最近、ミニ PC もだいぶハイスペックになりましたよねー。すごいですよね!
ミニPCとはいえ、メインマシンとして使えるくらいのスペックは当たり前にある時代です。
今回もまた、ミニ PC の話題なのですが…
大丈夫ですか?あなたのそのミニ PC ???
というのも、高いパフォーマンスを出すってことは、その分プロセッサも忙しく働くわけで、そうなるとそこに熱が生まれます。
早い話、ハイパフォーマンスのマシンは爆熱なんです。
それに加えて、夏の時期、ただでさえ気温が上がる中、ハイパフォーマンスマシンを動かせば、更に高い温度の熱が発生します。
で、熱が発生すると、その熱で大体は正しく動いてくれなくなり、最悪の場合、電源が切れてしまいます。
いわゆる熱暴走が起こります。
ただし、今のデバイスのほとんどは、その熱暴走を防ぐための仕組みが用意されており、それをサーマルスロットリングと呼びます。
このブログをご覧のあなたであれば聞いたことがあると思います。サーマルスロットリング。
このサーマルスロットリングとは、CPU や SSD の温度が上昇しすぎた際に自動的にクロック周波数を下げ、温度を下げてくれる機能のことです。
熱による破損を防いでくれるありがたい機能ではありますが、クロック周波数を下げるためパフォーマンスが低下します。
ってことで、いずれにしろ、熱くなることはパフォーマンスを落としてしまう結果になります。
なので、この発熱をうまいこと発散させる仕組みがコンピューターには必要です。
ゴリゴリのゲーミング PC などは空冷だけでなく水冷などのシステムでガッツリ冷やす仕組みを持っていたりします。
また、オーバークロックの世界では、液体窒素まで用いて発熱を抑えパフォーマンスを競います。
それくらいまでして、パフォーマンスを維持するために発熱に気を配るわけですが…。
もう一度お伺いします。
大丈夫ですか?あなたのそのミニ PC ???
Beelink SEi14
今回この発熱対策の意味も込めて紹介するのは、 Beelink SEi14 という Intel Core Ultra 5 125H プロセッサ Arc グラフィックス搭載のミニ PC です。
同社では先行して SER8 という Ryzen7 8845HS プロセッサ Radeon 780M グラフィックス搭載のミニ PC を販売しています。
こちらのマシンもなかなかのハイスペックだったので、たくさんのガジェット系 Youtuber の方が紹介していたと思います。
Beelink のこの SE シリーズ、その上位の GT シリーズは、最新の AI 機能が追加されたプロセッサを搭載しただけの、ただのハイパフォーマンスミニ PC ではありません。
今回はそこを掘り下げてみたいと思います。
静かに、しっかり冷やす!
実は以前にも Beelink の SER6 のレビューをしたことがあるのですが、その時にも少し触れました。
ハイパフォーマンスのプロセッサもさることながら、このシリーズ、とにかく独自の冷却システムが優秀です。
大型ベイパーチャンバーを備えており、発生した熱を素早く伝導・分散させ、均一な温度を維持し、熱の蓄積を防ぐようになっています。
また、大型というだけあり、チャンバーの表面積はプロセッサーや電源モジュールなどの主要コンポーネントをすべてカバーできるほど大きい物が使われています。
さらにこのクーラーは豊富な風量で、高速な空気の循環を可能にし、ミニ PC の発熱を効果的に排出する高度な冷却を実現しています。
そのおかげで、負荷の高い作業や長時間の 3D ゲームでも低温を維持し、静かな状態を保つことができます。
で、ここで一つ補足しておきたいのですが、Beelink では、ストレージの差し替えや RAM の増設についても説明書に記載があるため、簡単な分解は問題ないようです。
ですが、SER6 のレビューの際、当時の担当から「ベイパーチャンバーはくれぐれも分解しないように」と念を押されたことを記憶しています。
構造上、一度分解してしまうとベイパーチャンバーとして十分なパフォーマンスが発揮できなくなってしまうからとのことです。
ベイパーチャンバーは、ヒートパイプと同じように熱を移動させる仕組みなのですが、水の蒸発と凝縮によって熱を瞬時に移動させる事ができる金属製の放熱部品です。
高い熱伝導能力を持っており、瞬時に熱を拡散させて放熱することができる仕組みなのですが、とても繊細な仕組みのために、導入コストは高くなってしまうデメリットもあります。
というか、ベイパーチャンバーのデメリットは価格くらいなもので、性能的には現状の放熱部品でトップクラスです。
で、排気口が本体底面にあるのも特徴的です。
