Microsoft Office と高い互換性を持つ WPS Office を Linux で使ってみた。

2019年9月17日

Microsoft Office と高い互換性を持つと言われる WPS Office 。その Linux 版を改めて使ってみた。

そもそも WPS Office とは?

WPS Office は以前 KINGSOFT Office として販売されていた KINGSOFT 社製の Office スイート。

安価で Microsoft Office と高い互換性をもっているので人気が高く、BTO や中古パソコンでバンドルされていることが多い。

どれくらい価格が違うか以下にまとめてみた。

価格の比較

Microsoft Office

  • Office 365 Solo サブスクリプション12,744円/月(1ヶ月1,274円)
  • Office Personal 2019 永続ライセンス32,184円 ※Excel, Word, Outlook
  • Office Home & Business 2019 永続ライセンス37,584円 ※Excel, Word, PowerPoint, Outlook

WPS Office

  • WPS Office Premium Presentation 3,880円 ※プレゼンソフトのみ
  • WPS Office Personal Edition 3,980円 ※表計算・ワープロソフト
  • WPS Office Standard Edition 5,880円 ※表計算・ワープロ・プレゼンソフト
  • WPS Office Gold Edition 7,380円 ※一部 VBA にも対応
  • WPS Office Platinum Edition 9,880円 ※一部 VBA にも対応
    ※ダウンロード版は30日無料期間あり

これだけの価格差があるにもかかわらず、同等に使えるのであれば選ばれるのもうなずける。

WPS Office for Linux なら無料で使える。

これだけ安価で互換性にも優れ高機能にもかかわらず Linux 版は、その上をゆく「無料」で使うことができる。Linux らしいといえば Linux らしい。

っと、メリットばかりあるように聞こえるけれども、もちろんデメリットもある

インターフェイスが英語のため日本語化する必要があるうえ、日本語化しても日本語入力ではインライン入力、つまり文字列に入力中の文字が表示されないのだ

WPS Office for Linux なら無料で使える。
残念ながら、日本語だとインライン入力ができない。

僕はこれがけっこう気になってしまう。長年 PC を使っているので、ある程度ブラインドタッチには自身があるけれども、入力している文字が見えないのは、夜の道路をヘッドライトも点けずに車を運転しているような気分になる。だから僕が使うとすれば、ちゃんと表示される LibreOffice や Web サービスにはなるが Google ドキュメントなどだ。

しかし仕事の都合やファイル形式の都合などで、どうしても Microsoft  Office でなければいけない人には WPS は合っている。「Microsoft Officeとの完全な互換性」を大々的に掲げる WPS Office では、PPT, DOC, DOCX, XLS, XLSX 形式をサポートしているため、データを開くことはもちろん、同じ形式で保存することができる。高い互換性には自身があるようで Web サイトのあちこちで「Microsoft Officeとの完全な互換性」という文字が見られる。実際に再現性は非常に高い。また WPS Office で作成したドキュメントを PDF として保存することもできるので、インライン入力の問題さえ気にしなければ、かなり使えるアプリケーションと言える。

WPS Office をダウンロードとインストール。

WPS Office for Linux をダウンロードする。
http://wps-community.org

Linux 版 WPS Office は deb 形式と rpm 形式で配布されているので、Debian, Ubuntu , Mint をはじめ Fedora, CentOS, openSUSE などにインストールすることができる。また32ビットシステムと64ビットシステムの両方をサポートしているので、古いマシンでも使うことができる。

アプリケーション自体のサポートはオープンソースコミュニティによるもので、販売元の KINGSOFT ではないことは注意しておくべき。

ちなみに Arch 系の Linux でも AUR (Arch User Repository) に WPS Office が含まれているので、ビルドの時間はかかるけれども同様に使うことができる。

Arch 系でも AUR に WPS Office が含まれている。
いつも使っている Manjaro に WPS Office をインストールしてみました。

では、前置きが長くなったが WPS Office の Linux 版をダウンロードしよう。

ダウンロード▶ http://wps-community.org

WPS Office のダウンロードはメニューの「Download」か「Get it now」のボタンで、ダウンロードページに進み、任意のバージョンをダウンロードする。

WPS Office for Linux のダウンロードページ。
現在ダウンロードできる一覧が表示される。

ちなみに古いバージョンをインストールすると、起動のたびに新しいバージョンをアナウンスされるので、最新バージョンをインストールしたほうがウザくないと思う。

僕の場合 Debian 系を使うことが多いので、今回は Debian 系をインストールしてみた。

インストール自体は GUI 環境でもできるうえ、非常に簡単なので Linux 初心者でもインストールすることができる。

  1. GUI でのインストール(Deb 形式)
  2. 右クリック「GDebi パッケージインストーラーで開く」を選択。
  3. 依存関係を調べてくれるのでしばらく待つ。
  4. ウィンドウのどこかに「インストール」または「パッケージをインストール」ボタンが表示されたらクリックしてインストール。
  5. 必要なパッケージをインストールしてくれるのでしばらく待つ。
  6. インストール完了。
  7. インストール後は「オフィス」の項目に表示されるので、起動する場合はそこから起動する。
    ※動画参照。

