皆さんにお伺いします。
今まで使ってきたスマートフォンの中で、好きだったものや思い入れがあったものって何ですか?
いろいろあると思いますが、コダシマの場合はそれが Google Pixel シリーズ、特に 3 と 3 XLです。
以前のコダシマは、かなり熱心な Apple 信者だったのですが、その解脱のきっかけになったと言っても過言ではないデバイスです。
ご存知の通り、この Pixel 3 と 3 XL の公式サポートは終了しました。しかし、それでもこの素晴らしいデバイスを、再利用する方法を知ることはとても重要です。
なぜなら、デバイスの寿命を延ばすことは、私たちのお財布にも優しいのはもちろん、延いては環境にも優しい選択だからです。
私たちは、新しいものを買う前に、まずは手元にあるものを最大限に活用することを考えるべきです。それが、お金を節約すると同時に私たちが地球を守る一歩となるのです。
今回は、以前別動画で紹介した Ubuntu Touch の際に、Pixel 3a のつもりで手に入れた Pixel 3 XL の再利用について、具体的な方法を一緒に見ていきたいと思います。
それでは行ってみましょう。
Pixel 3 XL のレビュー
では、今さら語ることは無いかとも思いますが、念のために Pixel 3 XL の主要な特徴について見ていきましょう。
まず Pixel 3 XL は、その優れたカメラ性能で知られています。
背面 12.2MP、前面 8MP のカメラを搭載しており、その鮮やかな色彩と詳細な描写力で、プロのカメラに匹敵する写真を撮影することができます。
余談ですが、その当時、通っていたショップの店員さんの中に、めちゃくちゃ Pixel ファンの方がおり、その方がこの写真機能について熱く語ってくれたことを思い出します。
自分で撮影した写真を得意げに見せてくれ、ナイトモードの説明の際には、趣味の夜釣りの様子を見せてくれ、いかに Pixel のカメラ性能が優れているかを熱く語ってくれていました。
また、Pixel 3 XL は 6.3 インチ 2960×1440 ピクセル、画素密度 522ppi といった、Pixel 3 の 5.5 インチよりも一回り大きい OLED ディスプレイを持ち、鮮やかな色彩とシャープな解像度で、視覚的な体験を一層引き立てます。
そして何と言っても、そのパフォーマンス。
改めてスペックを確認してみましょう。
Model | Google Pixel 3XL |
CPU | Qualcomm snapdragon 845 Kryo 385@2.8GHz×4, Kryo 385@1.7GHz×4, |
GPU | Adreno 630, Vulkan サポート, OpenGL ES 3.2V 対応 |
Display | 6.3 in OLED, 2960×1440, 522ppi |
RAM | 4GB LPDDR4X |
Storage | 64GB UFS 2.x |
Camera | 背面: 12.2MP (デュアルピクセル), 前面: 8MP (広角/標準視野カメラ) |
Battery | 3430mAh |
Wi-Fi | 802.11a/b/g/n/ac (Wi-Fi 5) 2.4GHzおよび5.0GHz |
Bluetooth | 5.0 + LE |
sensor | 指紋センサー, NFC, GPS |
OS | Android 9 (Android 12 までアップグレード可能) |
Size | 158 × 76.7 × 7.9 (mm) |
Weight | 184g |
最大 2.8GHz で動作するオクタコアの Qualcomm Snapdragon 845 を搭載し、メモリは 4GB LPDDR4X、ストレージに 64/128GB UFS 2.x という仕様です。
https://www.qualcomm.com/products/mobile/snapdragon/smartphones/snapdragon-8-series-mobile-platforms/snapdragon-845-mobile-platform
これを、いつもスコアを計測している AnTutu, Geekbench, PerformanceTest の最新版でスコアを見てみると…
https://www.antutu.com/en/index.htm
https://www.geekbench.com/
https://www.passmark.com/products/performancetest/
下手なデバイスよりも良いスコアを叩き出します。
これらの特徴からもわかるように、Pixel 3 XL は今でも価値あるデバイスです。
サポートが終了したとはいえ、その性能は依然として高く、未だ現役と言える快適なユーザーエクスペリエンスを提供します。
カスタムROM とは?
