今回の PC-FREEDOM は Raspberry Pi 用のオペレーティングシステムとして知られる「 Raspbian 」を 32bit パソコンで動作させてみます。
Raspbian とは?
Raspbian といえば Raspberry Pi 用の Debian ベース Linux ディストリビューションです。
そんな Raspbian ですが、Raspberry Pi 公式サイトのダウンロードページには「PC および Mac 用」のイメージデータが配布されています。
シングルボードコンピュータの Raspberry Pi でもサクサク動いてくれるオペレーティングシステムなので古いPCでもきっと快適に動作してくれるのではないかと思い試してみることにしました。
インストールする 32bit マシン。
今回用意した 32bit パソコンは 1.6GHz の Pentium M を搭載した東芝の Qosmio です。
- Name: Qosmio E10/2KLDEW
- Manufacturer: Toshiba
- CPU: Pentium M 725 1.60 GHz
- RAM: DDR-333 1.5 GB
- Storage: IDE SSD 128 GB (HDD 80 GB)
- Optical Drive: DVD±R/±RW/RAM/+RDL
- Display: 15 inch / XGA (1,024×768)
ストレージを SSDに換装しているので、アクセスはストレスが少ないです。
- 関連の記事▶Windows XP 世代ジャンク PC の IDE HDD を SSD へ換装してみた。
- 関連の動画▶32bit パソコンに Q4OS をインストールしてみた。:Qosmio を SSD 化する
参考までに現在手に入る Raspberry Pi のざっくりとしたスペックも紹介しておきます。
現在手に入る機種は Zero W/WH, 3 Model B+, 4 Model B かと思います。
Raspberry Pi Zero W/WH
- CPU: ARMv6 1GHz (シングルコア)
- RAM: LPDDR2 SDRAM 512MB
Raspberry Pi 3 Model B+
- CPU: ARMv8 (64bit) 1GHz (クアッドコア)
- RAM: LPDDR2 SDRAM 1GB
Raspberry Pi 4 Model B
- CPU: ARMv8 (64bit) 1.5GHz (クアッドコア)
- RAM: LPDDR4 SDRAM 1/2/4GB
詳しいスペックは Wikipedia で確認できます。
Pentium M のスペックはクロック周波数だけを見ると Raspberry Pi 4 に近いですが、Raspberry Pi 4 は64bitのクアッドコアなのでどちらかというと Zero のスペックのほうが近いかな?と思います。
いずれにせよ、このくらいのスペックで動作する Raspbian なら 32bit パソコンでも、快適に動作してくれるのではないかと思います。ちなみに Rasbian は Debian をベースとして、デスクトップに LXDE 、ウィンドウマネージャに Openbox という非常に軽量な構成のオペレーティングシステム。
それではまず、Raspbian のダウンロードからはじめていきましょう。
Raspbian をインストールする。
Raspbian のダウンロード。
パソコン用 Raspbian のダウンロードは Raspberry Pi 公式サイトのダウンロードページ中程にあります。
トレントファイルのダウンロードとイメージファイルを直接ダウンロードする2種類が選べるので、好きな方を選択して任意のフォルダにダウンロードしてください。
トレントファイルを選んだ場合には別途専用のソフトウェアが必要になります。ボクはだいたい Transmission を使います。
ですが、今回は直接イメージファイルをダウンロードしました。
イメージデータの書き込み。
今回の OS は Raspbian ということなのでイメージファイルの書き込みには、はじめ「 Raspberry Pi Imager 」を使ってみようと思いました。
「Choose OS」の項目のいちばん下にある「Use custom」選ぶと、事前に用意してあるイメージデータを書き込むことができます。
が、Raspberry Pi Imager はもともと microSD カードに書き込むことを前提として用意されたソフトウェアなので、基本的にはイメージファイルでも拡張子が「.img」しか認識しませんでした。
「.iso」は基本的に光学ディスクなど、変更内容を書き込まないことを前提としたイメージファイルで、「.img」は USB メモリや SD カードなど、変更内容の書き込みも考慮したイメージファイルというふうにボクは認識していました。
「File of type」を「All files (*.*)」にして書き込むのも良かったかもしれません。また基本的な内容については同じらしいので、拡張子を書き換えただけで使えるようなのです。
ですが、今回はなんか違う気がしたので今回は「 GNOME ディスクス」を使ってみました。
Linux のブログなのでね。
ディストリビューションによって若干レイアウトが変わってたりしますが、基本的な使い方は…
- 任意のストレージを選択
- 画面右上の設定ボタンをクリック
- 操作する項目を選択
以上の3ステップ。
今回のようにイメージファイルを書き込む場合には「ディスクイメージのリストア…」になります。
今回の書き込み時間はだいたい5分くらいでした。
ちなみに今回使った USB メモリは、先日さらに買い足した SanDisk の Cruzer Blade (8GB) です。
以前の記事でも触れていますが USB 2.0 までしか対応していません。ですが、古いパソコンで使ったり OS のインストールに使うには充分です。Amazon だとめちゃくちゃ安く手に入るうえ、SanDisk のサポートでは登録が必要ですが正規品かどうかを確認することができるようです。
個人的に最高にオススメな USB メモリです!
