Touch OTA-17】Android でも iOS でもない Linux ベースのモバイル OS の最新版をいじってみた。

Ubuntu Touch は UBports Community によって開発・保守されているモバイルバージョンの Ubuntu です。

カスタム ROM と呼ばれるスマートフォンやタブレット用の OS の多くは Android をベースとしていますが、Ubuntu Touch は数少ないそれ以外の OS です。

プロジェクト自体は Ubuntu の支援を行う Canonical によって2011年から始まり、2013年10月には Ubuntu Touch 1.0 が発表され、次の年の2014年4月には Ubuntu 14.04 と一緒に安定版をリリース。

同年9月にはメーカーにもリリースされ、2015年には世界初の Ubuntu ベースのスマートフォンがヨーロッパで発売されました。

【Ubuntu Touch OTA-17】Android でも iOS でもない Linux ベースのモバイル OS の最新版をいじってみた。

順調に開発が進んだかのようにみえましたが、2017年4月に、Canonical が Ubuntu Touch のサポートを終了。

もともとは Canonical が始めたプロジェクトでしたが、Mark Richard Shuttleworth が2017年4月5日の Ubuntu Blog で次のように発表しまた。

We care that Ubuntu is widely useful to people who use Linux every day, for personal or commercial projects. That’s why we maintain a wide range of Ubuntu flavours from both Canonical and the Ubuntu community, and why we have invested in the Ubuntu Phone.

私たちは Ubuntu が、個人的または商業的なプロジェクトで毎日 Linux を使用する人々にとって広く有用であることを大切にしています。だからこそ、Canonical 社と Ubuntu コミュニティの両方から提供される幅広い Ubuntu フレーバーを維持し、Ubuntu Phone にも投資しているのです。

I took the view that, if convergence was the future and we could deliver it as free software, that would be widely appreciated both in the free software community and in the technology industry, where there is substantial frustration with the existing, closed, alternatives available to manufacturers. I was wrong on both counts.

私は、もしコンバージェンスが未来であり、それをフリーソフトウェアとして提供することができれば、フリーソフトウェアコミュニティとテクノロジー業界の両方で広く評価されるだろうと考えていましたが、これらの業界では、メーカーが利用できる既存のクローズドな代替品に大きな不満を抱いています。しかし、私はどちらも間違っていました。

https://ubuntu.com/blog/growing-ubuntu-for-cloud-and-iot-rather-than-phone-and-convergence

まぁ、思ってたんと違うってことだったんでしょう。

その開発は、現在の UBports が引き継ぐこととなりました。

この時期辺りには Android 以外をベースとした OS がいくつか開発されており、 Firefox をベースとした意欲的な Firefox OS などもありました。

【Ubuntu Touch OTA-17】Android でも iOS でもない Linux ベースのモバイル OS の最新版をいじってみた。

が Firefox OS も波に乗り切れず2016年7月に撤退しています。

今思うと、いじっとけばよかったと後悔しています。

んで、Ubuntu Touch は知名度の高い Linux ディストリビューションである Ubuntu をベースにタッチスクリーン環境で使うことを前提として設計されていますが、一部デバイスで使える「デスクトップモード」では、実験的な機能としながらもデスクトップコンピュータとしても機能させることができます。

前の動画でも紹介したとおり Nexus 5 は無理ですが、Nexus 7 であればデスクトップモードが使えます。

【Ubuntu Touch OTA-17】Android でも iOS でもない Linux ベースのモバイル OS の最新版をいじってみた。

ちなみに、デスクトップモードではありませんが、 Nexus 5 にもマウスやキーボードを繋げてそれっぽく使うこともできます。

【Ubuntu Touch OTA-17】Android でも iOS でもない Linux ベースのモバイル OS の最新版をいじってみた。

でも、めぼしいアプリが無いのが残念です。

また、以前紹介した Jing OS は大々的に「コンバージェンス」言葉、統一された環境というか、1台でデスクトップとしてもモバイルとしても柔軟に対応できることを謳っていますが、実はそれよりも先に Ubuntu Touch がコンバージェンスを謳っています