では、この公式サポートの切れたデバイスを再利用する一つの方法を紹介しましょう。それがカスタム ROM の導入です。
まず、カスタム ROM とは何かを説明しましょう。
カスタム ROM とは、スマートフォンやタブレットのオペレーティングシステムである Android を文字通りカスタマイズしたものです。
もう少し具体的に説明すると、そもそも Android は Google が開発したモバイルオペレーティングシステムで、そのソースコードはオープンソースとして公開されています。これは、誰でもそのコードを見ることができ、必要に応じて自分のニーズに合わせて変更や改良を加えることができるということを意味します。
このオープンソースの性質が、Android のカスタム ROM の存在を可能にしています。
https://source.android.com/docs/setup/about/faqs?hl=ja
カスタム ROM のメリットはいくつかあります。
カスタム ROM は、Android のオープンソースコードをベースに、開発者が独自の機能や設定を追加したものです。これにより、ユーザーは標準の Android システムでは提供されていない特別な機能や設定を利用することができます。
例えば、特定のデバイスのパフォーマンスを向上させたり、新しいユーザーインターフェースを提供したり、さらなるカスタマイズオプションを追加したり、そして最新の Android バージョンを体験できることなどが挙げられます。
一見すると、良いことばかりのようにも聞こえますが、もちろんカスタム ROM にもデメリットはあります。
デバイスの保証が無効になる可能性、不安定な動作やセキュリティリスク、そして複雑なインストールプロセスなどがあります。
もう少し詳しく説明すると、カスタム ROM を使用するには、デバイスの「ルート化」が必要となることが多いです。
ルート化とは、デバイスの管理者権限を取得し、システムレベルでの変更を可能にするプロセスのことを指します。これにより、ユーザーはデバイスの基本的なシステム設定を超えて、より深いレベルでのカスタマイズが可能となります。
ただし、ルート化はその代償としてデバイスのセキュリティを弱める可能性があり、さらに不適切な手順を踏むとデバイスを使用不能にするリスクもあります。したがって、カスタム ROM の使用は、技術的な知識を持つユーザーや、特定の機能や設定を強く望むユーザーにとって魅力的な選択肢となるかもしれませんが、一般的なユーザーにとっては注意が必要です。
※自己責任
デバイス再利用のおすすめ方法ではありますが、これらのメリットとデメリットを考慮に入れ、自分にとって最適な選択をすることが大切です。
CalyxOS とは?
それでは、今回のカスタム ROM 「CalyxOS」を紹介しましょう。
CalyxOS は、プライバシーとセキュリティに重点を置いたカスタム ROM です。ユーザーのプライバシーを保護するための多数の機能を提供しています。また CalyxOS は、広告トラッカーのブロックや、アプリのパーミッション管理などが含まれます。
そして何より、CalyxOS は Pixel 3 XL に完全に対応しています。というか、ほぼ Pixel 専用と行っても過言ではないカスタム ROM です。これにより、Pixel 3 XL のユーザーは CalyxOS を利用して、デバイスの寿命を延ばし、新たなスマホ体験を得ることができます。
CalyxOSのインストール
それでは、実際に Pixel 3 XL に CalyxOS をインストールする方法について見ていきましょう。
CalyxOS のサイトにはとても丁寧にインストール方法が記載されています。
サイトに書かれてある手順通りに進めれば問題ありません。
今回は、Linux コンピュータからインストールする方法について説明していきます。
1. Android デバイスの準備
まず、新しい OS を受け入れるためにデバイスを準備します。
※インターネット接続がない場合、この手順は失敗する可能性があります。その場合は、Wi-Fi ネットワークに接続してからもう一度お試しください。
2. ホストコンピュータの準備
次はホストコンピュータの準備です。
Windows、MacOS、Linux のいずれのプラットフォームでも大丈夫ですが PC-FREEDOM では Linux を使います。※open.Yellow.os です
Linuxパッケージのインストール
まずは必要なパッケージのインストールです。
CalyxOS を書き込むための device-flasher プログラムは、Linux カーネル用のデバイス管理ツールである udev の特定ルールをインストールしている必要があります。udev ルールを正しく設定するには、必要なパッケージをインストールする必要があります。