話は少しそれましたが GNOME Disks は DD コマンドというものを使って書き込みます。
Rufus にもあるモードなのですが、Rufus で言うところの iso モードとは異なり、必要な分のストレージしか使いません。そのためパーティションが複数になりますが、起動自体には問題ありませんので安心してください。
Raspbian を Qosmio にインストール。
では インストール用のメディアができたので、Qosmio にインストールしてみましょう。
今回も USB デバイスから起動できない機種でも、USB デバイスから起動できるようにするソフトウェア 「Plop Boot Manager」を使ってUSB メモリから起動します。
Qosmio では Plop Boot Manager の起動オプションである [Shift] + [U] が必要です。
起動メニューが表示されましたが、aspbian はどうやらライブ環境からインストールできなさそうです。
インストールする場合は、表示された起動メニューの4番目 「Graphical Install」を選択。
Raspbian は Debian ベースのディストリビューションなので、インストーラーは「Debian Installer」です。
「Japanese (日本語)」を選択できるようになっていますが、ここではキーボードの設定だけで実際にローカライズ設定が反映されるのは、初回起動時に設定するローカライズ設定になります。
キーボードの選択では「Japanese」を選択して「Continue(続ける)」をクリックしました。
次に、ディスクのパーティションを行います。パーティションの分割方法を聞かれます。
翻訳:
インストーラーは、ディスクをパーティション分割する方法(さまざまな標準スキームを使用)を案内できます。必要に応じて、手動でディスクをパーティション分割することもできます。ガイド付きパーティション設定を使用すると、後で結果を確認してカスタマイズする機会がまだあります。
ディスク全体に対してガイド付きパーティションを選択すると、次にどのディスクを使用するかを尋ねられます。
*ガイド付き-ディスク全体を使用
*ガイド付き-ディスク全体を使用してLVMをセットアップ
*ガイド付き-ディスク全体を使用し、暗号化されたLVMをセットアップします
*マニュアル
ここでは、いちばん簡単な、いちばん上に表示されている「ディスク全体を使用」を選択して「Continue(続ける)」をクリックしました。
次にパーティショニングするディスクを選択します。
翻訳:
選択したディスク上のすべてのデータが消去されますが、本当に変更することを確認する前に消去されるわけではないことに注意してください。
スクリーンショットは VirtualBox で撮影したためストレージの欄にはひとつしか表示されていませんが、実機では SSD と USB メモリが表示されているので SSD を選択して「Continue(続ける)」クリックしました。
次に選択したストレージのパーティショニングを行います。
翻訳:
パーティション化のために選択:
SCSI1 (0,0,0) (sda) – ATA CHN mSATAM3128: 128.0 GB *1
ディスクは、いくつかの異なるスキームのいずれかを使用してパーティション化できます。不明な場合は、1つ目を選択してください。
* 1つのパーティション内のすべてのファイル(新規ユーザーに推奨)
*1 … 実機での表示です。
*分ける / homeパーティション
* 分ける / home、/ var、/ tmpパーティション
よくわからないうちはいちばん上の All files in one partition にしておきます。
新規ユーザーに推奨されてますからね。
「Continue(続ける)」をクリックして進めます。
ここまで設定した内容の一覧が表示されます。
もしもやり直す場合には
Undo Changes to partitions
パーティションへの変更を元に戻す
または「Go Back(戻る)」ボタンをクリック。
問題がなければ
Finish partitioning and write changes to disk
パーティショニングを完了し、変更をディスクに書き込みます
を選択して「Continue(続ける)」をクリックします。
ここでもイロイロかいていますが、つまりは最終確認です。
問題なければ「Yes」を選択して「Continue(続ける)」をクリックするとインストールが始まります。
今回の環境だとここからおよそ15分後だったのですが GRUB ブートローダーのインストールについて聞かれました。
翻訳:
この新しいインストールは、このコンピューター上の唯一のオペレーティングシステムのようです。その場合、最初のハードドライブのマスターブートレコードにGRUBブートローダーをインストールしても安全です。
警告:インストーラーがコンピューター上に存在する別のオペレーティングシステムを検出できなかった場合、マスターブートレコードを変更すると、そのオペレーティングシステムが一時的に起動できなくなりますが、GRUBを手動で設定して起動を遅らせることができます。
とくに問題がなかったので「Yes]を選択して進めました。
次に、GRUB ブートローダーをインストールする先のストレージを聞かれます。
翻訳:
ブート可能なデバイスにGRUBブートローダーをインストールして、新しくインストールしたシステムをブート可能にする必要があります。これを行う通常の方法は、最初のハードドライブのマスターブートレコードにGRUBをインストールすることです。必要に応じて、ドライブの別の場所、別のドライブ、またはフロッピーにGRUBをインストールできます。
*デバイスを手動で入力してください
*/dev/sda (ata-CHN_mSATAM3_128_M328L912170203) *2
*/dev/sdb (usb-SanDisk_Cruzer_Blade_4C530000231113114274-0: 0) *3
繰り返しになりますが、スクリーンショットは VirtualBox を使って撮影したので、実際の内容とは少し異なります。実機では *2, *3 のように、複数のデバイスが表示されていました。
