Pi 400 を入手できなかった腹いせ!
としてましたが、今回紹介するのは Raspberry Pi 4B をタブレットにしてしまう RasPad 3 です。
先日、こんなツイートをしました。
これ、普通にガジェットとしても面白い製品なのですが、もうちょっと先を行ってます。
その内容をお伝えしたいと思いますので、ぜひ最後までお付き合いいただければと思います。
はじめに。
RasPad = ワクワクの秘密基地。です。
RasPad は SunFounder が販売する、名前からもわかるように Raspberry Pi を Pad にする、すなわちタブレットにしてしまう製品です。
まずは、RasPad の紹介をする前に、RasPad を提供している SunFounder について紹介します。

SunFounder はオープンソースロボットや Aruduino・Raspberry Pi 関連のキット、ディスプレイスクリーンやスマートデバイスといった製品を使って STEAM 教育に焦点を当てた中国・深圳に本社を置くテクノロジー企業です。
ちなみに STEAM 教育とは…

- Science(科学)
- Technology(技術)
- Engineering(工学)
- Art(芸術)
- Mathematics(数学)
5つの英単語の頭文字を組み合わせた造語で、それぞれの領域を対象とした理数教育に、創造性教育を加えた教育理念のことを呼びます。
知る(探求)と作る(創造)のサイクルを生み出す分野横断的な学びです。

昭和・平成では定量的で競争的だった戦後教育システムに対して、新しい令和の時代では「ワクワク」や「ドキドキ」を軸にした学びのあり方として各所で盛んになってきています。
イノベーションが枯れたと言われて久しい日本には、特に必要なことだと思います。
そんな STEAM 教育に焦点を当てて製品を開発している SunFounder さまから提供されたのが、今回紹介する RasPad 3 です。
繰り返しになりますが RasPad は一言でいうと、皆さんご存知の Raspberry Pi をタブレットにしてしまうキットです。
RasPad

RasPad のいちばん最初のモデルは2019年2月に発表され、この時クラウドファンディング(Kickstarter)から 3,393 人の支援者から $610,966 を調達しスタートしました。
そこから改良が進み現在の RasPad 3 に至ります。
ちなみに RasPad 3 では 1,871 人の支援者から $313,431 の資金を調達しました。
ちなみに RasPad 3 は Raspberry Pi 4B 向けの製品です。

※キット内に Raspberry Pi 4B は含まれません。
で、先ほども伝えた通り SunFounder では STEAM 教育に焦点を当てて製品を開発しているため、この RasPad でも「学び」「創造」「構築」といったワクワク体験できるものになっています。
例えば…
- GPIO を通じてさまざまなプロジェクトを構築したり
- 3Dプリンタのモニタとして利用したり
- IoT プロジェクトの作成をしたり
- レトロゲームのコンソールにしたり
などなどができます。
未来のエンジニアに向けたエッセンスが凝縮されています。
もちろんガジェット好きにも魅力的です。
おじさんもワクワクします!
そんな RasPad のキットは、ケースはもちろんのことタッチ操作できる液晶ディスプレイと、インターフェイスを拡張する基盤、それとタブレットなのでバッテリー駆動させることもできる製品です。
PC のベアボーンキットみたいな感じですね。
キットの基本はタッチディスプレイなので、基本スペック的なものは以下の通りです。
Software | RasPad OS, Ezblock Stuidio |
Applicable RPi Version | Raspberry Pi 4 |
Weight | 887.5 g |
Warranty | 1-Year Limited Hardware Warranty |
Battery Life | 3-5 h |
Exterior | Color: Space Silver/Physical Buttons: Volume, Power, Brightness |
Audio | Stereo Speaker, 3.5 mm Headphone Jack |
Sensors | Accelerometer Gyroscope |
Display | Screen: IPS, Resolution: 1280*800, Aspect Ratio: 16:10 Contrast Ratio: 800, Touch: 10-Point Multi-touch |
Connections | 1xHDMI, 1xSD Card Slot, 1×3.5 mm Headphone Jack, 3xUSB 3.0, 1xEthernet Port, 1xGPIO Slot, 1x CSI Port |
大きさは 10.1 インチということで、概ね B5 サイズくらいです。

厚さは台形になっていて、厚いところで45mm、薄いところで17mmくらいです。
※部屋を散らかしすぎてノギスが行方不明です。
インターフェイス
ディスプレイに向かって左側

- Ethernet
- USB 3.0×3
- HDMI
- 3.5mm ヘッドフォンジャック
- 電源ポート (5.5V/2A)
ディスプレイに向かって右側

- micro SD カードスロット
- 電源ボタン
- 音量 (+)
※最初に音量ボタンを押すと音量調整 (+) として機能します。
また、最初に明るさボタンを押した後にこのボタンを操作すると明るさが増します。 - 明るさ(-)
※最初に明るさボタンを押すと明るさ調整 (-) として機能します。
音量ボタンが最初に押された場合は、このボタンを操作すると音量が下がります。 - バッテリーインジケーター
- 電源インジケーター
インターフェイスは、タブレットというより普通にPCみたいな感じです。
これ一つでなんでもできてしまいそうな印象を受けますね。
組み立て。

