気になる Linux を見つけると、とりあえずインストールしてみたくなる。僕の場合、普段は VirtualBox を使っているんですが、あれこれ試しているうちに、仮想マシンがどんどん増えていきます。

それなら、別の PC に仮想環境をまとめておけば便利なんじゃないか。そんな使い方ができるのが、今回紹介する Proxmox VE(プロックスモックス VE) です。

Proxmox VE は、1 台の PC で複数の OS を動かし、Web ブラウザーから管理できるオープンソースの仮想化プラットフォームです。余っている PC や Mini PC を使って、自分専用の Linux 検証環境を構築できます。

ただし、気になる Linux をたまに試すだけなら、VirtualBox の方が手軽です。Proxmox VE は、専用の PC を用意して複数の仮想環境を管理したい人に向いています。

以前、YouTube ライブでも実際に Proxmox VE をインストールし、Ubuntu を動かしてみました。途中、操作方法をすっかり忘れてしまう場面もありましたが、無事に Ubuntu が起動。今回はそのときの様子も交えながら、Proxmox VE の特徴や使いどころを紹介します。

1. Proxmox VE とは? Debian ベースの仮想化プラットフォーム

ディストリビューション概要

Proxmox VE は、オーストリアの Proxmox Server Solutions GmbH が開発する、サーバー向けの仮想化プラットフォームです。正式名称は Proxmox Virtual Environment。2008 年に最初のバージョンが公開され、現在も開発が続けられています。

基盤となっているのは Debian GNU/Linux。一般的なデスクトップ Linux とは違い、仮想マシンやコンテナを管理するための環境が用意されています。

Proxmox VE をインストールした PC は、基本的に仮想化専用のホストとして利用します。管理は別の PC の Web ブラウザーから行うため、普段使いのデスクトップ環境は必要ありません。

さらに、複数の物理サーバーをまとめるクラスタ機能や、バックアップ、ストレージ管理など、サーバー運用に必要な機能も備えています。

こうした機能を持ちながら、オープンソースとして開発され、個人でも無償で利用できるのが Proxmox VE の特徴です。

KVM と LXC、2 つの仮想化技術

Proxmox VE では、主に KVM と LXC という 2 つの仮想化技術を利用します。

KVM(Kernel-based Virtual Machine)は、仮想的な PC を作り、その中に Linux や Windows などの OS をインストールする仕組みです。一方、LXC(Linux Containers)は、ホストの Linux カーネルを共有して、独立した Linux 環境を動かすコンテナ技術。一般的に、KVM の仮想マシンより少ないリソースで動作させられます。

項目KVMLXC
仮想化方式仮想マシンコンテナ
対応 OSLinux、Windows などLinux
カーネルゲストごとに動作ホストと共有
主な用途OS の検証、独立したシステム軽量なサーバー環境

例えば、Ubuntu Desktop をインストールして、画面操作まで確認したいなら KVM。Web サーバーなどを分離して動かしたいなら LXC、という使い分けができます。

今回のライブでは KVM を利用しました。LXC については実際に検証していないので、ここでは仕組みの紹介にとどめます。

2. VirtualBox とは何が違う?

仮想マシンを使ったことがある人なら、VirtualBox を思い浮かべるかもしれません。僕も普段はこちらをよく使っています。

どちらも複数の OS を動かせますが、利用する環境や管理方法が違います。

項目Proxmox VEVirtualBox
基本的な使い方専用 PC で仮想環境を管理普段使う PC 上で動かす
管理方法Web ブラウザーデスクトップ GUI、CLI
複数の仮想マシン対応対応
遠隔管理Web 管理機能を標準搭載別途構成が必要
主な用途サーバー、常設の検証環境OS の試用、デスクトップでの検証

例えば、ノート PC で気になる Linux をちょっと試してみたいなら VirtualBox。普段使う PC とは別に、複数の Linux を動かせる環境を作りたいなら Proxmox VE、という使い分けです。

もちろん、Proxmox VE を使えば仮想マシンが軽くなるわけではありません。性能はホストとなる PC の CPU やメモリ、ストレージなどに左右されます。

ただ、普段使っている PC から仮想マシンの負荷を切り離せるのは便利です。

僕の場合、動画編集などで PC を使いながら、別の環境で Linux を試すこともあります。そう考えると、専用の検証環境を用意しておくのも悪くありません。

もっとも、手軽さでは VirtualBox に慣れてしまっているんですけどね。

3. 古い PC や Mini PC でも使える?