https://www.ubports.com/convergence

ですが「実験的な機能」という言葉のせいか、いちばんのヘッドラインでコンバージェンスと謳っている Jing OS のそれよりだいぶ控えめな印象を受けます。

でも、まあ Jing OS の場合には同時に JingPad の開発も行ってるので、そう言った面からも「コンバージェンス」を強調したかったのかもしれませんね。

【Ubuntu Touch OTA-17】Android でも iOS でもない Linux ベースのモバイル OS の最新版をいじってみた。

Android 以外をベースとしたモバイル OS もありますし、コンバージェンス OS だけなら Ubuntu Touch があります。

世界初を謳うには2つ揃わないとダメですからね。

いずれにしても Ubuntu Touch は現時点で、対応するデバイスはそれほど多くないため利用する際には注意が必要です。

対応するデバイスの一覧があるので、気になる方はチェックしてみてください。

https://devices.ubuntu-touch.io/

OTAってなに?

【Ubuntu Touch OTA-17】Android でも iOS でもない Linux ベースのモバイル OS の最新版をいじってみた。

んで、リリースナンバーに OTA とあります。

この  OTA とは Online Travel Agent の略… Over-The-Air の略で「無線で」「電波で」といった意味を持つ表現です。

特にスマートフォンやタブレット端末で、ファームウェアやオペレーティングシステム、アプリの更新を行うためにデータの受信を無線 LAN などのワイヤレス通信を経由して行いうことを OTA アップデートと呼びます。

https://e-words.jp/w/OTA.html

言葉にするとなんだかややこしいですが、普通に Android や iOS で提供されているアップデートのインストールなんかが OTA アップデートになります。

つまり、今回のこの Ubuntu Touch の OTA-17 というのもは、Android や iOS のそれと同じように更新することができます。

【Ubuntu Touch OTA-17】Android でも iOS でもない Linux ベースのモバイル OS の最新版をいじってみた。

ちなみに、Ubuntu Touch は Ubuntu 20.04 をベースとしたリリースを目指していますが 

OTA-18 までは、Ubuntu16.04 ベースのリリースになるとのことです。

んで、早速更新したのですが、うっかり撮影するのを忘れてしまいました…。

アップデートのダウンロードが終わったら、Android や iOS 同様に再起動が必要になります。

再起動のときには Ubuntu Touch の彼が登場します。

【Ubuntu Touch OTA-17】Android でも iOS でもない Linux ベースのモバイル OS の最新版をいじってみた。

Ubuntu Touch の魅力は?

【Ubuntu Touch OTA-17】Android でも iOS でもない Linux ベースのモバイル OS の最新版をいじってみた。

Ubuntu Touch の魅力は何でしょう?

ちょっと考えてみました。

一言でいうと「ロマン」です。

なんて言ってしまうと身も蓋もありませんので、もうちょっと真面目に考えて見ました。

実際のトコロ、モバイル OS の世界では Android と iOS で埋め尽くされています。

特に Android はオープンソースとして配布されているためたくさんのデバイスに対応しており、たくさんの派生 OS も生み出しました。

でも、やっぱり Android 派生は、 Android でしかなく、ぶっちゃけ、どれもあまり大差ありません。

たまには、インターフェイスが Android っぽくないものもありますが、中身は至って Android です。

また、アプリの入手については Google のサービスに頼る他なく、この点も他と代わり映えなくなる理由になるかと思います。

当たり前というか、仕方ないというか、モバイル OS の宿命なのかもしれません。

が、そんな中にあっても、全く別の可能性を持ったモバイルOS が Ubuntu Touch ではないかと思ます。

アプリの数やそのクオリティなどの実用性こそ Android の圧倒的なライブラリには到底かないませんが、それ以外の面では Android にも負けていない部分もあります。

