BeOS とは、その名前が物語るように OS (オペレーティング・システム)の一つ。

業界に爪痕を残し、忽然と消え去った魅惑の OS とも言える。

その昔、僕も BeOS にワクワクした1人だった。

いつの間にかその名前も聞かなくなってしまった BeOS 。

この OS のオープンソース版である「 Haiku 」が今でも開発途中だという。

オープンソースやフリーソフトウェアを扱うこのブログで取り上げない理由はない!

ということで Haiku を取り上げてみたいのだが、まずはその前に BeOS を知らない人のために、BeOS について語っておきたい。

PowerPC プラットフォーム

もともと BeOS は、Apple 社で開発責任者をしていた人が1990年に Be 社を設立し、ハードウェアとセットで開発が始まった。

当初は AT&T 社の「 Hobbit 」という何やらファンタジーで妖精的な名前のプロセッサを使用してハードウェア開発が始まる。

しかし後に、より高性能の PowerPC をベースに変更され開発されるようになった。

PowerPC で動く BeOS は1995年に一般公開。

当時 PowerPC を搭載していた PC と言えば「 Power Macintosh 」 、つまり Mac 。

Power Macintosh

BeOS はマルチスレッド・マルチタスク化されており、並列・並行処理のパフォーマンスが優れていた。

当時の Mac OS よりも高速で動作し、 Mac ユーザーたちを驚かせたものだった。

また当時の Mac 関連雑誌にも取り上げられ、一定数のユーザーが BeOS に移行していたと記憶している。

BeOS
BeOS のスクリーンショット。

さらに Be 社には親日家のエンジニアが多かったため、日本語のサポートも充実しており、それが影響して日本でもそこそこ普及した。

現在開発中の「 Haiku(俳句)」の名前からもわかる通り、だいぶ日本よりな感じを受ける。

Power Macintosh にも移植され、Apple の次世代 OS ともみられていたが、Apple と Be との間で金銭面の折り合いがつかず次世代 OS にはなり得なかった。

まぁ、大人の事情ってやつですな。

それが発端となって Be 社の業績も下降し窮地に立たされた。

Intel プラットフォーム

それでも Intel 社などの協力を得て、 PC/AT互換機(DOS/Vと言ったほうがいい?)で動く BeOS の開発に専念することとなった。

あの手この手で業績の巻き返しを図った Be 社。

その度に注目はされつつも、個人ユーザー向けから IA市場(Industrial Automation market:産業オートメーション市場)と呼ばれる企業向けの開発にシフトした。

なぜって Microsoft 社は Windows 2000を発売し、Apple 社は Mac OS X Public Beta を発表。

Windows 2000
安定性の高いMicrosoft社のNT系Windows 2000。業務用として位置付けられていたが、一般ユーザーでも満足のいく出来栄え。
Mac OS X Public Beta
Apple社次世代のOS、Mac OS X Public Beta はフィードバックを得ることを目的として安価で提供された。

現在にまで至る、それぞれのプラットフォームの次世代 OS が立て続けに登場し、すでに BeOS の入り込む隙間は無くなっていたのです。

しかしシフトした先の IA市場もそれほど発展しなかったため、業績の回復には至らず2001年に Be 社は解散した。

Be社解散後

それでも熱狂的なユーザーに恵まれた OS だったため、その DNA は受け継がれたのです。

解散した Be 社の知的資産は PDA で知られる Palm 社(現ACCESS Systems)に売却されており、その Palm 社からライセンスを得て、ドイツの YellowTAB 社が「 ZETA 」を開発。

2005年に登場しましたが、いまいち普及しませんでした。

だってその頃は、安定動作に定評のあった Windows XP 全盛。

そして Linux 界隈でも数多くの優秀なディストリビューションが登場していた時期。

やっぱり販売は不振。

2006年には開発元である YellowTAB 社が破産保護下に置かれ、販売を引き継いだドイツの magnussoft 社もやっぱりダメだった。

そもそも他に優秀な OS がゴロゴロしているなかで、 ZETA に乗り換えるメリットがどこにもなかったのが大きな敗因と言えよう。

OpenBeOS プロジェクト

っと、商用版についてはこんな感じだけれど、一方で BeOS との互換性を持つオープンソース版の OS 「 Haiku 」は生き残っていた。

2001年8月に OpenBeOS という名前で、BeOS のバイナリ互換 OS の開発プロジェクトが発足した。

開発スピードは Linux に比べとてもゆっくりで、プロジェクトがスタートしてから8年後の2009年9月、「 Haiku R1/Alpha 1 」がリリースされた。

翌年の2010年5月には「 Haiku R1/Alpha 2 」、さらにその翌年2011年6月には「 Haiku R1/Alpha 3 」と徐々に開発スピードを上げて言った。

ところが2012年11月にリリースした「 Haiku R1/Alpha 4.1 」の後、公式リリースは行われていない。

資金不足か、はたまた大人の事情か?

状況は定かではないけれど開発自体は止まってはおらず、公式サイトでも日々開発状況のアップデートはされている。

まだまだ完成度が低いと言われており、Haiku への切り替えのメリットはなんら見出せないが、魅惑の BeOS の DNA を受け継ぐ、もう一つの OS として目の前に現れてほしい。

参考:

HAIKU公式サイト(英語)
https://www.haiku-os.org/

世界のOSたち – BeOSの血を受け継ぐ「Haiku」https://news.mynavi.jp/article/20120113-haikuos/

業界に痕跡を残して消えたメーカー Power MacintoshのOSになれなかった悲劇のBe
http://ascii.jp/elem/000/001/542/1542094/