Proxmox VE というと、本格的なサーバー機材が必要な気がしますが、一般的な PC でも利用できます。

ただし、Proxmox VE 自体が動くことと、その上で仮想マシンを快適に動かせることは別です。

公式のシステム要件では、実運用向けに Proxmox VE 本体用の最低 2GB に加えて、仮想マシン用のメモリが必要とされています。ZFS や Ceph などのストレージ機能を利用する場合は、さらに余裕が必要です。

Linux の検証用として考えるなら、僕は次のような構成を目安にします。

ハードウェアPC-FREEDOM の目安
CPUIntel VT-x / AMD-V 対応の 64bit CPU
メモリ 4GB軽量な Linux や小規模なコンテナの検証向け
メモリ 8GB仮想マシン 1 台を動かす出発点
メモリ 16GB 以上複数の仮想マシンを扱いやすい
ストレージSSD 推奨。VM の数に応じて容量を確保
ネットワーク有線 LAN 推奨

※これは個人の検証環境を想定した目安であり、公式の推奨スペックや動作保証ではありません。

Windows 11 に対応していない PC でも、CPU の仮想化支援機能が利用でき、メモリなどの条件が合えば、仮想化サーバーとして再利用できる可能性があります。

ただし、古い PC を 24 時間稼働させる場合は消費電力にも注意が必要です。せっかく余った PC を活用しても、電気代が高くなってしまっては考えものですからね。

4. Proxmox VE をインストールしてみた

Proxmox VE とは? 余った PC を仮想化サーバーにして、いろいろな Linux を試してみた

ここからは、2025 年 5 月 31 日の YouTube ライブで試した内容です。

今回使用したのは、MINISFORUM の Mini PC。LAN ポートを 2 つ搭載したモデルで、Proxmox VE をインストールしてみました。

基本的な手順は、公式サイトから ISO ファイルをダウンロードし、USB メモリに書き込んで起動するというもの。グラフィカルなインストーラーも用意されているので、操作自体はそれほど難しくありません。

ただし、インストール先として指定したディスクは初期化されます。 すでに Windows などが入っている PC を利用する場合は、大切なデータをバックアップしておきましょう。

ホスト名の設定で、ちょっとつまずく

インストールは順調に進んでいたんですが、ホスト名の設定で引っかかりました。

適当に名前を付けたところ、どうも受け付けてくれないんですね。

Proxmox VE では、FQDN(完全修飾ドメイン名)という形式でホスト名を設定する必要があります。例えば pve.home.arpa のように、ホスト名とドメイン名を組み合わせた形式です。実際には IP アドレスとの対応や名前解決も考慮する必要があります。

普通のデスクトップ Linux なら短いホスト名でも問題ないことが多いので、ここは少し勝手が違います。

ライブでは形式を修正して、無事にインストールを進められました。

Web ブラウザーから管理画面へ

インストールが終わると、管理画面にアクセスするためのアドレスが表示されます。通常は、別の PC のブラウザーから次の形式でアクセスします。

https://サーバーのIPアドレス:8006

初期状態では証明書の警告が表示される場合があります。接続先が正しいことを確認し、継続的に利用する場合は適切な証明書を設定するのが望ましいでしょう。

管理画面は日本語にも対応しており、ライブでも日本語表示でログインできました。

ちなみに、Proxmox VE 自体には通常のデスクトップ環境がありません。日本語入力などの設定は、Proxmox VE の中で動かす Ubuntu など、それぞれのゲスト OS 側で行います。

5. Ubuntu の仮想マシンを作ってみた

Proxmox VE とは? 余った PC を仮想化サーバーにして、いろいろな Linux を試してみた

Proxmox VE の準備ができたところで、今度は Ubuntu をインストールしてみます。

さて、Ubuntu の ISO ファイルをアップロードしようと思ったんですが、ここで少し困りました。

ISO ファイルって、どこからアップロードするんでしたっけ?

