同じソフトウェアでも、実は Windows よりも Linux のほうが快適という環境もあります。その代表が 3D アニメなどで活躍するソフトウェア、Blender です。コンピュータに興味を持たれている方、特に映像クリエイターを目指している方であれば、ご存知のことでしょう。このブログを御覧頂いてる方には、もはや説明不要かもしれませんが、念のために Blender について紹介いたします。

\ 只今セール開催中! /Minisforum NAB9

Blender とは?

【実はLinuxのほうが快適!?】Linux で始める 3D アニメーション by Blender

Blender(ブレンダー)は、3D コンピュータグラフィックスの制作やアニメーション作成、VFX 向けデジタル合成、などに特化したオープンソースのソフトウェアです。Blender の大きな特徴として、Blender 財団という非営利団体が開発しており、誰でも無料で使用できる点が挙げられます。また、動作する環境は Windows だけに限らず、macOS や Linux などでも動作するクロスプラットフォームというのも特徴です。

さらに、専用のグラフィック向けワークステーションが必要なプロ向けソフトと比較すると、Blender は負荷が低いため、一般向けの PC にビデオカードを追加する程度で始めることができる手軽さから、アマチュア層からも高い支持を得ています。

では、どれくらいのスペックで Blender が始められるのでしょうか?気になりますね。

Blender が必要とする動作環境を見てみましょう。

Blender の動作環境

【実はLinuxのほうが快適!?】Linux で始める 3D アニメーション by Blender

Blender の公式サイトを確認してみると、動作環境は次のとおりです。

  • OS: Windows 8.1 (64-bit), Distribution With glibc 2.28 or newer (64-bit)
  • CPU: 4 cores with SSE4.2 support (Recommended 8 cores)
  • RAM: 8 GB (Recommended 32GB)
  • GPU: 2 GB VRAM with OpenGL 4.3 (see below) (Recommended 8 GB VRAM)

確かに、推奨するハードウェア要件もそれほど高いものではないです。

まぁ、制作するコンテンツの規模によって、必要とするスペックが高くなるのは想像できますが、とりあえず Blender を使い始めるにあたっては、導入のハードルは低いものになっています。

で、動作環境の補足。

glibc(ジーリブシー)

Linux をはじめとする UNIX 系のオペレーティングシステムやアーキテクチャで使われる「GNU Project」による標準ライブラリ「libc」の実装です。C 言語の標準ライブラリ名を libc(リブシー)といい、多くのプログラムで共通して使われるような、システムコールを始めとする基本的な「部品」を集めたものです。

SSE (Security Service Edge)

Intel が開発した CPU の SIMD 拡張命令セットです。Blender では SSE4.2 がサポートされていることが必要のようですが、この SSE とは、文字列処理とデータ整合性チェックを高速化するための命令セットで Nehalem (ネハレム・ネヘイレム)アーキテクチャ以降(Core i シリーズ)に採用されているものです。なので、Core 2 Duo 以前などのプロセッサでは動作しませんが、Core-i シリーズのものであれば問題ありません。

VRAM

VRAM とは、GPU メモリとも呼ばれ、グラフィックボード(グラボ)に搭載されている映像処理専用のメモリのことです。グラフィックボードを搭載する場合には目を通しておいたほうが良いかと思いますが、ココ数年で販売されているものであれば、概ねクリアしているかと思います。

ちなみにノート PC などの内蔵グラフィックスの場合、例えば Intel Iris Xe グラフィックスは、専用の VRAM を持たず、システムメモリを共有するので、通常では最大でシステムメモリの約半分をグラフィックスメモリとして使用することができます。

【実はLinuxのほうが快適!?】Linux で始める 3D アニメーション by Blender

たとえば、8GB の RAM を搭載しているシステムでは、最大で 4GB をグラフィックスメモリとして使用することができます。ただし、実際の使用可能なメモリ容量はシステム設定や負荷により異なる場合があることをご理解ください。

っとまぁ、これらも踏まえて改めて動作環境を見てみると、Blender が必要とする要件が低めなことがおわかりになるかと思います。

 なぜ Linux で Blender ?

