Windows や macOS の代わりになる OS を目指して開発されている
elementary OS の最新版となる 6.0 が正式リリースされたので、早速試してみました!
ベータ版のレビューのときも紹介しましたが、見た目は前のバージョンとあまり変わってませんが、中身のほうはイロイロと変更されてます。
共同創設者兼 CXO (Chief Experience Office=CEOやCOO, CMO などの役員に直属する役職とのことです)である Cassidy James Blaede (キャシディ・ジェームス・ブレデ) は、2021年8月10日に elementary OS 6.0 のリリースをアナウンスしました。
elementary OS の紹介については 6.0 Beta のときに少し詳しく紹介しているので、そちらも合わせてご覧いただければと思いますが、簡単に紹介しておきます。
elementary OS とは?

elementary OS は Ubuntu をベースに、独自のデスクトップ環境 Pantheon を提供している Linux ディストリビューションで、「高速でオープン、かつプライバシーを尊重する、Windows や macOS の代わりになる OS」として Daniel Foré (ダニエル・フォレ)、 Cassidy James Blaede (キャシディ・ジェームス・ブレデ) によって創立されました。
elementary (初級、初歩的) の名前が示すとおり、パソコン初心者にも扱いやすいディストリビューションとなっています。
ちなみに、Web サイトは日本語表示にも対応しています。
elementary OS の推奨システム要件
elementary OS を快適に使うためには、以下の条件を満たすことを推奨します。ただし、これらの要件は必須ではなく、満たしていなくても動作します。
CPU | 最近の Intel Core i3 またはそれと同等のデュアルコア 64bit プロセッサ |
RAM | 4 GB のシステムメモリー |
Storage | 15 GB のディスクスペースのある SSD |
Other | インターネットアクセス 内蔵または有線のマウス/タッチパッドとキーボード 最小解像度1024×768のディスプレイ |
また、インストール用に 4GB 以上の USB フラッシュドライブが必要です。
新しいインストーラー。

早速ダウンロードしてインストールしてみました。
ちなみにインストールメディアは Rufus で作成しました。
今回インストールするマシンは Dynabook Satellite B35/R です。

Dynabook Satellite B35/R のスペック
CPU | Celeron 3205U |
RAM | 8GB DDR3L |
Storage | 250GB HDD |
でも、これが後の悲劇につながるとは思いもよりませんでした…。
ベータ版のときにも紹介しましたが、elementary OS は Pop!_OS の System76 と共同開発した新しいインストーラーを実装しました。
より「オリジナリティのある OS になったなぁ」とか思いながら、インストールを勧めていましたが、いつになってもインストールが終わりません。

あまりにも時間がかかりすぎたので強制終了し、インストールし直すものの「インストールができません」とか言われるし…。

パーティションを削除してやり直してもやっぱり「システムを設定しています(35%)」が、一晩経っても終わらなかったのです。
インストールメディアを作成する際の Rufus の「ISO モード」に問題があったのかと思い、「DD モード」で書き込んだもの、Etcher で書き込んだものを用意してみましたが、どれも「システムを設定しています(35%)」から進みません。
※丸一日費やしましたが無理でした…。
んー。
たしかにスペックの低いマシンではありますが、システム要件を満たしてなくてもインストールは出来たのだけれども…。
とりあえず、Beta 版のときにも使った中華 PC Jumper EZbook X3 に改めて用意し直したインストールメディアを使ってインストールしました。

コチラも途中まではうまくいきましたが、何故かインストールが出来ませんでした。
パーティションとかで引っかかるのかなぁ…。
そこで、デモモードを経由して改めてインストーラーを起動し、カスタムインストールを使ってみることにしました。

カスタムインストールでは、パーティションをいじることができる「GParted」を起動させることが出来ます。

一旦すべてのパーティションを削除して、改めてインストールしてみたところ、無事にインストールすることが出来ました。

原因を精査したわけではないため定かではありませんが、インストールの際のブートローダーの設定や
ファイルシステムの設定(なんか暗号化してないのに暗号化されてる気配…)あたりに不具合がありそうな感じです。
コミュニティを覗いてみましたが、起動の不具合に関する書き込みが結構多いです。
6.1 のリリースが急がれそうですね。
とりあえず、中身を見ていきましょう。
初回起動設定。