sudo apt update
sudo apt install android-sdk-platform-tools-common
詳しくは公式サイトに記載がありますが、android-sdk-platform-tools や android-udev など、Linux ディストリビューションによってパッケージ名が違うので、もしも挑戦される方はしっかり確認してみてください。
device-flasher のダウンロード
パッケージのインストールが終わったら、次に device-flasher.linux をダウンロードし、新しいディレクトリに保存します。このディレクトリには後で CalyxOS のイメージも保存します。
ダイジェストの確認
これはオプションのステップですが、念には念を入れておきましょう。
ダウンロードした device-flasher が正しいかを確認するために、ファイルを検証します。ターミナルを開き、device-flasher を保存したディレクトリに移動してからコマンドを実行します。
sha256sum device-flasher.linux
結果が正しいハッシュ値であることを確認しましょう。
530bef93de1af79400db3a46494d20d5848f8b765ba3cf5e814e04c79f8b711b
一致しない場合は、ファイルが破損しているか正しくありませんので、改めてダウンロードしましょう。
「コピペ」で作業できます。
3. CalyxOS のダウンロード
では、CalyxOS のイメージをダウンロードし、device-flasher と同じディレクトリに保存します。
イメージファイルは、同じページのリンクからダウンロードすれば問題ありませんが、対象のデバイスに向けたものをダウンロードしましょう。今回のものは Pixel 3 XL (crosshatch) 専用です。
ダウンロードした zip ファイルは、展開したり名前を変更したりせずに、そのままコピーします。
ちなみに、他のデバイスモデルにこのイメージをインストールしようとすると、Android デバイスが壊れる可能性があります。専用のイメージファイルを使いましょう。
ダイジェストの確認
これもオプションのステップですが、先程と同様にファイルを検証します。
ターミナルを開き、イメージを保存したディレクトリに移動してから次のコマンドを実行しましょう。
sha256sum crosshatch-factory-23410000.zip
結果が正しいハッシュ値であることを確認しましょう。
a7c595f2cf75f6451cbb58fde1dd55db86430bb2117178e373337886ddffe462
一致しない場合は、ファイルが破損しているか正しくありませんので、こちらもまた改めてダウンロードしましょう。
4. CalyxOS のインストール
これで準備は整いました。いよいよインストールです。
device-flasher の実行
まず、コンピュータと Android デバイスを USB ケーブルで接続します。
CalyxOS のイメージと device-flasher が同じディレクトリにあることを確認したら、インストールを開始します。
ターミナルを開き、コマンドを実行します。
chmod +x device-flasher.linux
./device-flasher.linux
デバイスに目を向けると、USB 接続の許可を求めるメッセージが表示されるので「許可」しましょう。
ターミナルにもメッセージが表示されるので、指示に従ってインストールを進めましょう。
ブートローダーのロック解除
インストール過程で、ブートローダーのロック解除を求められる場合があります。すでにブートローダーがロック解除されている場合は、このメニューは表示されず、何も触らずに自動的にインストールが進みます。
多くの場合はメニューが表示されるかと思います。
ブートローダーのロック解除メニューが表示されたら、ボリュームキーを押して「Unlock the bootloaer」オプションを選択し、パワーキーを押してそのオプションを有効にします。
あとは自動的にインストールが進みますが、デバイスは何度も再起動したり、画面が切り替わったりします。
しばらくすると、ターミナルに Android デバイスのブートローダーロックの指示が表示されます。ブートローダーのロックオプションを実行すると、いよいよ大詰めです。
device-flasher が終了したら、CalyxOS が正しくインストールされたデバイスが完成します。
…と言いたかったのですが、何度やっても上手くいきませんでした。
うまくインストールできない時は?