これについても、計算されたエアフローで効果的に放熱する仕組みが取られており、そのため冷却ファンの回転数を抑えることができ、結果的に消音にもつながっているという仕組みです。
まぁ、公式サイトの情報を見ると若干誇大広告な感じもしますが…。
簡易のチェックでしかありませんが、実際に騒音レベルや温度などを調べてみると、他社製品とは明らかに違いを見せました。
まず、温度について…。
温度コントロール
通常 CPU の仕様には最大動作温度が定められており、この最大動作温度を超えると、サーマルスロットリングが機能するわけです。
Intel Core Ultra 5 125H の最大動作温度は 110°C と、それまでのインテルプロセッサ、例えば、一つ前の世代の Core™ i9-13900H プロセッサの最大動作温度 100℃ に比べ、10℃ も高くなっています。
旧製品の場合は 100℃ が最大動作温度だったため、おおむね 70-80℃ で動作するのが一般的です。
実際に Core i9-13900H 搭載のミニ PC を引っ張り出して来て、チェックしてみました。
Cinebench で負荷をかけている際に、プロセッサがどれくらいの温度まで上昇するかを HWMonitor をつかって計測。(室温 26℃)
すると、最高 99.0℃ を記録し、何度計測しても 90℃台 まで温度が上がり、計測中の動作も 80-90℃ と、けっこうギリギリのラインで動作していました。
また、別ブランドの Core i9-12900HK 搭載機でも試してみると、最高で 90.0℃ を記録。
ただこちらは、90℃ に達したのはこの一度きりで、概ね 80°C台後半の温度で落ち着いていました。
こちらのほうが比較的、冷却できているなぁと思っていましたが SEi14 の結果を見てびっくり!
プロセッサの仕様では最大動作温度が 10℃ 高くなっているのにもかかわらず、記録した最高温度は 80℃ 以下でした!!!
そんなはずはないだろうと、連続して Cinebench を動作させて3回目にして 91.0℃ を記録。
その際にも計測中 70-80℃台と、旧製品レベルの温度です。
んで、また驚いたが、負荷が終わった途端に急激にプロセッサ温度が下がるんですよ!
これには驚きました。
いや、負荷かけてもけっこう余裕あるんじゃね?という印象です。
騒音レベル
そして、負荷がかかっているときに発生するノイズにも注目してみました。
このシリーズでは、ベイパーチャンバーだけでなく、大風量なのに低騒音という冷却ファンを搭載しています。
冷却と安定性を維持するために必要なファンの回転数は非常に低く、静音動作を保証しますとの説明の通り、とても静かです。
加えて、デザイン的にも排気口が脇にないため、ダイレクトにファンの音が漏れることがありません。
この組み合わせによって騒音レベルも極限まで抑えられています。
プロセッサに負荷がかかっている状態では流石に 32dB は実現しませんでしたが、それでも 40dB 台の騒音レベル。
ちなみに他のブランドの Core i9-13900H や Core i9-12900HK では、50-60dB くらいの騒音レベルです。
個人的に 50-60dB 程度でも十分に静かと言えるレベルではあると思うものの、さらにその 10dB ほど静かだと言うのは、先程の発熱の部分も合わせて考えると、冷却システムが優秀という一言に限ります。
また、エアフローによりホコリ対策も考慮されており、ダストプルーフが内蔵されています。
ここらへんは、RAM などをアップデートする際に、ちょっと煩わしく感じるかもしれませんが、それはコダシマだけかもしれません。
ベンチスコア
いつものようにベンチスコアを計測いたしますが、今回はなかなか楽しみです。
いつもの Cinebench、Blender Benchmark、Geekbench、PerformanceTEST で計測しますが、1世代前の Core i9-13900H Iris Xe グラフィックス搭載のミニ PC と比較しました。
もちろん FF XV と BLUE PROTOCOL でもチェックします。
まずは、結果を続けてどうぞ。
Cinebench R23
- Multi Core: 11513 pts / Single core: 1719 pts
CINEBENCH R23 | https://www.maxon.net/ja/cinebench
Blender Benchmark 4.1.0
- Windows: 178.23 / Ubuntu: 231.29
- Windows | https://opendata.blender.org/benchmarks/a1c3de77-1f8c-4961-92ad-da6ba637da75/
