MoDT | なぜモバイル CPU を使う?

では今回は、MoDT って何?というお話を少し詳しくしていきます。MoDT というのは「Mobile on Desktop」の略。つまり、ノート PC 向けに設計されたモバイル CPU を、デスクトップ PC に使おうというスタイルのことです。意外と日本語の情報が少ないのですが、すでに 2000 年ころからインテルが提案していました。
「なんでわざわざモバイル用?」って思う方もいると思います。

その理由は、当時モバイル CPU の性能も上がり始めた頃で、電力消費の少なさや、コンパクト設計できる点に注目されるようになったからです。そうして生まれたのがミニ PC の NUC です。残念ながら言い出しっぺのインテルは 2023 年に事業を終了し、その事業は ASUS へと継承されました。本家はふるいませんでしたが、皆さんご存知の通り、Amazon を開くと、他のメーカーの同等製品がたくさん出回っています。
最近のモバイル CPU はめちゃくちゃ進化しており、MoDT の提唱が始まった頃よりも遥かに CPU の性能が上がりました。例えば、以前紹介した旧モデルの AR900i に搭載された Core i9-13900HX は、なんと 24 コア 32 スレッドと下手なデスクトップ向け CPU よりもハイスペックでした。
省電力・静音
モバイル CPU の大きな特徴は、省電力性と静音性。モバイル CPU はノート PC 用なので、限られた電力で高い性能を出せるように設計されています。つまり MoDT で PC を組むと、高性能なのにもかかわらず静かで電気代も控えめという、実用性バツグンの PC ができあがるというわけです。
コンパクト PC との相性も◎
また、サイズ的にもコンパクトにできるのも魅力のひとつ。ミニ PC の台頭はこれが理由ですね。場合によっては、フルサイズの空冷や大型グラボが不要になるケースもあるので、静音志向のワークステーションや、スリムな自宅 PC、リビング PC なんかにも向いています。つまり、MoDT とは、高性能・省電力・静音・コンパクトというとても理想的なバランスを狙える構成といえます。ガチガチに性能を追うのも良いですが、理想的なバランスを楽しむ、そんな選び方もおすすめです。
Minisforum BD795M 実機レビュー

そんな MoDT を楽しむうえで、注目すべきマザーボードがこちら、Minisforum BD795M です。実はすでに何度も、Youtube ライブ配信で紹介していましたが、今回はくわしく実機を紹介していきます。
開封・外観チェック

まずは開封から。
箱を開けると、まず目に飛び込んでくるのは、マザーボード本体の上に置かれたマニュアル。Wi-Fi のアンテナ用ケーブル、SATA ケーブル、バックパネルなどマザーボードに必要な基本的なものが同梱されています。

外観とスペック紹介

この大きく目立つやつが CPU ですね。搭載されているのは、AMD の Ryzen 9 7945HX。ノート PC 向けとは思えない 16 コア 32 スレッドの超ハイエンドモバイル CPU です。しかも、モバイル向けではまぁまぁな性能の Radeon 610M グラフィックス内蔵です。
メモリスロットは SO-DIMM DDR5 が2本。最大 96GB 対応で、速度は 5200MT/s 。ストレージは PCIe 4.0 対応の M.2 スロットが 2 基、さらに SATA ポートも 2 つあります。拡張スロットは、PCIe 4.0 x16 が 1 本。フルサイズのグラボも問題なく使えます。
I/Oポート類の確認

背面の端子も豊富です。
- USB 3.2 Gen1 Type-A ×2
- USB 2.0 ×2
- HDMI 2.1 / DisplayPort 1.4 各1本
- 2.5G LANポート
映像出力と高速 LAN を備えているので、追加のグラボなしでも運用できるのは嬉しいポイントです。
組み立ててみた感想

パフォーマンステストのために、簡易的に組んでみましたが、オンボード CPU も全然悪くないです。
自作 PC の場合、CPU を差し込むときの、なんとも言えない緊張感が省略されるのがイイですね。まぁ、あれもあれで自作の醍醐味ではあるのですが、初心者にはリスクの少ないほうが良いように思います。自作に慣れているユーザーであっても、ひと手間省けるのはメリットだと思います。
ベンチマークチェック

