今回はちょっと使い道に困っていたノート PC に Chrome OS をインストールしてみました。
オフィシャルの Chrome OS です。
Chromium OS ではありません。
ましてや CloudReady でもありません。
残念ノート PC の Dell Inspiron を Chromebook 化してみた
先日、海外の Chrome OS 情報を物色しているときにオフィシャルの Chrome OS をインストールする方法を知りました。
なぜ Chrome OS の情報を探していたかというと、Chromium OS と Chrome OS には大きな違いがあるからです。
一見すると Chromium OS と Chrome OS には違いがないように思いますが、Android のアプリを扱えない Chromium OS に対して、オフィシャルの Chrome OS は Android のアプリも使うことができるという大きな違いがあります。
ここ最近、Android 派生の OS を扱ってみてデスクトップ OS で Android のアプリを動かすのも面白いと思ったので、できるのであればと思い Chrome OS のインストール方法を探していました。
で、この知った情報をもとに、Twitterでもツイートしたとおり、使いみちに困っていた Dell Inspiron 14-3452 を Chromebook 化させてみました。
なぜこのマシンの使いみちに困っていたかというと…
この Inspiron、ストレージが eMMC 一択というモデル。

イチバンの廉価版のようで、一度分解してみたがこのモデルは HDD も SSD も増設する事ができない残念仕様となっている。
そして eMMC から OS を起動させるためには UEFI でなければいけない。
RAM スロットも1つしか無くメモリの増設にも限界があるので、より軽量な 32bit OS を使いたいところだが、 32bit OS での UEFI はイロイロと面倒です。
正直なところ今のコダシマのスキルでは自身がありません。
基本的には重たかろうが OS は 64bit ということだ。
もちろん搭載されているプロセッサ Celeron N3050 は 2 Cores, 2 Threads の 64bit プロセッサ。
RAM は DDR3L-1600 2GB だが最大で 4GB まで増設でき、 Chrome OS をインストールするには充分なスペックがある。
これだけ条件が揃っていて試さない理由がない。
ということで早速やってみた。
Chrome OS インストールの準備。

Chrome OS をインストールするためには、その準備をするための Windows 環境と、いくつかのプログラムが必要になる。
最低限必要なプログラムは以下の通り。
- Linux イメージ (Linux Mint 推奨)
- Linux を Chrome OS に適した形で書き込めるプログラム (Rufus 推奨)
- 公式リカバリーイメージから一般的な x86_64 の Chrome OS イメージを作成するためのプログラム (Brunch framework)
- シェルスクリプト
- 公式のリカバリーイメージ
これらについては作業をしながら詳しく解説していく。
また、これらに加えインストールに使うための 16GB 以上の USB メモリまたは SD カードが必要になる。
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ハードウェア要件のチェック。
次に Chrome OS をインストールするために推奨されているハードウェア要件も確認しておこう。
Chrome OS イメージを作成するためのプログラムを提供している「Brunch Project」では互換性のある基本のハードウェアとして紹介されている。
Brunch Project Github ページ▶https://github.com/sebanc/brunch
互換性のある基本ハードウェア
- UEFI ブートをサポートする x86_64 コンピューター
- 第1世代の「Nehalem (ネヘイレム)」から始まる Intel ハードウェア(CPU および GPU )
=つまり2008年以降に発売された Core i シリーズ以降のプロセッサが対象となる。
Intel
* Intel Core i (第1世代以降)
* Intel Celeron (最近のもののみ)
* Intel Atom (Baytrail 以上)
▶https://ja.wikipedia.org/wiki/Intel_Core
- AMD Stoney Ridge、「grunt」リカバリイメージのみ(古い AMD CPU および Ryzen モデルはサポートされていません)
=2011年以降に発売された AMD A シリーズが対象となる。
AMD
現時点では Stoney Ridge(ストーニー ・リッジ)のみサポート
* AMD A4
* AMD A5
* AMD A6
▶https://ja.wikipedia.org/wiki/AMD_Accelerated_Processing_Unit - Nvidia グラフィックカードもサポートされていません。
以上が紹介されている。
システムの都合上 64bit でも Core 2 Duo などのプロセッサおよび AMD Ryzen 以降のプロセッサには対応していない。
基本的には Intel プロセッサを対象としたワークフレームらしく、AMD プロセッサは一部の A シリーズにしか対応していない。
Brunch Project プロセッサについて▶https://github.com/sebanc/brunch/wiki/CPUs-&-Recoveries
Chrome OS リカバリーイメージのチェック
Brunch Projekt では Chrome OS のリカバリーイメージについても紹介されている。
Chrome OS のリカバリーイメージは2種類。
- 非ユニビルドイメージ
- ユニビルドイメージ
こちらの2種類も簡単に解説しておこう。
非ユニビルドイメージ
たとえば Google Pixelbook や Google Pixel Slate などの単一デバイス用に構成されたイメージ。
ユニビルドイメージ
CrosConfig ツールを使用して複数のデバイスを管理することを目的としているイメージ。
ということで、ブランチフレームワークで使うのはユニビルドイメージとなる。
ビルドイメージはプロセッサによって推奨されるものが異なる。
先程紹介したプロセッサで見ていくと次のとおり。
- Intel Atom (Baytrail (バイトレイル)) = Codename: banjo (バンジョー)
- Intel Core (第4世代以降) = Codename: rammus (ラムス)
- Intel Core (第3世代以前) = Codename: samus (サムス)
- AMD A4/A5/A6 = Codename:grunt
ハードウェア要件と必要なリカバリーイメージが把握できたところで、必要なものを揃えていく。
ダウンロード。
必要なものとそのダウンロードリンクは以下の通り。
1) Linux Mint
▶https://www.linuxmint.com/download.php
2) Rufus
▶https://rufus.ie/
3) Brunch
▶https://github.com/sebanc/brunch/releases
4) install.sh
▶https://raw.githubusercontent.com/shrikant2002/ChromeOS/master/install.sh
5) Chrome OS recovery image
▶https://cros-updates-serving.appspot.com/
わかりやすいところにフォルダを用意して、その中にダウンロードしておこう。
一通り揃えたら、作業しながらそれぞれについて説明していく。
今回、インストールメディアを作成するところまでは Windows 環境で作業をしていく。
Linux Mint