それでは組み立てていきましょう。
今回内蔵する Raspberry Pi は 4GB RAM の4B です。
キットには冷却用のヒートシンクが含まれていましたが、無駄にRasberry Pi 4 を複数台所有していて、すでにヒートシンクを貼っているものがあったので、それをそのまま使います。

キットにはたくさんケーブル類があってちょっと戸惑いますが、Raspberry Pi のインターフェイスを RasPad の基盤につなぐだけというようなイメージです。
RasPad のディスプレイの裏には、なんだか Raspberry Pi みたいに見える基盤がります。

これで、タッチ機能をサポートするなど Raspberry Pi の機能を拡張する感じでしょうか?
組み立てはケーブルがつよつよなので力こそ要りますが、難しいことはありません。
丁寧な説明書もついてますからね。

基本、右と左のインターフェイスをつなぐイメージです。

んで、思ったのですが、この RasPad のように組み立てが単純で簡単だったとしても、子供にとって一つのものを作り上げたという達成感や喜びといった成功体験は、かけがえのないものです。
ましてやこの RasPad は、使い勝手の良いタブレットになるわけですからその経験ははかりしれません。
STEAM 教育とはそういったところなんでしょうね。
いゃ、こんなキット、子供の頃にほしかったなー。
でも、いくつか注意点を挙げると2点ほど気になったポイントがあります。
①リボンケーブルの取り付け。

SDカードのを接続するリボンケーブルですが、ケーブルを押さえるガイド?を持ち上げつつ、溝にケーブルを入れる感じです。
ケーブルを入れ、ガイドをしっかり押し込むとケーブルが抜けなくなるはずです。
※抜ける時はやり直し。
自作 PC とかより、ジャンク PC をいじる人の方が、リボンケーブルの扱いは理解している勝手なイメージですが…
まぁ、あれです。
②冷却ファンの取り付け。

あと、冷却ファンの取り付けの際、説明書の表現にはちょっと戸惑いました。
早い話が、ラベルは見えないようにする位置で取り付けるようですが「ん???」となりましたね。
それより、この冷却ファンなんだか弱々しい感じがしますが、ノイズは大きめです。
そんなこんなで、あっという間に組み立て完了です!

ちなみに組み立て終わったときの重さは 944g とおよそ 1kg です。
最近は、これくらいの重さのガジェットばかり扱っているので、正直重いとかは思いません。
バッテリー。

んで、この重さにはバッテリーが関係しているのですが、バッテリーには Li-ion 18650 11.1V と記載がありました。
このバッテリーを詳しく調べてみると、リチウムイオンバッテリー 18650 は通常 3.7V 3000mAh 11.1Wh 程度の規格のもののようです。
RasPad のバッテリーには 11.1V とあります。
形状を見るかぎり、通常のを直列で3本つなげたもの3セルと言われるものでしょう。
3200mAh 35.52Wh とありました。
連続使用3-5時間とされていますが、どうですかね?
本当はちゃんと計測したかったのですが、忙しいふりをして検証しませんでした。
ですが、他のノートPC やタブレットのバッテリー容量から推測する限り、おそらく連続使用で2-3時間くらいではないかと思います。
オペレーティングシステム。

オペレーティングシステムは、普通に Raspberry Pi OS が動作しますが、UI を RasPad 向けにカスタマイズした RasPad OS もあります。
RasPad OS は、よりタッチ操作しやすいようなレイアウトになってます。
スクリーンキーボードもすぐにアクセスできるので、RasPad 単体でもだいたいのことができるようになります。
他の OS でも行けるのかちょっと試してみました。
Ubuntu

動作が重たいですが、ちゃんと動作します。
タッチ操作も OK !
Manjaro GNOME

Manjaro 試してみました。
あえて重たい GNOME デスクトップを試してみましたが、Ubuntu のときより軽快に動作してくれた気がします。
Recalbox

コダシマ的には大本命。
そもそもタッチ操作を想定した開発ではないので、試してみた OS の中では唯一タッチ操作ができませんでした。
でも、Bluetooth コントローラーを接続すると、なんと表現したら良いのでしょう?
とにかく「悦」の一文字。
いい感じとしか言いようがありません。
※設定には有線接続のコントローラーが必須です。
Windows

以前紹介した WoR で用意していた Windows 11 もテストしてみました。
起動が遅く動作も重たいのですが、タッチ操作は何事もなかったように普通に動作してくれます。
動きそうだとは思っていましたが、ちょっと驚きです。
Android (OmniROM)

Android は OmniROM 11 を試してみました。
もう、当たり前に Android タブレットですね。
タッチ操作できないわけがない!という感じですね。
- https://forum.xda-developers.com/t/omnirom-android-r-11-for-pi-4.4183121/
- https://omnirom.org/#about
- https://dl.omnirom.org/tmp/rpi4/
Chromium OS (FydeOS)

