Linux という言葉を知っている方であれば、一度は聞いたことがある Debian という名前。
その最新版となる Debian 11 bullseye が2021年8月14日にリリースされたので、早速チェックしてみました!
Debian GNU/Linux 11.0.0 bullseye システム要件
デスクトップなし | デスクトップあり | |
CPU | Pentium 4 1GHz+ | Pentium 4 1GHz+ |
RAM | 256MB (512MB+) | 1GB (2GB+) |
Strorage | 2GB+ | 10GB+ |
はじめに。
![【最新版リリース!】Debian 11 bullseye 圧倒的存在感の Linux ディストリビューションをさっそくチェック!](https://i0.wp.com/pc-freedom.net/wp-content/uploads/2021/08/ecf867f3f4b3fed29f18b6f044f68586.png?resize=800%2C450&ssl=1)
コダシマ的に Debian って「良い素体」というイメージです。
というのも、世界中で開発されている Linux ディストリビューションの多くは Debian の系譜となるものが非常に多いためです。
今回のリリースについて紹介する前に、ちょっとだけインストールイメージのことを話しておきます。
インストールイメージについて。
![](https://i0.wp.com/pc-freedom.net/wp-content/uploads/2021/08/79f266d8fd6e095fab5c9e8ff37f7d62.png?resize=800%2C450&ssl=1)
Debian ではネットインストールやライブイメージといった感じで、さまざまなインストール方法があります。
そのなかでもおすすめは「+Non-free Live イメージ」です。
インストールせずに試してみたい場合、ドライバなどがちゃんと認識されるか知りたい場合など、まずはライブイメージを使ってみるのがよいです。
実際に、インストールの際 Wi-Fi アダプタなどネットワークデバイスがうまく認識されず
「見つからないファームウェアの読み込み」などが表示され、インストールは出来ても起動の際に引っかかって立ち上がらなかったりしてしまいました。
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そんな時に役立ったのが +Non-free Live イメージです。
Debian 11 では非公式の Non-free のファームウェアが含まれた Live イメージが用意されているので、コダシマ的には、インストールやネットワーク関連のトラブルを避けるため、始めからコチラを試してみるのがおすすめです。
ちなみに、Live イメージでは表示言語で日本語を選択することも出来ます。
Debian とは?
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冒頭でも言いましたが、Linux を知っている人であれば Debian について説明不要かもしれませんね。
それでも、Debian についてザックリお話していきたいと思います。
Debian は Debian GNU/Linux と呼ぶことを勧めている Linux ディストリビューションで、とにかく「自由です」「無料です」ってのを主張していますが、その始まりは1993年8月16日。
当時、米国パデュー大学の学生だった、イアン・マードックという人の手によって開発が始まりました。
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マードックは初めこの Linux ディストリビューションに “Debian Linux Release” という名前をつけていました。
その頃は “Softlanding Linux System (SLS)” という GNU/Linux 初のディストリビューションがあったのですが、この SLS はバグが多かったり保守がお粗末であったり…。
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まぁ、一言で言えば「テキトー」だったんですね、これが。
※こちらのサイトで SLS を手に入れることができます。
https://archiveos.org/sls/
「それなら自分が!」とマードックさんが新しいディストリビューションを立ち上げたということです。
さらにマードックさんは、 “Debian マニフェスト” という新しいオペレーティングシステムについての概要を公表し、その中でこのディストリビューションの保守は、Linux および GNU の精神に基づき、公開された手法で維持されることを求めました。
オープンソースってところがミソだったらしいです。
んで SLS みたいにならないように、注意深く良心的にまとめられるようメンテナンスされるようにしたんですって。
うん。
マードックさんは、なんだか几帳面そうな人だな。
ちなみに Debian の名称は、当時のガールフレンド(後の奥さま、離婚したけど… )の名前 Debra と自分の Ian を組み合わせて Debian と命名。