【実はLinuxのほうが快適!?】Linux で始める 3D アニメーション by Blender

で、この Blender、オープンソースのフリーソフトウェアだからといって侮ってはいけません。

3DCG 業界やアニメ業界では、これまで Maya や 3ds Max などのプロ仕様のソフトウェアが標準となっていましたが、近年では機能が強化されたことで、プロフェッショナルの現場でも利用する動きが見られています。

【実はLinuxのほうが快適!?】Linux で始める 3D アニメーション by Blender

わかりやすいところの例でいうと、あの庵野秀明氏が代表を務めるアニメ制作会社・カラーと、その子会社であるプロジェクトスタジオ Q は、従来使用してきた 3ds Max から Blender への移行を進め、2021年3月8日に公開にした『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』において Blender の「実地検証」を実施したことで知られます。

ちなみに、両社は Blender 財団への賛同と開発資金の提供を発表しています。

そして、この Blender というソフトウェア、オープンソースという事もあってか(?)Linux との相性が良いソフトウェアです。どう相性が良いか?というと、知人のクリエイターいわく「パフォーマンスが最も高い」ということ。

【実はLinuxのほうが快適!?】Linux で始める 3D アニメーション by Blender

3DCG といえば、レンダリングという演算処理が必須になりますが、この処理が最も速いというのです。実は今回はじめて Blender Benchmark の存在を知ったのですが、Open Data では様々な環境のスコアを公開しています。

【実はLinuxのほうが快適!?】Linux で始める 3D アニメーション by Blender

これによると同じ環境でも、OS が違うとスコアに差が出るようです。もちろん Linux のほうがスコアが高いとのこと。ちょっと調べにくかったのですが、細かく比較してみると、同じ環境でも Linux のほうが高いスコアが出ている傾向にあります。

ってことで、ガッツリ Blender を使うのであれば、Windows よりも Linux のほうが快適に使うことができるはず。

ココらへんを実証してみましょう。

Minisforum Venus Series NAB9

【実はLinuxのほうが快適!?】Linux で始める 3D アニメーション by Blender

ってことで、今回 Blender の動作確認をするのは Minisforum のミニ PC、NAB9 です。まず、Minisforum についてです。先日も、Minisforum のミニ PC を紹介したのですが、今回も簡単に Minisforum について紹介しておきます。

Minisforum はミニ PC を専門に開発・販売するメーカーです。コストパフォーマンスに優れたローエンドモデルから、ゲーミング PC に匹敵するほどのハイエンドモデルまで、幅広く手掛けています。ミニ PC 選びでは、もう必ず名前が上がるようなメーカーではないでしょうかね?

【実はLinuxのほうが快適!?】Linux で始める 3D アニメーション by Blender

で、今回の NAB9 は、Intel の第12世代のモバイル向けプロセッサと、ちょっと型落ちな感じもしますが Core i9-12900HK という 14コア/20スレッド 、最大ブースト・クロック 5.0GHz というハイパフォーマンスの CPU が搭載されており、機能としては十分ハイエンドモデルと呼べる機種です。

グラフィックスは、先程も話題に上げた Intel iris Xe グラフィックスメモリは DDR4 規格で、今回の機種は 32GB 搭載。(最大 64GB まで搭載可能)ストレージは M.2 2280 PCIe 4.0 が1基と、2.5 インチの SATA 接続のストレージが増設可能。

【実はLinuxのほうが快適!?】Linux で始める 3D アニメーション by Blender

冷却ファンの付いた SSD ヒートシンクがなかなかの存在感ですね。ワイヤレスネットワークは M.2 2230 規格がサポートされており Wi-Fi 6Bluetooth 5.2 に対応。

有線 LAN も 2.5Gbps が2基、自宅サーバーの構築とかに良いですね。

【実はLinuxのほうが快適!?】Linux で始める 3D アニメーション by Blender

で、ビデオ出力は 4K 対応の HDMI 2基と USB-C 2基で、合計4画面同時出力ができます。電源は DC19V と、まあこれだけのパフォーマンスを賄うので、でしょうねという感じです。

NAB9 のスペックであれば、Blender でも問題ないでしょう。

ベンチスコアチェック

今回も、Cinebench、Geekbench、PerformanceTest にてサクッとベンチスコアを計測してみました。また今回は、Core-i9 搭載機ということで Filal Fantasy XV と Blue Protocol でもスコアをチェックしてみました。