Chrome OS のインストールには Linux 環境が必要になる。
そこで用意するのが Linux Mint。
なぜ Linux Mint かと言うとファイルへのアクセスが簡単だというのが理由。
Chrome OS のインストール作業に最も適しているのが Linux Mint ということだ。
エディションはどれでも問題ない。
今回は個人的な好みで MATE エディションでやってみた。
ちなみに MX や Ubuntu など他の Linux でも試してみたが、確かにディレクトリのわかりやすさやアクセス権限などを含め、いちばん簡単だったのが Linux Mint だった。
きっと他の人達もいろいろと試した結果に違いない。
Linux は Linux Mint を用意しよう。
Rufus

Linux Mint を USB メモリに書き込むためのソフトウェア。
インストール不要で、書き込み速度が非常に速い。
が、こちらもなぜ Rufus かと言うと、出来上がったインストールメディアへのアクセスが簡単だということが挙げられる。
これから行う作業を見ていくとわかると思うが、インストールメディアにフルアクセスできるよう ISO モードで書き込めるソフトウェアが必要になる。
こちらも使いやすさや、書き込みの速さ、安定性などを考えるとベストなのは Rufus といえる。
Etcher でも試してみたが、こちらの場合には書き込みモードを選択することができないため、今回の用途には向いていない。
DD モードで書き込むライティングソフトでは、今回の作業はできなさそうだ。
Brunch とは?

一言でいうと公式のリカバリイメージから一般的なx86_64 Chrome OS イメージを作成するプログラムのこと。
Brunch Project のサイトにはさまざまな情報があるので一読をおすすめする。
また、Brunch の Github プロジェクトサイトには警告として次のような免責事項が掲載されている。
Warning: As Brunch is not the intended way for ChromeOS to work, at some point a ChromeOS script could potentially behave badly with Brunch and delete data unexpectedly (even on non-ChromeOS partitions). Also, ChromeOS recovery images include device firmware updates that a close enough device might potentially accept and get flashed with the wrong firmware. By installing Brunch you agree to take those risks and I cannot be held responsible for anything bad that would happen to your device including data loss. It is therefore highly recommended to only use this framework on a device which does not contain any sensitive data and to keep non-sensitive data synced with a cloud service.
要約だが内容は以下の通り。
- Brunch は Chrome OS の意図した方法でにために、Brunch が正しく動作しなかったり、データが予期せず削除される可能性がある。
- Chrome OS のリカバリーイメージにはデバイスファームウェアのアップデートも含まれているが間違ったファームウェアで更新される可能性がある。
- Brunch をインストールすることにより、以上のリスクを負うことに同意し、データ損失を含めたデバイスに発生する可能性がある不具合について開発者は一切の責任を負わない。
- 大切なデータ以外での使用を薦めており、機密データを含む大切なデータについてはクラウドサービスと同期させないことを薦める。
ちなみに2020年9月18日現在の最新版は「85」だが Testing 版なので、コダシマの場合は安定版である「83」を選択した。
Download▶https://github.com/sebanc/brunch/releases/tag/r83-k4.19-stable-20200708
なのでリカバリーイメージを選ぶ際もバージョンは「83」となる。
シェルスクリプト