以前にも Proxmox VE は使っていたんですが、しばらく触っていなかったもので、すっかり忘れていました。ライブ中にあれこれ探して、ようやく発見。

標準的な構成なら、ストレージの local を選び、「ISO イメージ」からアップロードできます。管理画面には local-lvm という似た名前もありますが、こちらは通常、仮想ディスクの保存などに使われる領域です。

一度わかってしまえば簡単なんですけどね。久しぶりに触ると、こういうところで迷ってしまいます。

Ubuntu 24.10 をインストール

Proxmox VE とは? 余った PC を仮想化サーバーにして、いろいろな Linux を試してみた

無事に ISO をアップロードできたので、仮想マシンを作成しました。

ライブでは次の構成で試しています。

項目設定
OSUbuntu 24.10
CPU4 コア
メモリ約 4GB
仮想ディスク32GB
ネットワーク標準設定

※ Ubuntu 24.10 は 2025 年 7 月 10 日にサポートを終了しています。これから試す場合は、サポート中の Ubuntu LTS などを使用してください。

仮想マシンを起動すると、Ubuntu のインストーラーが表示されました。ここからは通常の Ubuntu と同じようにインストールを進められます。

ただ、思っていたよりもインストールに時間がかかったんですよね。

その間は、視聴者の皆さんと普段使っている Linux の話をしたり、ローリングリリースの話になったり。いつものように Linux 談義をしながら、インストールが終わるのを待つことになりました。

ようやくインストールが終わったと思ったら、今度は再起動でエラーが発生。

ちょっと気になりましたが、再度起動してみたところ、無事に Ubuntu のデスクトップが表示されました。

エラーの正確な原因までは特定できていませんが、今回の環境では Ubuntu をインストールし、起動するところまで確認できました。

実際の操作はライブアーカイブで

今回のライブでは、ホスト名の設定で引っかかったところも、ISO のアップロード場所を探しているところも、そのまま残っています。

記事では操作の流れを整理しましたが、実際の管理画面や、Ubuntu が起動するまでの様子を確認したい方は、アーカイブも参考にしてみてください。

ライブの主な見どころ

  • 約 12 分:Proxmox VE のインストール
  • 約 24 分:ISO のアップロード場所を探す
  • 約 31 分:Ubuntu の仮想マシンを作成
  • 約 49 分:Ubuntu の起動を確認

▶ PROXMOX やろうぜ!|PC-FREEDOM YouTube ライブ

6. タブレットからも操作できた

Proxmox VE とは? 余った PC を仮想化サーバーにして、いろいろな Linux を試してみた

ライブの終盤、視聴者の方から「ブラウザーがあればスマホからでも操作できますね」というコメントをいただきました。

そこで、手元にあったタブレットからアクセスしてみたところ、こちらも問題なく管理画面を開けました。

Proxmox VE は Web ベースで管理するため、同じネットワークにつながっていれば、PC 以外の端末からもアクセスできます。画面が小さいと操作しにくい部分もありますが、仮想マシンの状態確認などには使えそうです。

実際に試してみると、これがなかなか便利なんですね。

例えば、Mini PC を部屋の隅に置いておき、普段使っている PC から必要なときにアクセスする。管理用のモニターやキーボードを、つなぎっぱなしにする必要もありません。

ただし、今回確認したのは同じ LAN 内からのアクセスです。外出先から操作する場合には、VPN などを使った安全な接続環境を別途用意する必要があります。管理画面をインターネットへ直接公開することはおすすめしません。

ちなみに、このタブレットでの操作はライブの約 52 分頃。予定していた実演ではありませんでしたが、視聴者の方からのコメントがきっかけで試すことになりました。

こういう展開も、ライブならではですね。

7. 無料で使える? 導入前に知っておきたいこと

Proxmox VE はオープンソースで、個人でも無償で利用できます。

無償だから仮想マシンの台数が制限されるということはなく、KVM、LXC、バックアップ、クラスタ管理などの主要機能も利用可能です。

有料サブスクリプションとの主な違いは、更新用リポジトリと技術サポートです。

区分主な違い
無償利用主要機能を利用可能。No-Subscription Repository を使用できる
CommunityEnterprise Repository を利用可能。企業向けチケットサポートなし
Basic 以上Enterprise Repository と契約に応じた技術サポート

個人の学習や検証環境であれば、無償利用から始められます。ただし、業務で重要なシステムを動かす場合は、更新プログラムの提供方針やサポート体制も考慮したいところです。