再起動すると、再びシステム言語の設定とキーボードの設定が求められます。
インストール時にアカウントの登録がなくなったぶん、初回起動時にアカウントの作成が求められます。

ちなみに、プライバシーを重視するためインストーラーでネットワーク接続や、ユーザーアカウント、更新処理を行わないとのことです。
アカウントが出来たら、さっそくログイン。

Welcome 画面を確認していきます。

Welcome 画面自体は、ベータ版のときと大差ありません。
外観のスタイルとアクセントカラーを設定できます。

夜間モードもお好みで設定しましょう。

自動削除もお好みで設定しておきます。

オンラインアカウントは、後で追加するので今はスルーします。

アプリケーションも後で追加します。

んで、最後に画面が乱れました。

ベータ版のときもそうでしたが、これってハードウェアが悪いのかな?
とりあえず、少し待つと解消しますが、これって不安になりますよね…。

とにかくこれで初回起動設定は終わりました。
んで、日本語入力環境の設定です。

基本的に最近の Ubuntu 系ディストリビューションは、インストールの際にシステム言語を日本語に選択するとインプットメソッドがインストールされます。
elementary OS でもちゃんとインストールできていれば、パネルに表示されているインプットメソッドのアイコンをクリックすると ibus-mozc がインストールされていることがわかります。

※elementary OS では ibus-mozc がデフォルトでインストールされます。
が、なぜかインプットメソッドのインストールがうまく行かない場合がありました。
システム言語が日本語では無いときにもインプットメソッドのインストールが必要になるので、そういった場合には、「設定」>「言語と地域」を選択すると、必要なパッケージのインストールが行われるはずです。
※肝心なところを撮影し逃しました…。
外観の設定。

前のバージョンと見た目があまり変わらないとは言いましたが、5.x からの大幅な変更点として「ダークスタイル」と「アクセントカラー」の追加が挙げられます。
これらは今まで Pantheon Tweaks などのツールを必要としていましたが、正式にシステムに統合されました。
「システム設定」>「デスクトップ」>「外観(タブ)」で設定できます。
ダークスタイルは、最近のデスクトップの流行りですね。
省電力化にダークモードは効果があるとされています。
実際にどれくらい効果があるもんでしょうね?
そのうち調べてみたいと思います。
パッケージ管理。

elementary OS は 5.1 から Flatpak がサポートされていましたが、プライバシーとセキュリティ保護を強化する目的で、deb 形式のパッケージから Flatpak へ移行されました。
どういうことかというと、Flatpak はサンドボックス(砂場)と呼ばれる技術によって、システムとアプリケーションを分離して実行できるため、セキュリティ的にもそれぞれのアプリケーションを隔離することが出来ます。
セキュリティ保護を重視する elementary OS では、豊富な deb パッケージよりも Flatpak のサンドボックス技術にこだわったようです。
またその Flatpak の対応がより強化され、インストール済みのアプリケーションのパーミンションなどが変更できるようになりました。

GUI 環境でココまでできるのは珍しいかもしれません。
ですが、パッケージの移行に伴って AppCenter は品薄状態です。

アプリケーションを追加するためには、Flathub にアクセスしてパッケージをインストールする必要があります。
Flathub からダウンロードしたファイルを、右クリックのメニューいちばん上の「Sideload」で開きます。

いちばん最初のインストールでは「信頼されていないアプリ~」というウィンドウが開きます。
「了解しました」のチェックボックスにチェックを入れ、インストールします。

んで、Flathub から何かしらのアプリケーションをインストールすると AppCenter でも Flathub のアプリケーションが表示されるようなのですが…
反映されるまで少し時間がかかります。

Flathub との同期が終わると、たくさんのパッケージが表示されるので、安心してください。
一応、Flathub のリポジトリを追加するコマンドも紹介しておきます。
$ flatpak remote-add --if-not-exists flathub https://dl.flathub.org/repo/flathub.flatpakrepo
アプリケーション。

ちなみにパッケージの移行に伴って、プリインストールされているアプリケーションも変更が加えられています。
Web ブラウザも、以前は Epiphany でしたが、Flatpak で配布されている GNOME WEB に切り替わりました。
メールも Geary からのフォークでしたが、イチからコードが書き直され、システムに統合されました。