device-flasher の実行中にエラーが発生した場合や、device-flasher がハングアップした場合は、USB の問題が原因である可能性があるようです。その場合、コンピュータにある別の USB ポートに接続するか、別の USB ケーブルを試すことが推奨されています。
それ以外に問題があった場合は、CalyxOS のコミュニティページで質問を投稿できますので、万が一の際にはこちらも活用してみましょう。
コダシマの場合、あれこれやってみても上手くインストールができなかったので、最終的に Linux ではなく Windows 10 を引っ張り出してやってみました。
基本的な手順はかわりありませんが、device-flasher をダブルクリックだけで起動させることができるのは手軽です。
端末に表示される内容も Linux と一緒です。
…数分後
一撃でインストール成功です。
上手くインストールができない場合にはプラットフォームを変えてみるのも、ひとつの手段ではありますね。
ということで、これで Pixel 3 XL に CalyxOS がインストールされました。
CalyxOS でできること
CalyxOS は、スマートフォンとしての基本機能に加え、何度も言いますが、ユーザーのプライバシーを最優先に考えて設計されています。
特徴的な機能をいくつか紹介すると、アプリごとのネットワークアクセスを細かく制御できる Datura Firewall や、信頼性の高い VPN を無料で利用できます。
また、Google Play Services の一部の機能を置き換える microG を使用することで、より高い匿名性とプライバシーを維持できます。デバイスのセキュリティも強化されており、自動的な月次の OTA セキュリティアップデートや、OS の改変検出などの機能があります。
OTAは”Over The Air”の略で、無線通信を通じてデータを送受信することを指します。スマートフォンやタブレットなどのモバイルデバイスにおいては、OTAは主にソフトウェアのアップデートを指すことが多いです。
さらに、F-Droid から無料でオープンソースのアプリを入手したり、Aurora Store を使用して Google Play のカタログから匿名でアプリをインストールしたりできます。
デフォルトブラウザは、広告やトラッカーをブロックする Chromium ベースの Bromite が採用されており、Tor Browserを 使えば、追跡されずにインターネットを閲覧することができます。
おまけに、通常、数字の配置が一定なロックスクリーンの PIN をごちゃまぜにスクランブルさせることまでできます。
これら全てが、CalyxOS が提供するプライバシーとセキュリティの強化された素晴らしい機能の一部です。
他にもたくさんのセキュリティ機能がありますので、ぜひ一度 CalyxOS のサイトをチェックしてみてください。
今回のまとめ
今回は、Pixel 3 XL の再利用について見てきました。
サポートが終了したとはいえ、この素晴らしいデバイスはまだまだ現役で活躍できます。
古いデバイスを再利用することは、環境にも大きな影響を与えます。新しいデバイスを買う代わりに、手元にあるものを最大限に活用することで、地球を守ることができます。
新しいデバイスも魅力的ですが、中古デバイスの再利用もぜひ検討してみてください。延いては、それが私たち一人一人ができる、地球を守る一歩にもなります。
それよりなにより、今回ご紹介した CalyxOS は、単純に公式サポートが終了したデバイスを最新の Android バージョンにアップグレードするだけでなく、堅牢(けんろう)なプライバシー保護機能を備えたデバイスに変える能力を持っています。
全て自己責任にはなりますが、今回の動画があなたのお役に立てれば幸いです。
機会があれば、ぜひお試しくださいませ。
おまけ
概ね日本語対応していますが、文字の入力環境は初期状態では AOSP の Android キーボードのみです。日本語対応のキーボードはあとから追加する必要があります。
F-Droid で配布されている Android 向けの Fcitx はもちろん Aurora Store 経由で Gboard をインストールすることもできます。(Mozc もね)
あと、もう一つ Aurora Store 経由で「原神」をインストールしてみましたが、やっぱりというべきか Google アカウントではログインできませんでした。