皆さんは MX Linux ってご存知ですか?
ずっと PC-FREEDOM をフォローして頂いている方であれば「あぁアレねっ」という方もいらっしゃるかと思います。
ですが、当然「えっ?ナニソレ?知らないんだけど」という方もおられるかと存じます。
というか、むしろ知らない方のほうが多いかもしれませんね。
ですがこの MX Linux 、ここ数年世界中の Linux ファンから最も注目を浴びている Linux ディストリビューションなのです。
今回はなぜ MX Linux がそれほど注目されるのか、その魅力を考察していきたいと思います。
みなさんが Linux を選ぶときの参考になれば幸いです。
それでは行ってみましょう。
コダシマが考える MX Linux の魅力は…
結論:Linux 感が丁度いい。
からだと考えます。
MX Linux とは?

まず、考察の前に、肝心の MX Linux がわからないと先に進まないので、MX Linux について紹介しておきます。
MX Linux は、過去に存在した MEPIS と、そこから派生した antiX との共同事業によって開発されている Linux ディストリビューションです。
んで、今名前の上がった MEPIS は、2003年からリリースされた Debian をベースとした Linux ディストリビューションで、グラフィカルなデスクトップと、ハードウェアの自動認識能力の高さ、独自のグラフィカルなインストーラーによって、誰でも簡単に扱えるよう開発されていました。

MEPIS の開発者である Warren Woodford 氏は、それまであった SUSE Linux や Red Hat Linux および Mandriva Linux は、平均的なユーザーには難しすぎると考えていました。
これをもっと手軽に使えるようにと MEPIS の開発を始めます。

当時の MEPIS が採用していた KDE デスクトップは、比較的コンピュータのパワーが必要になるものでした。
しかしそこに、非力なコンピュータでも使うことができるようにと MEPIS をベースに KDE デスクトップを Fluxbox および IceWM といった軽量ウィンドウ マネージャーに置き換えた antiX が派生として生まれます。

ちなみにこの antiX は現在でも開発が続けられており、いろいろと議論が起こっている systemd を使用しないことで知られています。(systemd の議論については、興味があれば調べてみてください)
2011年まで MEPIS の開発は順調に続けられましたが、 12 beta のテスト中に急遽開発を中止。
その後2014年に、antiX のコミュニティと共同で antiX のバージョンの一つとして antiX MX をリリースすることとなります。

この MX の名前は、MEPIS の M と antiX の X に由来します。
そして antiX MX は2016年11月から、世界トップクラスの Linux 情報サイト DistroWatch.com にて、独立した Linux ディストリビューション MX Linux としてリストアップされることとなります。
MEPIS 自体もそれなりに名前が知られていたため、元 MEPIS と antiX の共同事業と聞いて、注目するユーザーが一定数いた事でしょう。
そんな MX Linux は、2018年には DistroWatch.com のページヒットランキングで Top 10 入りし、2019年から現在(2022年9月)に至るまで、年間のページヒットランキング1位となっています。
はい。
ようやくココからが本題です。
なぜ、MX Linux はこれほどまで注目を集めるのでしょうか?
MX Linux が注目される理由とは?

コダシマは MX Linux が注目される理由を「ちょうどよい Linux 感」と結論付けています。
その理由を今からお話していきます。
まず、Linux 感って何?という所ですが、皆さんの Linux のイメージってどんなですか?
おそらく文字だけの、いわゆるコマンドであれこれ操作する環境(CLI)を思い浮かべるのではないでしょうか?
コダシマが感じる Linux 感にももちろんコマンド操作は含まれます。
多くの人が思い描く Linux のイメージの半分は合ってますし、半分違っていると感じています。
Linux に限らず、実は Windows や macOS にだってコマンド操作する環境はありますし、一部のユーザーはそれを使っています。