ブートローダーをインストールするデバイスを選択して「Continue(続ける)」をクリックしてください。
またしばらくするとインストール完了のメッセージが表示されます。
翻訳:
インストールが完了したので、新しいシステムで起動します。インストールを再開するのではなく、新しいシステムで起動できるように、必ずインストールメディアを削除してください。
「Continue(続ける)」をクリックするとインストールの完了プロセスが始まり、そのまま再起動しました。
USB メモリを挿しっぱなしにしていたのですが、そもそも Qosmio は USB メディアから起動できないパソコンなので問題なく再起動してました。
これで 32bit パソコン Qosmio に Raspbian をインストールすることができました。
初回起動。
Raspbian の初回起動時には、初期設定が必要になります。
Set Country(国の設定)
「Set Country 」として、ローカライズ設定が必要になります。
もちろん日本語もあるので「Japanese」を選択します。
「Japanese」を選択すると、タイムゾーンなどの設定も日本用になるので「Next」をクリックして進めます。
Change Password(パスワードの変更)
つぎに「Chenge Password」として、パスワードの設定を行います。
設定しようとしているパスワードが合っているか確認する場合、「Hide characters」のチェックを外すと入力した文字を確認することができます。
問題がなければ次に進みましょう。
Select WiFi Network(WiFi ネットワークの選択)
実機では、次に「Select WiFi Network」を行いました。
Wi-Fi デバイスが認識されていると、接続できる SSID が表示されるので任意のものを選択して設定します。
次に選択した SSID のパスワードを入力します。
ここでも先ほどのパスワードの設定のときと同じように、入力した文字を確認することができるので、不安な場合には確認しておきましょう。
Update Software(ソフトウェアのアップデート)
次は「Update Software」です。
スキップもできますがアップデートしておきました。
途中に fcitx 関連のパッケージエラーが出ました。
「fcitx-qt4が無いよ!」的な内容のものです。
日本語入力環境は、改めて設定する必要がありそうです。
Setup Complete(設定完了)
とりあえず一通り終わると「Setup Complete」として、設定の完了を知らせる内容が表示されます。
同時に再起動も促されるので、設定した内容を反映させるために再起動しておきました。
日本語入力環境の再設定。
再起動してすぐに日本語入力環境の設定が気になったので、そちらを設定することにしました。
ちなみに表示言語は日本語になっています。
まずはターミナルを開いて、パッケージのインストールを行います。
必要な推奨パッケージを一通りインストールするため、コチラのコマンドを使いました。
$ sudo apt install --install-recommends fcitx fcitx-mozc
必要なパッケージのインストールが終わったら、すぐにまた再起動。
再起動後に、まずは日本語入力をテストしてみました。
これで日本語環境は入力も含めて完了しました。
パッケージの追加と削除。
Raspbian には、Debian 系定番のパッケージマネージャである「Synaptic」ももちろんインストールして使えますが、デフォルトでインストールされている「Add / Remove Software」でも充分に管理できます。
「メニュー」⇒「設定」⇒「Add / Remove Software」
で起動させます。
必要なパッケージをカテゴリ別で探したり、名前がわかれば検索窓にパッケージ名やキーワードを入れて検索することもできます。今回は画像編集ソフトのGIMPをインストールしてみます。
検索窓に「gimp」と入力して [Enter] キーで検索します。
GIMP で検索してみたんですが、なんかいっぱいありますね…。
このソフトウェアは、パッケージを探すのがちょっと大変ですが Synaptic のように、わりと細かいパッケージまで管理することができます。
この他にも定番のフリーソフトが数多く用意されているので、普通にデスクトップOSとして使えそうな感じがします。あとはインストールするマシンとそのスペックとの相談ですね。
一応、ちゃんとインストールされているか確認してみました。
画像編集ソフトなので、「グラフィックス」の項目にインストールされています。
きちんとスプラッシュ画面が表示されました。
ちゃんと動作しました。
まとめ。
今回はもともと Raspberry Pi 用に開発されている Debian ベースの Linux ディストリビューション Raspbian を32bit パソコンにインストールしてみました。
今回のマシンは PAE 非対応のプロセッサでしたが、問題なく起動しました。
またOSの構成が非常に軽量なので、マシンに負担をかけることがありません。
Webアプリの利用や Youtube などの動画再生については、OS が軽くてもマシン自体のスペックが非力だと快適に使うことができないので、その点は注意が必要です。
ですが、オフラインで使用するのであれば、別物のマシンのように恐ろしく快適に使うことができました。要するに使い方次第ですね。
今回紹介した Raspbian は Linux の中でもトップクラスに軽量なので、古いパソコンをもう少し使いたい方やとにかく軽量な OS を探している方は、一度試してみてはいかがでしょうか?
Youtubeで公開している動画。
おまけ。
動画では端折ってしまった LibreOffice の日本語化です。
LibreOffice の日本語化は
$ sudo apt install libreoffice-l10n-ja
LibreOffice の日本語ヘルプも必要であれば
$ sudo apt install libreoffice-help-ja
をターミナルで実行すると日本語化されます。