それなら Chromium OS は?ということで試してみました。
最初のセットアップにはどうしても最低限キーボードが必要で、アカウントの同期のせいかもしれませんが立ち上がりも重たい感じがしました。
が、それが終わると大体の操作は快適で、タッチでも問題なく操作できました。
MX Linux

最後にオマケで MX-Fluxbox Raspberry Pi を動作させてみました。
ちゃんとタッチで操作することができましたが、GNOME デスクトップとかのようにサクッとスクリーンキーボードが現れたりしません。
もともと UI 自体がタッチ操作を想定した開発になっていないためでしょう。
それでもこの RasPad でならタッチ操作ができてしまうというのは素晴らしいです。
その他にもまだ Raspberry Pi で動作する OS はありますが、ここまでチェックしてみて、セットアップにキーボードやコントローラーでの操作が必要になるものはあっても、タッチ操作ができないものはありませんでした。
※ Recalbox は見ないふりしてください。
なので、GUI 環境を持つ OS であればタッチで操作できるということでしょう。
思いのほかちゃんとタッチ機能が使えるのに正直驚きました。
ただ、せっかく自動回転機能のジャイロセンサーが付いているのですが、初期状態のままだと RasPad OS しか正しく動作してくれません。
ちなみに、センサーは RasPad でも初期設定が必要になります。
※詳しくは RasPad のオンラインマニュアルで!

まぁ、無理もないのですが、センサーを動作させることが最初のテストなんですかね?
ちなみに台形になっている本体を活用して自立させるためには、このジャイロが正しく動作しなければいけません。
自立させてレトロゲームを楽しむ場合には、Recalbox ではジャイロが作動しないため無理ですが、RasPad OS (または Raspberry Pi OS) に RetroPi をインストールしたものであれば実現可能です。
いずれにせよ、GPIO や IoT など、開発のプラットフォームは何を選んでも (Linux には間違いありませんが…) 良いと言えます。
ただまぁ、Rasberry Pi の RAM によって快適さは変わると思いますので、そのへんも頭に入れとくと良いですかね。
RasPad の使いみち。

RasPad のサイトやドキュメントを眺めてみると
- GPIO を使ったプロジェクトの構築
- 3Dプリンターモニタとしての利用
- IoT プロジェクトの構築
- レトロゲームコンソールとして
というところに特に焦点を当てています。
コダシマの場合には主にレトロゲームコンソールにしかなりませんが、Raspberry Pi と RasPad があれば開発ベースとして完璧です。
基本的にはこの他にディスプレイを追加する必要もなく、さらに RasPad OS や Raspberry Pi OS であればマウスやキーボードがなくても操作できます。
音声も出ます。

そう、RasPad はオールインワンです。
もともと Raspberry Pi はさまざまな開発に使われていますが、それに加えて RasPad をベースに使い、イロイロ開発したり、ロボットを動かしたりするのって考えただけでワクワクします。
昔見た SF ものの主人公みたいな気分ですね。
うむ。
学び直ししたくなってきましたね。
今回のまとめ。

今回は Raspberry Pi 4B をタブレットにするキット、RasPad 3 を紹介しました。
製品が届いたときには「ガジェット好き向け」とか思っていましたが、実際に触れてみるとちょっと違ってきました。
イジっていたら、なぜだか昔ワクワクして遊んでいた「秘密基地」を思い出したのです。
昭和の子どもたちなら心当たりがあるかと思います。
その秘密基地には自分の好きなものだけを集め、ほんとに仲の良い友だちだけで、そこにいるだけで幸せな独自の世界を作っていました。
あのときのワクワクが詰まっているみたいな印象を持ったのです。
普通にガジェットとしても面白いのですが、RasPad にはそれだけには止まらず「ワクワク」「ドキドキ」の学びを得るために最適なキットだと思います。

コダシマには現状で Raspberry Pi を使った開発環境がないため、OS のタッチ操作の対応くらいしか紹介できませんでした。
コダシマの表現力不足で、実際に触れて感じた RasPad の魅力を十分に伝えられていないように思います。
ですが、それでも言えるのは Raspberry Pi 自体、プログラミングにしろ、IoT の開発にしろ、3Dプリンタにしろ、レトロゲームにしろ、柔軟に対応できます。
それに RasPad を加えたならば、よりワクワクして学ぶことができます。
「学び」と「遊び」のボーダーラインは RasPad には不要でしょう。
お値段は実売 $219 (24,000円くらい) なので、ちょっとお高い気もしないではないですが、イロイロと揃えたりすることを考えると、まぁ妥当なのではないでしょうか。
RasPad は物好きなお父様方にも、もちろん良いですが、テクノロジーに興味を持ち始めたお子さんや、ものづくりが好きなお子さんにはとても良い教材ではないでしょうか。
きっと素晴らしい学びに出会えるかと思います。
未来のエンジニアのために是非チェックしてみてはいかがでしょうか!