気づけばもう11月。

9月末日の正式リリースを予定していたのですが、現状はまだパブリックベータも提供できていません。

うかつでした。

今回はのびのびになっている open.Yellow.os の進行状況をお知らせいたします。

はじめに

現在開発中の open.Yellow.os は、Debian をベースとしてます。

そしてこの Debian の安定版は、2年サイクルで公開されます。

現在バージョンは11で、公開されたのが2021年8月14日。

今までのペースだと、次のバージョンは2023年夏頃の公開が予想されており、テスト版ではすでにそのバージョン12に向けた準備が進められています。

ここが、今回の肝になるのですが、その前に Debian の開発ブランチについて、ちょっとおさらいしておきましょう。

Debian の開発ブランチ

Debian の開発ブランチは4種類あります。

安定版

文字通り、厳密に安定性を検証したバージョンです。多くの派生ディストリビューションは、この安定版をベースとして開発されています。

テスト版

次期安定版となる公開テスト中のバージョンです。

open.Yellow.os は、このバージョンを採用しているのですが、このあと紹介する不安定版で一定期間致命的なバグが発見されなかったパッケージが、自動的にテスト版に組み入れられます。

このバージョンをベースとし、セミローリングリリースモデルとして開発されているディストリビューションがあります。

不安定版

開発者向けのバージョンで、コードネームは不変の「sid」。

トイ・ストーリーで、いつもおもちゃを壊す悪ガキのキャラクターにちなんでいます。

通常新規パッケージはこのバージョンに投入されます。

セキュリティのアップデートは提供されませんが、パッケージの更新サイクルが早いため、セキュリティの問題も比較的早く取り除かれます。

ココらへんはもう、ほんとに開発者とか腕自慢くらいしか使いませんね。

実験版

影響が大きなパッケージ群を、不安定版に入れる前に一時的に置かれ、不安定版との組合せによりしばらく実験が行われます。

実験版だけで全ての導入を行うことは出来ず、他のバージョンとの組み合わせにより動くものになります。

コダシマみたいなユーザーは、まず触れることがありません。

っとまぁ以上が、Debian の開発ブランチ4種類です。

繰り返しになりますが open.Yellow.os ではテスト版を採用しています。

採用したテスト版について

テスト版では、デスクトップなどで使う分には支障のない程度の安定度を持っていると言われ、最新のデスクトップを使いたい場合は、このテスト版を使うことが多いです。

はい。

コダシマはここに注目して採用いたしました。

GNOME 40 以降の環境に惚れてしまったからです。

賛否はあると思いますが、それでも GNOME の存在はオープンソースソフトウェアの中ではとても重要です。

積極的で活発な活動は、時としてチーム内での方向性の違いにより、チームを分裂させることもありますが、それでも長い歳月をかけて作り上げてきたデスクトップ環境はオープンソースソフトウェアのフラグシップと呼んでも過言ではないと思います。

そして、そのデスクトップ環境を使いたいがために選んだテスト版は、パッケージの更新が機械的に行なわれるため、依存関係が壊れやすいというデメリットがあります。

正直なところ、ここの影響を軽視していました。

もうちょっと、大丈夫かと思ってたんです。

Debian プロジェクトでは、時期バージョンの目処がついた段階でバージョンが入れ替わるため、安定版がリリースされた翌年の夏から秋にかけて、テスト版パッケージの入れ替えが行われます。

まずはここを失念していました。

そのため、動作確認したうえでバグ修正していても、整えたはずの依存関係は、アップデートによってすっかり書き換えられてしまい、先程の説明通り依存関係が簡単に壊れてしまうため、修正したバグの他にも、別なバグが出てきたりとてんやわんやです。

つまりは現在のビルドで、パッケージのアップデートを行うとあちこちで不具合が出てしまいます。

全く使えないわけではないのですが、望んだ形にならないというのが現状です。

この改善については開発責任者の TOSHIO さんを中心に開発メンバーに日々頑張ってもらっています。

もうコダシマじゃどうにもできません…。

とにかくうかつだったのは、この状況と対策を全く考えていなかったコダシマです。

繰り返しになりますが、Debian は2年サイクルで安定版がリリースされるわけですが、当然その間にはさっきお話したテストブランチのパッケージが入れ替わります。

それを利用して、サブローリングリリースモデルとして開発しているディストリビューションもあり、そこをイメージしていたのですが、バージョンの入れ替わるタイミングや依存関係が壊れてしまうことを少々軽視してしまっていました。

それに加えて、メンバーそれぞれも多忙だったり、体調不良だったりと9月末のリリースを予定していたはずでしたが、全然間に合っていないわけでございました。

今後のアップデート対応を含めて、改めて調整中というのが現状です。

いや、ほんとにやってみないと分からない事ばかりですね。

んー。

面倒なうえ難しいことをやってもらっていながら、やっぱり安定版をベースにしたほうが良いのかなぁ…とか、正直思っちゃいます。

ただその反面、この状況にうまいこと対応できる環境が整えば、セミローリングリリースモデルという特徴が生まれるのではないかとも思うわけです。

今の段階ではアップストリームの状況にほとんど依存しているため、まだまだ難しい面は多いですが今はセミローリングリリースモデルを目指しています。

ローリング・リリースなら Arch Linux や openSUSE をベースにしたほうが…という声もあるでしょうが、あえての Debian というのに意味を感じているのであります。

具体的な日程は、まだ調整中ですが、今度こそパブリックベータとして皆さんにご提供できる準備を進めていますので、待たせてばかりいますが、もうチョットだけお待ちください。

以上が、open.Yellow.os の進捗状況でございました。

今回のまとめ。

今回は open.Yellow.os の公開が遅れた言い訳回でしたが、開発メンバーやクローズドベータに参加していただいている皆さんのお力により、より良いディストリビューションになってきていると感じています。

ただのカスタム Linux であれば、もうさっさとリリースしてしまい、バグがあっても「こめんちゃい」くらいの感じでゴリ押ししたかも知れません。

ですが、この open.Yellow.os の開発に携わってくれている皆さんは、すでに日本を代表する Linux ディストリビューション…というか、日本を代表する OS の開発として力を振るっていただいています。

技術的にもプロジェクトの運営管理も、まだまだ未熟な部分はとても多いですが、引き続き皆さんのお力を貸していただければ幸いです。

パブリックベータの準備が整い次第、このブログや Youtube チャンネルはもちろん、Twitter や、公認サイトでお知らせいたしますので、その際はぜひともよろしくお願いいたします。

パブリックベータについて

パブリックベータではバグの報告を含め、さまざまなハードウェアの動作確認についても情報の提供をいただけるように検討しています。

今開発しているのが 64bit 版のみで、デスクトップ環境が GNOME という、Linux においては重量級の環境ですが、どこまでできるかを確認したいと思っています。

Linux はどちらかというと古いハードウェアに向いているといわれ、比較的古いハードウェアの情報は集まりやすい傾向にあります。

ですが、新しい…というか新しすぎるハードウェアの対応が遅れることもしばしばあります。

そういったところも吸い上げられればと考えています。