IMAP を標準サポートされるようになりましたが、Gmail を利用する際にはセキュリティ的にあれこれ面倒な作業が多いので、せっかく新しくされたソフトウェアですが、コダシマはほぼ使わないでしょう。
また、カレンダーも電子カレンダーの規格である CalDav(カルダブ)を介した統合もサポートされました。

CalDav のアカウントを追加すると、カレンダーアプリに表示されるようになります。
さらに、リモートワークで一躍注目を浴びるようになった Web カメラ。
その Web カメラを活用するためのアプリケーションである「カメラ」も刷新されました。

複数のカメラの切り替えや、画像のミラーリングの切り替え、明るさとコントラストの調整をサポートするようになりました。

ココまでの内容だと、今回のリリースは OS そのものよりも、アプリケーション周りの刷新のイメージが強い感じがします。
マルチタッチジェスチャ。

マルチタッチジェスチャも本格的に実装されました。
通知の削除とか2本指で左右にスワイプでできるようになりました。
まだできる項目と出来ない項目があるので完璧とは言えませんが、スマートフォンなどのモバイル OS に慣れ親しむとジェスチャー操作のほうが良かったりする場合もありますね。

一部のジェスチャーについては、設定画面で設定を変更することが出来ます。
現状ではできる操作が限られていますが、タッチパット上だけでなくタッチスクリーンにも対応しています。

ジェスチャー操作も使うと便利な機能なので今後のアップデートによって、さらにイロイロな操作ができるようになることを期待しています。
デスクトップ。

デスクトップ上での操作も変更がありました。
今まではシングルクリックでファイルやフォルダを開くようになっていましたが、今回のリリースからファイルはダブルクリック、フォルダはシングルクリックで開くようになりました。
またファイラーのサイドバーのデザインや、アニメーションなども変更されました。
その他にもパネルやインジケーター、ウィンドウ管理などなど様々な改善が施され、視覚的な効果などなど
細かく見ていくと実にさまざまな改善が行われたリリースです。
派手さはあまりありませんが、堅実なアップデートだと思います。
今回のまとめ。

ということで、elementary OS 6.0 をインストールして気になる部分をピックアップしてみました。
elementary OS の推奨システム要件
CPU | 最近の Intel Core i3 またはそれと同等のデュアルコア 64bit プロセッサ |
RAM | 4 GB のシステムメモリー |
Storage | 15 GB のディスクスペースのある SSD |
Other | インターネットアクセス 内蔵または有線のマウス/タッチパッドとキーボード 最小解像度1024×768のディスプレイ |
感想としてはインストールに不安は残るものの、OS としての完成度をより高めたように思います。
elementary OS は2011年3月31日に最初のリリースを公開して、今年で10年を迎えます。
「この節目の年にふさわしいリリース」と言いたかったのですが、6.0の正式リリースからこの動画を作るまで、10回ほどインストールを試してみましたが、3回に1回は途中でフリーズして動かなくなりました。
コダシマの場合、
「システムを設定しています(35%)」
「システムを設定しています(70%)」
がトラウマになりかけてます。
これはインストーラーによるものなのか、それともハードウェアとの相性なのか、現状では定かではありませんが、コミュニティでもブートやインストールの不具合を訴える声がそこそこあったので、おそらくブートローダーやインストーラーに不具合があるのではないかと思っています。
インストールさえしてしまえば大丈夫そうですが、これだけインストールに手こずったのは久しぶりなので、原因の究明と対応に期待したいところです。
インストールができれば、むしろ久しぶりに使い続けて見たいと思わせる出来栄えです。
macOS っぽい Linux として知られている elementary OS ですが、コダシマ的にはいい感じに Linux くささを残しているところに好感を持っています。
Linux の世界では OS に対して、さまざまなアプローチで開発が進められており企業では思いも寄らない UI だったり UX が生まれます。
この elementary OS も、そういった面ではとてもユニークな存在です。
最近の Linux では、EndeavourOS や Garuda といった新興の Arch 系ディストリビューションが注目を集める中で、息の長い人気を誇っているのが elementary OS です。
インストールにちょっと不安を残していますが、他の Linux ディストリビューションにない魅力を持った elementary OS をまだ触ったことが無い方、ぜひ試してみてはいかがでしょう?