そのひとつ、Ubuntu Touch は完全にフリーなオープンソースです。

誰もが制限なしに全てのソフトウェアを自由に使用、研究、共有、および改善することが

フリーソフトウェアライセンスのもとで約束されています。

それにオープンソースは、誰もがソースコードにアクセスしてソースコードを変更したり、配布やコピーができることを意味しています。

【Ubuntu Touch OTA-17】Android でも iOS でもない Linux ベースのモバイル OS の最新版をいじってみた。

プログラムを透明な箱に入れているような感じですね。

そのため、ソフトウェアのバックドアをインストールすることは不可能です。

すぐに世界中のエンジニアが見つけてしまいます。

さらに、Ubuntu Touch はクラウドに依存しないため、データ抽出をする可能性のあるウイルスやその他のマルウェアも事実上ありません。

これらの特徴を見てみると、セキュリティ的にとても強固だといえます。

それに広告もありません

おまけに、先程も少し触れたコンバージェンス

一部デバイスに限られてはいますが、Ubuntu Touch であればスマートフォン上で従来の PC と同じことができるようになります。

もともとがデスクトップ OS の Ubuntu なので、イメージとしてはモバイル用にギュッとした Ubuntu Touch を、外部ディスプレイなどにつないでパッと Ubuntu に戻して使う感じですかね?

で、繰り返しになりますが、まだ実験的な機能です。

ディスプレイサーバーの X11 や Wayland などの改善が続けられています。

ARM プロセッサの場合、デバイスごとに対応していかなければいけないため、その改善は一筋縄では行かないことでしょう。

ですが、これが完璧に実現すればスマートフォン1台だけで全て済むようになりますね。

スマートフォンも高性能になったので、よほど重たい作業をしない限りは充分ではないでしょうか?

おそらくAmazon とかで販売されている安価なノートPC 程度には使えると思われます。

まさにポケットコンピュータですね。

ここら辺が特にロマンを感じます。

現状では、実用性よりもセキュリティ面とロマンが Ubuntu Touch の魅力ではないでしょうか。

今回のまとめ。

【Ubuntu Touch OTA-17】Android でも iOS でもない Linux ベースのモバイル OS の最新版をいじってみた。

ということで今回は、Ubuntu Touch の OTA アップデートと言うことで、さっそくアップデートしてみました。

動画撮影を忘れて…。

でも、すでに UbuntuTouch をインストールしているのであれば簡単にアップデートできます。

イメージ的に iOS や Android のアップデートと同じような感じです。

今のところ大幅な変化は見られませんが、デバイスの機能を充分に使えるようになってきています。

あとは Ubuntu 20.04 へのアップデートと完璧なコンバージェンス環境の実現、対応するデバイスが増えることを期待するばかりです。

現状では実用性よりも、その特異な立場の希少性というかロマンばかりが先行してしまいますが、数少ない Android 以外のモバイル OS として個人的には今後の開発がとても楽しみです。

対応しているデバイスであればインストールはとても簡単なので、興味のある方は是非チェックしてみてください。

UBports へのアクセス

参考サイト

▶UBports Ubuntu Touch
▶UBports Ubuntu Touch OTA-17 Release
▶UBports Ubuntu Touch OTA-17 Call for Testing
▶UBports UBports Installer
▶UBports Choose Device

▶日経Linux / ラズパイマガジンのツイート

▶9to5Linux
 Ubuntu Touch OTA-17 Arrives May 12 with NFC Support, Available for Testing Now

▶Ubuntu
 Growing Ubuntu for cloud and IoT, rather than phone and convergence

▶OMG!Ubuntu
 Ubuntu 18.04 To Ship with GNOME Desktop, Not Unity

Canonical

▶BQ Aquaris E4.5
 https://en.wikipedia.org/wiki/BQ_Aquaris_E4.5

▶e-Words: OTA
 https://e-words.jp/w/OTA.html