Cinebench R23

【実はLinuxのほうが快適!?】Linux で始める 3D アニメーション by Blender

Multi Core: 13562 pts / Single core: 1680 pts 

Geekbench 6

【実はLinuxのほうが快適!?】Linux で始める 3D アニメーション by Blender

Multi-Core: 10351 / Single-Core: 2360
OpenCL: 15666 / Vulkan: 19082

PerformanceTest

【実はLinuxのほうが快適!?】Linux で始める 3D アニメーション by Blender

PassMark Ranking: 5016
CPU: 27347, 2D: 854, 3D: 3233, Memory: 3058, Disk: 36744

FINAL FANTASY XV

内蔵グラフィックスだと、軽量設定くらいが妥当なので、はじめから最も軽量になる設定で計測しました。

【実はLinuxのほうが快適!?】Linux で始める 3D アニメーション by Blender
  • 設定:軽量品質・1280×720・フルスクリーン
  • スコア:4392
  • 評価:普通

BLUE PROTOCOL

【実はLinuxのほうが快適!?】Linux で始める 3D アニメーション by Blender
  • 設定:1536×864・低画質・仮想フルスクリーンモード
  • スコア:7640
  • 評価:やや快適

ということで、型落ちとは言えさすがは Core i9、さすがは HK です。なかなかのパフォーマンスですね。

UbuntuでBlender

【実はLinuxのほうが快適!?】Linux で始める 3D アニメーション by Blender

ってことで、ココから Ubuntu の出番です。

Linux では最も名前が知られているディストリビューションで、もしかしたら Linux って名前は知らなくても Ubuntu なら知っているって人もいるのでは無いかと思うくらいのディストリビューションなので、Linux の代表として選びました。当然のことながら Blender を使うことができます。

今回「Blender は Windows で使うよりも Linux で使うほうがパフォーマンスが良い」という言葉を、まずは確認したく、ベンチマークソフトを走らせてみました。

Blender Benchmark

【実はLinuxのほうが快適!?】Linux で始める 3D アニメーション by Blender

Linux | https://opendata.blender.org/benchmarks/98338e5e-0bd9-448a-bbee-778ad791cb0f/

で、比較するはずの Windows でスコアを計測し忘れていたので、また Windows のはいった SSD に差し替えてチェック。

その結果がこちら。

Blender Benchmark

【実はLinuxのほうが快適!?】Linux で始める 3D アニメーション by Blender

Windows | https://opendata.blender.org/benchmarks/4caebb22-bacc-4cb0-9927-c49bb14b8952/

比較してみると、スコアに 51.9 もの差がでました!

3D グラフィックスの制作では、さまざまな演算処理が必要になりますが、当然スコアの良いほうが、速く演算することができるわけです。

【実はLinuxのほうが快適!?】Linux で始める 3D アニメーション by Blender

ってか、今回は Blender Benchmark での計測だけでしたが、他のベンチマークソフトでも Linux のほうが高いスコアが出る傾向にあると思います。システムが Windows よりもシンプルだからなんでしょうかね?詳しいことはわかりませんが、いずれにせよ、Linux と Blender の相性は良いようです。

なので、主に使用するソフトウェアが Blender なのであれば、OS を Linux にしてしまうのも良いかもしれませんね。

ちなみに、コダシマは Blender をほとんど使ったことが無いので、サンプルデータを眺める程度でしたが、複雑なデータもスイスイ動いていたように思います。

今回のまとめ

【実はLinuxのほうが快適!?】Linux で始める 3D アニメーション by Blender

今回は Linux 環境で 3D ソフトの Blender を動かしてみました。しかも Minisforum のミニ PC で!

今回の NAB9 も、内部へのアクセスが超ラクチンで、簡単にストレージ交換ができました。

【実はLinuxのほうが快適!?】Linux で始める 3D アニメーション by Blender

…ちょっと Wi-Fi のアンテナが邪魔してましたけれどね。コレくらいのパフォーマンスがあるミニ PC であれば、3D アニメーションの入門にもちょうどよいかな?と思い、ちょうどいいタイミングだったので試してみた感じです。

画質を抑えればゲームとかも行けそうな気がするので、SteamOS とかインストールしてみるのも面白そうですね。

ってことで、Linux でも 3D グラフィックスはできます。というかむしろ Blender であれば、Windows よりも Linux のほうが相性が良いです。Linux にしろ Blender にしろ、無料で始められるので、OS とソフトウェアに使う予定だったお金を PC に使うってのが良いと思いますがいかがでしょうか?

【実はLinuxのほうが快適!?】Linux で始める 3D アニメーション by Blender

といったところで、今回は以上となります。最後までご覧いただきありがとうございます!

このブログでは、コンピュータ界隈やテクノロジー界隈の話題、Linux や Android といったオープンソースの OS、スマホやミニ PC、シングルボードコンピュータなどの話題を扱っています。

\ 只今セール開催中! /Minisforum NAB9

参考リンク