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名前からだと、奥さんの尻に敷かれてたっぽいな…。
それはそうと、その後1994年から1995年にかけて Debianプロジェクトは0.9を公開。
この1年間はフリーソフトウェア財団の GNU プロジェクトから支援を受けてたとのこと。
1995年には、インテル i386 以外の環境に対しても対応が開始されて、1996年に最初の1.x版が公開されました。
そして、2005年の Debian 3.1 以降、およそ2年ごとに安定板をリリースし現在に至ります。
開発コードには、ディズニー映画「トイストーリー」のキャラクター名が使われているのも有名ですね。
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そんな Debian は、現在では世界中の何千人ものボランティアが開発に携わるディストリビューションになりました。
Debian の歴史もなかなか興味深いので、機会があれば深堀してみたいと思います。
気になるポイント。
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リリースノートに基づき、今回のリリースで目立ったところをいくつかピックアップしてみます。
exFAT ファイルシステム
まず今回の Debian 11 から exFAT ファイルシステムがサポートされました。
exFAT は Microsoft 社が 2006年に導入したファイルシステムで、2009年12月10日からライセンスの提供を開始していました。
が、Linux への導入には反対していたため現在まで Linux で exFAT が使われることはありませんでした。
しかし 2019年8月28日に exFAT の仕様が公開され、Linux でも exFAT が組み込まれるようになりました。
Windows の WSL や exFAT の仕様公開などなど、頑なだった Microsoft もオープンソースのソフトウェアを無視できなくなってきたって感じがしますね。
control groups v2
次は control groups v2 (cgroups-v2) のサポートです。
systemd はデフォルトで cgropus-v2 を使用するようになりました。
cgroup は、ハードウェアリソースの制限や優先順位を設定したり、そららを分離したりするカーネルの機能です。
アプリケーションが使うメモリなどのリソース使用状況をより詳細に制御して効率的に使用できるため、特にサーバー環境では重宝される機能のひとつです。
これってデスクトップ OS として使っている場合には、あんまり意識することができませんが、cgroups-v2 がサポートされたことにより、システムの情報を記録していくジャーナルという機能が永続的にデフォルトで機能するようになりました。
IPP-over-USB プロトコル
次にドライバレスでのスキャンと印刷。
こちらはデスクトップ OS で意識するところですね。
IPP-over-USB プロトコルをサポートする ipp-usb パッケージを導入しました。
これは USB デバイスをネットワークデバイスとして扱うことができるため、USB 接続のプリンタもドライバレス印刷の対象になります。
多くの最新プリンタでサポートされているプロトコルなので、およそ5年以内に発売されたデバイスでは、ドライバレス印刷とスキャンが使えるようになりました。
Linux ではプリンタの対応についてネガティブな意見が多かったのですが、これでいくらかは解消されることでしょう。
でもコダシマは、最近プリンタもスキャナもほとんど使わなくなったなぁ…。
Fcitx 5 インプットメソッド
そして、新しい Fcitx 5 インプットメソッドの実装。
CJK と言われる、中国語、日本語、韓国語をはじめとした、いわゆるアルファベット以外の文字を扱う言語では、インプットメソッドという仕組みが必要でした。
なかでも Fcitx は人気が高いことで知られています。
今までの Fcitx 4 の後継となる Fcitx 5 は、ディスプレイサーバーのプロトコルの一つ Wayland をサポートし、より優れたアドオンサポートを提供するとのことです。
アプリケーションのアップデート
あとは、定番アプリのアップデート。
代表的なところで LibreOffice も 7.0 になりましたし、バンドルされるアプリケーションの多くが最新版にアップデートされました。
詳しくは、Debian 11 のリリースノートを参照してみてください。
デスクトップ環境。
デスクトップは、7種類が用意されています。
- Cinnamon
- GNOME 3.38
- KDE 5.20
- LXDE 11
- LXQt 0.16
- MATE 1.24
- Xfce 4.16
また、デスクトップ環境のない Standard もあるので、マシンスペックや自身のスキルを踏まえて選んでみるとよいでしょう。
コダシマは主に GNOME デスクトップを試してみたのですが、バージョンは 3.38 だったのはちょっと残念でした。
使い慣れているので 3.38 でもよいのですが、せっかくなら 40 もみてみたかったです。
ファーストインプレッション。