Blender Benchmark | https://opendata.blender.org/
Geekbench6
- Multi-Core: 11165 / Single-Core: 2243
- https://browser.geekbench.com/v6/cpu/6814574
- OpenCL: 30740 / Vulkan: 30135
- OpenCL | https://browser.geekbench.com/v6/compute/2430868
- Vulkan | https://browser.geekbench.com/v6/compute/2430879
Geekbench 6 | https://www.geekbench.com/
PerformanceTest 11.0
- PassMark Ranking: 6714
CPU: 25288, 2D: 772, 3D: 5902, Memory: 2682, Disk: 40960 - https://www.passmark.com/baselines/V11/display.php?id=213958644717
PassMark PerformanceTest | https://www.passmark.com/products/performancetest/
ココまで見て、わかっていましたが改めてなかなかのパフォーマンスだと感じます。
ココからはゲーム系ですが、そこそこのスコアが出るようなので、どれくらいの設定で「普通」以上の評価になるか調べてみました。
FINAL FANTASY XV
- 設定:標準品質・1920×1080・フルスクリーン
- スコア:3721
- 評価:普通
FINAL FANTASY XV Benchmark | http://benchmark.finalfantasyxv.com/jp/
BLUE PROTOCOL
- 設定:1920×1080・高画質・仮想フルスクリーンモード
- スコア:6275
- 評価:普通
BLUE PROTOCOL Benchmark | https://blue-protocol.com/guide/benchmark
ちなみに、どちらも軽量設定にすると、FF XV は快適、BLUE PROTOCOL は極めて快適という評価が出ました。
もう Iris Xe 搭載とかでは喜べなくなりますね。
ゲームするなら Arc グラフィックス!みたいな感じです。
んじゃ、Linux
コダシマの興味の対象は Linux の動作です。
どうしても Linux はコミュニティベースという開発母体のため、最新のプロセッサ対応が後手に回ってしまう印象があります。
新しいプロセッサの恩恵に預かれるものなのか?というか、単純に動いてくれるかが気になるところなので、SSD を差し替えて Ubuntu をインストールしてみました。
ちなみに RAM も SSD も、Crucial の最新のものが使われていました。
…で、Blender Benchmark でスコアの比較。
データのある Core i9-12900HK Iris Xe グラフィックス搭載機との比較になります。
なんとまぁ、同じ機種なのに Windows のときとは別物くらいの差が出ます。
- Windows | https://opendata.blender.org/benchmarks/a1c3de77-1f8c-4961-92ad-da6ba637da75/
- Linux | https://opendata.blender.org/benchmarks/88627a8e-d50c-4bc5-86fc-bd64dc8a3862/
ただ、まぁ2世代前とは言え、やはり Core i9 です。スコアは負けてしまいます。
ですが、今回は SE シリーズのため、Core Ultra 5 です。
Core Ultra 9 ではありません。
Beelink の最上位 GT シリーズでは Core Ultra 9 が搭載されてたりするので、そこと比較したら結果がひっくり返るのは想像に容易いですね。
新しいプロセッサってそれくらいのパフォーマンスだというわけです。
まぁ、もっと細かく Linux 環境について検証したいですが、今のコダシマの生活だと、検証するのに時間ばかりかかってしまうので、まずは Linux でも無事に動作するってところは確認できたので、今回 Linux 環境についてはココまでとします。
Beelink SEi14 のまとめ
今回は、ハイパフォーマンスを静かにしっかり冷やす Beelink SEi14 を紹介いたしましたがいかがでしたでしょうか?