WPS Office の日本語化。

で、問題なのはここから。

ずいぶん以前(過去記事参照)はインターフェイスの日本語化もパッチの追加で簡単にできたけれども、今は英語か中国語のみしか選択することができない。「Follow system locale(システム言語に従う)」にチェックを入れてみてもインターフェイスが日本語されることはない。そんな中、2019年9月11日に最新版がリリースされ、何気なく関連情報をながめていると、日本語化についての情報があると知りフォーラムをはじめいろいろ調べてみた。

まとめると以下のコマンド操作のあと、表示言語の設定を変更すると、インターフェイスを日本語化できる。

$ sudo apt install git

$ git clone git://github.com/wps-community/wps_i18n.git

$ sudo apt-get install libqt4-dev

$ cd wps_i18n

$ cd ja_JP

$ sudo make install

これで準備が整った。

WPS Office の設定変更。

  • まずは一旦、通常通り起動し新規で書類を作成する。
  • 画面右上の小さな「A」マークをクリックするとインターフェイスの言語を変更する設定がひらく。
  • 設定が完了していればここに日本語が表示されるので、選択してアプリケーションを再起動するとインターフェイスが日本語表示されるようになる。
  • いちばん最初の画面はどうしても英語のようだけれども、アプリケーションが起動すればインターフェイスはちゃんと日本語になっている。
    ※動画参照。

互換性の比較。

問題になるのは互換性。

たしかに同じプラットフォームの場合の互換性は完璧でも、プラットフォームが変わったら話も変わる。なにしろ同じ Microsoft Office であっても Windows 版と macOS 版ではレイアウトが崩れたりする不具合がずっとつきまとっている。(今はだいぶ良くなったけれども…)そんな前例があるだけに Linux 版の互換性が気になるところ。

そこで表示の違いについて比較してみた。

動画では Microsoft のテンプレートをサンプルデータとして使用し Peppermint 上で確認したけれども、思うことがあり文章作成だけだが改めて自作のデータを用意し、今回は Manjaro 上での WPS Office と LibreOffice 、おまけとして Google ドキュメントにて検証してみた。

Microsoft Word

WPS Office 互換性の比較
比較元となる Microsoft Word で作成したサンプルデータ。

フォントには源ノ角ゴシック (Source Han Sans) と源ノ明朝 (Source Han Serif) を使ってサンプルデータを作成した。

WPS Writer

WPS Office 互換性の比較
サンプルデータを WPS Office で読み込んだ様子。(Manjaro)

フォントには源ノ角ゴシック (Noto Sans CJK) と源ノ明朝 (Noto Serif CJK) を使ってサンプルデータを読み込んでみた。ワードアートの「文字の効果」で再現できなかった表現があるもののレイアウトは完璧。

LibreOffice Writer

WPS Office 互換性の比較
サンプルデータを LibreOffice で読み込んだ様子。

フォントには源ノ角ゴシック (Noto Sans CJK) と源ノ明朝 (Noto Serif CJK) を使ってサンプルデータを読み込んでみた。同じプラットフォームなのでフォントは問題ないと思われたが、ウェイト(文字の太さ)やレイアウトなど、いろいろと微妙に惜しい。アートワードについてはほぼ再現できていない。

Google ドキュメント

WPS Office 互換性の比較
サンプルデータを Google ドキュメントで読み込んだ様子。

ダメ元で Google ドキュメントで読み込んでみた。そもそも機能は足りないし、フォントも足りないので結果は無残。

比較のまとめ

いちばんの問題はフォントだった。

レイアウトの互換性を知るには同じフォントが必要と思い、今回は Microsoft (Windows) では源ノ角ゴシック(Source Han Sans)と源ノ明朝(Source Han Serif)、WPS や LibreOffice では Noto Sans と Noto Serif を用意し、フォントの互換性についても合わせて比較してみた。

源ノ角ゴシック・源ノ明朝
Source Han Sans および Source Han Serif は、AdobeがGoogleと共同開発したオープンソースのPan-CJKフォントファミリーで、Google の Noto フォントファミリーは同一のフォント。ただしフォント名と一部のウェイト表記が異なる。

見出しとして使ったアートワードについてはあえて複雑なことをしてみたが、WPS Office の「Microsoft Officeとの完全な互換性」 はかなりいいところまでいっている。これくらいの再現性であれば、安心して使えるだろう。

一方残念だったのは LibreOffice 。同じプラットフォームなのだけれども、フォントが微妙。ウェイト(文字の太さ)がだいぶ違って見える。そのためか一部レイアウトが崩れる原因になってしまった。またアートワードについては全く再現できていない。

Google ドキュメントは機能やフォントなどそもそもが不足しているので論外。

この結果から WPS Office は、扱うフォントや機能さえ気をつければ Microsoft Office と非常に高い互換性を持っているといえる 。個人的には「Microsoft Officeとの完全な互換性」は、言い過ぎではないと思う。

無料で Microsoft Office レベルの品質を手に入れられるのは、経費を抑えたい個人事業主や中小企業などで活躍するのではないだろうか?

ここまで環境が充実している Linux を知ると、Windows や macOS に依存する理由がない。

2020年1月14日に、Windows 7 のサポートが終了する。この機会に、Windows からの独立を果たしてみてはいかがだろう。

Microsoft: 2020 年 1 月 14 日に、Windows 7 のサポートが終了

WPS Office for Linux に興味を持ったアナタは URL を今すぐクリック!
http://wps-community.org/downloads