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このチャンネル「なんちゃってエンジニアリング」なので、詳しいシステム内容よりも普段使いのデスクトップ OS としてどうなのかというところに注目しています。
なので、見た目や使用感についての紹介がメインです。
まず、どのデスクトップ環境のエディションにおいても 起動時のスプラッシュ画面や壁紙については野暮ったさが抜けてきたというべきでしょうか、だいぶ垢抜けたように思います。
が、あくまでもスプラッシュ画面と壁紙についてです。
デスクトップ環境はどれも基本的にはデフォルトの状態なので、そこらへんはカスタマイズのしがいがあるかもしれませんね。
ワイヤレスネットワーク。
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「+Non-Free」のライブイメージがおすすめと紹介しましたが、理由は主に Wi-Fi などのネットワークアダプタについてです。
Wi-Fi アダプタは Non-Free のドライバが必要になるものが結構あります。
また、USB 接続のネットワークアダプタ(有線含む)でも、やっぱり Non-Free のドライバが必要になることもあります。
いずれにしろ、ネットワークアダプタが認識されないとライブ環境では起動こそ出来ますが、インストールイメージでインストールする場合に、ネットワークの設定というかミラーサイトの設定あたりでつまずいてしまいます。
インストールできても、起動の際にネットワーク関連のところで止まってしまい起動しないんですよね。
これを回避するため +Non-Free のライブイメージがおすすめです。
ライブイメージだと、事前にドライバが動作するかもチェックできますからね。
特にオープンソースにこだわりがなければ、+Non-Free を選んだほうが無難です。
日本語入力環境。
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日本語入力環境については、やっぱりというかちょっと面倒です。
いちばん最初に GNOME を試してみたのですが、GNOME の場合 iBus がデスクトップ環境に統合されているため、Fcitx を使う場合には別途インプットメソッドの設定が必要になります。
せっかく Fcitx が新しくなったのですが、そのまま iBus を使ったほうが面倒がありません。
iBus であれば、ほぼ設定なしで日本語入力ができました。
また 他のデスクトップ環境でもそうでしたが、インプットメソッドが Fcitx だけでなく iBus や uim もインストールされており、逆に日本語入力が出来ない状態になってました。
ここらへんの調整は、Linux 経験の浅いユーザーには厳しいかもしれませんね。
さらに、インストールの時に表示言語を日本語に設定してもキーボードレイアウトが US 配列など日本語以外のレイアウトを選択すると、 Mozc など入力システムの設定があれこれ必要になります。
US キーボードと日本語入力環境の相性が悪いため、US 配列で日本語入力を使うには、Debian に限ったことではありませんが、結構面倒くさいです。
また Fcitx 5 についてですが、以前 Fcitx 5 がリリースされて間もなくのころ Manjaro で導入してみたときに、サジェストウィンドウが変なところに出たり、メニューが扱いにくかったりと「まだちょっと使いにくいかな?」という感じがありましたが、コチラはだいぶ改善されたのではないでしょうか?
また、設定の慣れもあるでしょうがコダシマ的に Fcitx は、Xfce デスクトップとの親和性がいちばん高かったように思います。
今回のまとめ。
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今回は Debian 11 bullseye をサクッと紹介してみました。
今回のリリースでは、おもに
- exFATのサポート。
- control groups v2 (cgroups-v2) のサポート。
- IPP-over-USB プロトコルのサポート。
- Fcitx 5 インプットメソッドの実装。
- 定番アプリのアップデート。
が行われ、より汎用性と完成度の高い OS になりました。
Debian は Slackware とならび、現行のディストリビューションの中では最も古いディストリビューションです。
そのため、Debian をベースとして開発された Linux は、世界中に数えきれないくらいたくさん存在しています。
最近人気の高い MX Linux はもちろん、Ubuntu や Linux Mint、Zorin OS など全て Debian の系譜です。
圧倒的な存在感と影響力を持ち、さまざまな形で利用されている Debian なので、実は気づかないうちに、なんらかの形で Debian を利用しているかもしれませんね。
冒頭でも話したとおり Debian は開発にしろ普段遣いにしろ、良い意味で「素体」だと思っているので、様々な設定を自分で調整することが出来ます。
場合によっては面倒とも思える設定ですが、個人的にはその面倒な設定すらカスタマイズ性につながっている「Linux の醍醐味」と思うのですが…
いかがでしょう?
いずれにしろ、Debian 11 bullseye に興味を持った方、 動画概要欄に URL を貼っておきますので是非チェックしてみてはいかがでしょうか?