Linux 環境下で簡単に作業を進められるようにするシェルスクリプトも用意されている。
最初に公開されていたスクリプトは
install.sh
#!/bin/sh
sudo apt-get update
sudo apt-get install pv # Pipe Viewer = パイプ処理の進捗を確認するコマンド
sudo apt-get install cgpt # コマンドラインから GUID パーティションテーブルを操作するためのツール
sudo bash chromeos-install.sh -src rammus_recovery.bin -dst /dev/sda
わずかコレだけだったが、現在配布されているシェルスクリプトには、この方法をおそらくいちばん最初に発信した方の Youtube チャンネルだと思われる URL が紹介されている。
コマンドを熟知している方であればこのスクリプトは不要だろう。
このコマンドで注意しなければいけないのは、リカバリーイメージのファイル名とインストール先のデバイス。
ダウンロードしたリカバリーイメージのファイル名を〈rammus_recovery.bin〉に変更するか、逆にスクリプトのファイル名を変更するかのいずれかを忘れずに行わなければいけない。
また、今回インストールしようとしている Dell Inspiron は eMMC のため、インストール先が /dev/sda だと正しくインストールされない。
予めインストール先のストレージについて確認し、修正しておく必要がある。
ちなみにストレージの確認については
$ lsblk で一覧が表示されるので、インストール先のストレージをチェックしておこう。
今回のマシンの場合は /dev/mmcblk0 となる。
リカバリーイメージはどれを選ぶ?

リカバリーイメージには先程も触れたが、プロセッサによって推奨されるリカバリーイメージは異なる。
ここでもう一度おさらいしておこう。
- Intel Atom (Baytrail) = banjo
- Intel Core (第4世代以降) = rammus
- Intel Core (第3世代以前) = samus
- AMD A4/A5/A6 = grunt
今回の Inspiron は Celeron とは言うものの、実際には Atom プロセッサ。
ただし Celeron N3050 は Bay Trail の後継である Braswell (ブラスウェル) 世代。
GPU などは第5世代に相当するので、リカバリーイメージは banjo ではなく rammus を試してみることにしました。
繰り返しになるが2020年9月18日現在の最新版は「85」だが Testing 版なので、今回は安定版である「83」を選択。
以上で準備が整った。
それではインストールしてみよう。
Chrome OS のインストール。

- ダウンロードした Linux Mint を Rufus を使って USB メモリに書き込む。
- 出来上がった Linux Mint のインストールメディアに Chrome OS 用のフォルダを作る。
- 作ったフォルダに Brunch、リカバリーイメージ、インストール用のシェルスクリプトをコピーする。
* brunch は tar.gz 形式なので展開してからコピーします。
* シェルスクリプトの修正もお忘れなく。 - USB メモリから起動できるように設定した Inspiron で Linux Mint を起動させる。
- ネットワークに接続しておく
- 先程用意したフォルダにアクセスし、ターミナルを起動させてシェルスクリプトを実行させる。
- 途中で表示されるインストールの確認で “yes” と入力する。
- あとは “ChromeOS installed.” のメッセージを待つだけ。
まとめ。
ということで、今回のまとめです。
今回は eMMC だけの Dell Inspiron 14-3452 を Chromebook にしてみました。
しかも Chromium OS ではなく Android アプリも使えるオフィシャルの Chrome OS です。

で、なにげにココまでスルーしてきましたが、デバイスの不具合は全く見られず、ゲームパッドやワイヤレスのキーボードも問題なく使えました。
もうネイティブの Chromebook なんじゃない?と思うほど快適です。
まぁマシンスペックが、スペックだけにアプリの動作には問題が残るかもしれませんが、サブPCとしては使えそうになりました。
RAM を 4GB にしたらもう少し快適になるかな?
とりあえず、オフィシャルの Chrome OS をインストールするには
が必要でした。
ハードウェアの対応は
- EFI ブートをサポートする x86_64 コンピューター
- 第1世代の「Nehalem (ネヘイレム)」から始まる Intel ハードウェア(CPU および GPU )
- AMD プロセッサは現時点で Stoney Ridge(ストーニー ・リッジ)のみサポート(古い AMD CPU および Ryzen モデルはサポートされていません)
- Nvidia グラフィックカードもサポートされていません。
Chromium OS ではなく Chrome OS なので Android アプリも使うことができます。
64bit のプロセッサに限られてしまいますが、個人的に Android アプリを使うのであれば Android-x86 系を使うより Chrome OS で Android アプリを使ったほうが良い気がしました。

Chrome OS のおかげで、キーボードの感触だけ好きだった Inspiron の使いみちができました。