ですが、多くの Windows ユーザーや Mac ユーザーはそれを使ったことも、意識したことすらないかと思います。
一方の Linux は、コマンド操作が基本なのは本質的に変わりありません。
特に何かしらの設定を行う際には、いまだにコマンド操作に依存する部分がたくさん残っており、特に長年 Linux を使っているユーザーやエンジニアのような方々は、
- コマンド操作のほうが速い
- コマンド操作のほうがラク
という認識でしょう。
実際に Linux の設定や、不具合の調整を行う場合の情報はコマンド操作で行うものばかりです。
これがイメージと合っていると思う半分です。
ですが Linux と言っても、一方で Windows や macOS のようなグラフィカルユーザーインターフェースだけで操作や設定ができる環境が整ってきました。

以前であれば「使い物にならない」と言われていたデスクトップ環境も、世界中の有志の力によって Windows や macOS にも匹敵するほどのユーザーインターフェースに成長しています。
特に GNOME や KDE Plasma と言ったデスクトップ環境は、見た目にも美しく、機能も十分です。
また自分自身でそれらのデスクトップ環境を導入することもでき、自分好みにカスタマイズするのも自由自在です。
ココらへんも Windows や macOS では見られない、Linux 感と言えます。
最近の Linux では、基本的な操作や設定、ソフトウェアの追加、さらに日常的な使い方と言われる文書作成やインターネットの閲覧、動画視聴などの操作であれば、コマンドを使わなくても十分に操作することができます。
というか Linux もそういった使い方ができる OS へと成長しました。
ココらへん、以前に比べだいぶ新規ユーザーへの間口が広がったと思います。
ここがイメージと違っていると思う半分です。
つまり、コダシマのいう「Linux感」というのは、コマンド操作やカスタマイズなど自由度の高さをひっくるめて、ざっくりとそう呼んでおります。
そして MX Linux がちょうどよい Linux 感だというのは、コマンド操作のイメージが強い Linux ディストリビューションでありながらもデスクトップ指向で、基本操作は GUI 環境で行い、そして GUI 環境で操作していながらも、Linux っぽいコマンドを垣間見ることが出来きるというものです。
また、見た目から使い勝手まで自分好みにカスタマイズすることができる、Linux の知識やスキルが多少ですが必要となってくるという特徴を実に絶妙なバランスで実現していると感じているからです。
Linux 感の実例。

その最も好い例だと思うのが MX Tool にある MX パッケージインストーラーです。
MX Tool に含まれるソフトウェア郡は、いずれも「ちょうどよい Linux 感」にあふれるものですが、その中でも特に MX パッケージインストーラーがわかりやすい例だと思います。
追加のパッケージをリポジトリ(貯蔵庫)から検索してインストールするというソフトウェアなのですが、基本操作は GUI 環境です。

GUI 環境とは言っても文字ベースでシンプルなものですが、非常に高速でわかりやすいツールです。(癖になる。)
ここでは日本語入力環境を設定しますが、検索窓に「Japan」と入力すると、日本語に関連するパッケージが絞り込まれます。

最近ではインストールの際に表示言語を日本語にすると、日本語入力環境まで設定してしまう Linux ディストリビューションも増えてきましたが、MX Linux に関しては未だにその設定を残しています。
というか、あえて残しているようにも感じてなりません。
ただし、設定というほどの操作はなく、必要なパッケージにチェックを入れボタンをクリックするだけです。
必要な設定は OS 側でやってくれます。(日本語入力環境の場合、再ログインが必要になります)
んで、パッケージのインストールの際、他では隠してしまうコマンドラインでのログをあえて表示させています。
個人的にはこれが大好きです。
ただのシークバーよりも、今 OS が何をしているかという進捗が目に見えてわかるのがしびれます。
先程言った、OS 側が行う必要な設定が実行されている様子を見ることができます。

パッケージのアップデートも同様で、基本的に Enter キーを叩く程度の操作でありながら、まるで自分がコマンドで作業したかのように錯覚してしまう環境は、Linux を使う楽しみに繋がるように思えます。