そのほか、導入前に気をつけたい点もあります。

気になるところ注意点
専用 PC仮想化ホストを用意し、管理する必要がある
メモリ・ストレージVM を増やすほどリソースが必要
ネットワークIP アドレスや名前解決などの知識が役立つ
バックアップホストやストレージの故障に備える
セキュリティ管理画面へのアクセス制限や更新が必要
消費電力常時稼働させるなら電気代にも注意

特に、複数の仮想マシンを 1 台にまとめられるのは便利ですが、その PC が故障すると、すべての環境に影響する可能性があります。

スナップショットやバックアップ機能は用意されていますが、スナップショットだけでは物理ディスクの故障に備えられません。大切なデータは別のストレージにも保存しておく必要があります。

手軽に仮想マシンを増やせる一方で、サーバーとしての管理は必要になる。この点は覚えておきたいところです。

8. PC-FREEDOM 評価:どんな人に向いている?

今回、久しぶりに Proxmox VE を使ってみて、改めて便利だと感じたのは、普段使っている PC とは別に仮想環境をまとめておけることでした。

複数の Linux を試す環境を作るなら、専用の仮想化サーバーという方法もあります。

ただし、誰にでも Proxmox VE をおすすめするわけではありません。専用 PC が必要ですし、ネットワークやストレージの管理も考えなければなりません。

PC-FREEDOM 評価

項目評価理由
初心者向け★★★☆☆インストールは比較的わかりやすいが、ネットワークの知識が必要
管理のしやすさ★★★★☆Web 管理画面が便利。ただし操作に慣れは必要
拡張性★★★★★KVM、LXC、クラスタなど機能が豊富
日本語管理画面★★★★☆日本語表示に対応。細かな翻訳品質は未検証
情報量★★★★☆公式ドキュメントが充実。英語の資料も多い
古い PC 活用度★★★★☆条件が合えば既存 PC を仮想化ホストにできる
導入・維持の手軽さ★★★☆☆専用ホストの管理と更新が必要
Linux ファンへの刺さり度★★★★★複数の Linux をまとめて試す環境を構築できる

※今回の導入体験と公式情報に基づく PC-FREEDOM の主観的な評価です。長期運用の安定性や消費電力、仮想マシンの性能については実測していません。

Proxmox VE が向いているのは、余った PC を活用して、複数の Linux やサーバー環境をまとめて管理したい人。 仮想化やネットワークについて学びたい人にも適しています。

一方、たまに Linux を試す程度なら、VirtualBox で十分だと思います。わざわざ専用 PC を用意する必要もありませんし、使いたいときだけ起動できますからね。

まとめ:余った PC の、もうひとつの使い道

今回のライブでは、Mini PC に Proxmox VE をインストールし、その中で Ubuntu を動かすところまで確認できました。

途中、操作方法を忘れたり、再起動でエラーが出たりもしましたが、最終的には無事に起動。さらに、視聴者の方からのコメントをきっかけに、タブレットからも管理できることを確認しました。

僕自身、普段は VirtualBox を使うことが多いです。手軽ですし、慣れているというのもあります。

ただ、今回のように別の PC に仮想環境を用意してみると、これはこれで便利なんですよね。

普段使っている PC で作業をしながら、別の PC では Ubuntu や Debian を動かしておく。必要なときにはブラウザーからアクセスする。そういう環境が手元にあるのも悪くありません。

Windows 11 に対応していない PC でも、条件が合えば、仮想化サーバーとして再利用できる可能性があります。

古い PC に Linux をインストールして使い続けるだけでなく、ほかの PC を支える側に回ってもらう。これも PC の活用方法のひとつです。

余った PC がある方や、VirtualBox に仮想マシンがたまっている方は、Proxmox VE も検討してみてはいかがでしょうか。

最後に、今回のライブアーカイブも紹介しておきます。実際のインストール画面や Ubuntu が起動するまでの様子に加え、視聴者の皆さんとの Linux 談義も収録されています。記事を読んで気になった方は、ぜひのぞいてみてください。

▶ PROXMOX やろうぜ!|PC-FREEDOM YouTube ライブ


参考情報

※実機検証部分は 2025 年 5 月 31 日のライブ配信記録に基づきます。技術仕様や利用条件については 2026 年 10 月時点の公式情報を参照しています。今後の更新により、操作画面や要件が変更される可能性があります。