SEi14 は Intel Core Ultra 5 125H プロセッサと、Intel Arc グラフィックス搭載という、最新の組み合わせ。
そして、その高いパフォーマンスもさることながら、安定した動作を保証するための、独自の冷却システムがほかとの違いを感じさせてくれました。
似たようなスペックの製品はありますが、値段を取るか、安定性を取るか…あなたならどっち?というところでしょう。
もう20年以上も前の話になりますが、熱暴走でデータを飛ばした悲劇、未だに忘れられません。
今は、自動保存だったり、クラウドの同期だったりで、事故を防ぐ手立てがイロイロありますが…、倒れる前の杖と言いますか、備えあれば患いなしと言いますか…、冷却性能って馬鹿にできないと思います。はい。
しっかり冷やさないと、仕事もそうですが、楽しむものも楽しめませんからねぇ。
しかも、しっかり冷やしながらファンノイズもだいぶ小さいので、ゲームの没入感も高くなるんじゃないですかねぇ?
まぁ、そんな1台なので、それなりのお値段にはなりますが、夏場は、オンラインでもオフラインでも、あちこちでイロイロなセールが行われます。
Beelink の公式サイトや Amazon などでもセールやクーポンの配布が行われております。
動画概要欄にリンクを貼っておきますので、是非チェックしてみてください。
おまけ
2点だけ、気になるポイントをお伝えしておきます。
まず、初期セットアップが終わった後、早速ベンチスコアチェックをしていると、こんな画面に…。
どうやら、フルスクリーン表示がネックのようでした。
ただ、グラフィックスドライバーのなんちゃらって通知が入るので、Intel の名前のついた、なんかそれっぽいソフトウェアを起動。
するとブラウザが起動し、 Intel のサポートページが表示されました。
どうやら、ドライバをインストールし直す必要があったようです。
今回インストールの対象だったドライバは、グラフィックスと Wi-Fi 、Bluetooth の3つです。
OEM の構成が壊される!とか脅しにも感じられる文章があるのですが、「いや、そもそも不具合あるし」ってことで躊躇せずインストールしました。
お陰で、全画面表示ができるようになりました。
あと1点。
開封直後、底面のネジにはゴムで目隠しがされています。
この、ゴムがなかなかしっかり張り付いていて外しにくいです。
ゴムを壊してしまう勢いで挑まないといけません。
何かしらの意図があってのゴムなのでしょうが…。
コダシマはもう使わないです。はい。
Beelink SEi14 のスペック
Model | SEi14 |
CPU | Intel© Core™ Ultra 5 125H (14C / 18T) 4.5GHz Turbo Frequency 18MB Intel Smart Cache |
Graphics | Intel© Arc™ Graphics 2.2GHz (7 Cores) |
Storage | M.2 2280 PCIe4.0x4 (Max 4TB)*2 |
Memory | SO-DIMM DDR5 5600MHz Slot*2 |
Interface | Thunderbolt 4 (40Gbps/TBT4/PD/DP1.4)*1, Type-C 10Gbps (Data)*1, USB3.2 10Gbps*2, USB2.0 480Mbps*2, DP1.4a(4K 144Hz)*1, LAN(2.5G)*1, HDMI (4K 60Hz)*1, 3.5mm Audio Jack*2, DC IN (Pogopin)*1 |
Wireless Network | WIFI6 (intel AX200), Bluetooth 5.2 |
Dimension | 135x135x44.7mm |
Color | Frost Silver / Space Gray |
Adapter | Input: 100-240V AC, 50/60Hz, Output: 19V/5.26A |