料理も、ちょっとひと手間かけるだけで美味しく感じるものです。
コンピュータの OS もまた、ちょっとひと手間かけるだけで楽しくなるように思います。(あくまでも個人的見解です。)
こういった他では隠してしまう機械的な部分を、あえて目につくようにすることで、プログラミングやエンジニアリングに興味を持つユーザーの感性を刺激するのだと考えます。
もちろんそれだけではなく、抜群の安定性と軽快で高速なシステム、コミュニティの確かな技術力といったしっかりとした基盤があってのことだと思います。
入口になる Linux ディストリビューションはそれぞれ違っても、Linux になれてきたユーザーがステップアップとして他の Linux を選ぶとき、ちょっとだけ Linux 臭さの残るディストリビューションを選ぶ傾向にあると思われます。
好奇心とか、向上心とか、もしかしたら冒険心かもしれませんね。
現在開発されている Linux ディストリビューションの多くは、デスクトップ指向の初心者向けに開発されているものか、難易度の高いシステム上級者向けのもののいずれか両極端になっています。
良い意味での「中途半端」な Linux ディストリビューションは案外少ないです。
そのため、最初に選ぶ Linux ディストリビューションよりも注目度がバラけることがなくなるため、ページヒットランキングの順位が高くなると言えるのではないでしょうか?
その証拠に、やっぱり案外と手のかかる EndeavourOS も、DistroWatch.com のページヒットランキング上位常連になっています。

数年前までは Linux に興味を持ったユーザーが Windows や macOS からの移行がしやすい Linux ディストリビューションの人気が高かったという状況でしたが、ここ数年は多少 Linux の知識が必要となるような「次に選ぶ Linux 」に注目が集まるようになってきたと言えます。
さらに MX Linux の場合、情報がとても豊富な Debian をベースにしている、ということも知識を深める上では重要なポイントだと言えます。
MX Linux のランキングを追い越しそうな勢いの EndeavourOS もまた、几帳面に整理された Arch Linux の情報を活用できるという面で、環境はよく似ていると思います。
つまり、ステップアップしてみようと思うユーザーが、そこまで難易度の高くない Linux を探したときに行きつくのが MX Linux や EndeavourOS ということでしょう。
これらが MX Linux の注目度につながった理由だとコダシマは考えます。
MX Linux の魅力とは?

今回は MX Linux が注目される理由について考察してみました。
日本では知名度が高くない Linux ディストリビューションではありますが、「ちょうどよい Linux 感」「絶妙な難易度のバランス」といった良い意味で中途半端な Linux ディストリビューションなので Linux 初心者が「次に選ぶ Linux 」として最有力候補なのでしょう。
「あんまり難しそうなのは無理だけどこれくらいなら」と思わせる「次に使ってみたい」システムを実現しているのが MX Linux だと言えます。
開発プロジェクトの技術力も高く、システムの安定性も抜群なので、注目度とともに人気も高いのは頷けます。
先程から少し名前を出している EndeavourOS も、MX Linux よりはもうチョット難易度は高めかもしれませんが、そんな「次に選ぶ Linux」ですね。
コダシマは MX Linux を ver.16 頃に知り、ver.17 からブログなどで情報発信をしてきました。
その当時から完成度はとても高く、とても気に入っていました。
「中量級」という表現を続けていますが、今だに 32bit 版の開発を続けているため軽量 Linux と言っても過言ではないように思えます。
これからもしばらくは MX Linux や EndeavoruOS と言った2番目に選ぶ Linux ディストリビューションに注目が集まるのではないかと考えられます。
Linux に興味を持っているそこのアナタ!
次は MX Linux (または EndeavourOS)を使ってみてはいかがでしょう?
参考資料
- DistroWatch.com – https://distrowatch.com/
- MX Linux – https://mxlinux.org/
- antiX – https://antixlinux.com/
- Debian – https://www.debian.org/
- Xfce – https://www.xfce.org/
- KDE Plasma – https://kde.org/ja/plasma-desktop/
- Fluxbox – http://fluxbox.org/
- EndeavourOS – https://endeavouros.com/
- Warren Woodford and the Linux distro market | Interview
- MEPIS gnu/linux [ES]