では、実際の性能もチェックしてみましょう。Cinebench、PerformanceTEST、Geekbench、Final Fantasy XV でチェックしました。Street Fighter 6 ベンチマークツールでもチェックしたかったのですが、なぜかエラーで起動できませんでした。グラフィック性能が足りなかったのかな…?
Cinebench

https://www.maxon.net/ja/cinebench
Geekbench

https://www.geekbench.com/download
PassMark PerformanceTest

https://www.passmark.com/products/performancetest/download.php
FINAL FANTASY XV (FF15)

http://benchmark.finalfantasyxv.com/jp/
Cinebench R23では、マルチコアスコアが3万点超えと、デスクトップ上位CPUに匹敵する性能。他のベンチマークソフトでも、トップクラスのスコアが出ていました。試しに、軽い動画編集をしてみたのですが快適に動作してくれました。
消費電力について

電力についてもお話しておきたいです。Ryzen 9 7945HX のようなモバイル向け CPU は、通常のデスクトップ向け CPU よりも消費電力がかなり抑えられています。
CPU の消費電力の目安に TDP があります。TDP というのは、「熱設計電力」のことで、CPU が通常動作する中で発生する熱の目安を示す値です。例えば「TDP 65W」なら、「このCPUは最大でも65ワット分くらいの熱を出すよ」という意味。この値が大きいほど電力を消費し発熱も多く、冷却にしっかりしたクーラーが必要になります。逆に TDP が小さいと、静かで省電力な PC を作りやすくなる、というわけです。

Ryzen 9 7945HX は消費電力も Ryzen 9クラスとしては控えめです。デスクトップ向け Ryzen 9 7900 だと TDP 65W ですが、コア数・スレッド数の近い Ryzen 9 7900X だと、デフォルト TDP 170W になります。このように一般的なハイエンドクラスと呼ばれるデスクトップ CPU は TDP が 100W をゆうに超えるものが主流ですが、この Ryzen 9 7945HX は、AMD が公表している仕様では TDP が 55W〜75W 程度に設定されています。

※Minisforum公式サイトでは「CPU TDP 100」「ターボパワー 120W」となっています。
いずれにせよ、この差が「消費電力が少ない⇒電気代が安くなる」のはもちろん「発熱が少ない⇒静音性が高く、冷却もシンプルで済む」というメリットに繋がります。
ここがイイ
Minisforum BD795M は MoDT 構成の入門にも最適で、高性能なのに組みやすく、省エネで静かというバランスの良さがわかります。ちなみに、この BD795M は CPU がオンボード、つまりマザーボードに固定された形になっています。自作に慣れてる方からすると、「交換できないのはちょっと…」と思う方もおられるかもしれません。

しかしながら実際、CPU って一度決めてしまうと、使っている間に交換することってあまりないんですよね。この構成のように、最初から完成度の高い組み合わせで最適化されているなら、無理にあとから変える必要もないし、むしろ安心感があります。CPU の固定化によって設計の効率化や冷却の最適化、価格のバランスも取りやすくなるので、特に MoDT 構成のような「実用性重視」のスタイルでは、むしろプラスに働く部分も多いと思います。

で、 BD795M は Micro-ATX でしたが、さらに小型の、Mini-ITX マザーボード BD790i / BD795i もなかなか良いのでオススメです!
今回のまとめ

というわけで、今回は MoDT というちょっと変わった構成スタイルと、それを楽しむのにぴったりなマザーボード「Minisforum BD795M」をご紹介いたしましたが、いかがでしたでしょうか?
この構成の面白さは、性能・静音性・省エネ性のバランスが取れていることだと思います。もちろん、とにかくハイエンドを極めるような構成もロマンがあって楽しいのですが、こうした「ちょっと違う角度から攻める構成」にも、なかなか魅力があると思います。お財布にも優しいですしね。
自作 PC は、スペックを競うだけではなく、「どう作るか」「何にこだわるか」を考えること自体が、すごく楽しいと思うんですよね。MoDT 構成、そして静かでパワフルな BD795M は、自作の可能性を広げてくれる一枚だったんではないでしょうか。皆さんも、ぜひ「自分らしい一台」を考えてみてください。
といったところで、今回は以上となります。それではまた別の記事でお会いいたしましょう!
なんちゃってエンジニアリング PC-FREEDOM のコダシマでした。
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